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    m_k_gm

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    らくがきと過去絵をまとめてます
    その時ハマっているものをチマチマ描いてます🙋‍♀️

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    うちよそ書きたいところだけかく長編のやつ(1)

    (1)出会い編1
    ――深夜未明。イギリス、リヴァプールにて。

    薄汚れた部屋の一室。
    ツンと鼻腔を掠める薬品の刺激に眉間のシワを更に濃くする男が一人。
    男はその手に持つ日記を忌々しく睨みつけていた。
    古く薄汚れたそれを乱雑に閉じて、音もなくその場を立ち去る。
    薄らと歪めた口元には、確かな厭悪と嘲笑を浮かべていた。




    ――日本、東京郊外。

    夏の終わりが近付いているとはいえ、日本の夏は最後まで暑い。まるでチョコたっぷりのアノお菓子のように、それはもうたっぷりと最後の最後まで夏だ。
    恋人の見つからぬ蝉の声を聞き流し、はだけかけた薄手のカーディガンを肩にかけ、羽海野ひなは大学の講義を終え広いキャンパスを歩いていた。
    駅から大学まで徒歩たったの15分。
    とはいえ、この暑さでは講義室を出た瞬間に灼熱地獄だった。
    空調の効いていた室内との差に耐えつつ、冷蔵庫のアイスの在庫に思いを馳せてしまう。

    「うぅ〜暑いよぉ…。ルークがクマシロくん食べてないと良いんだけどなぁ。」

    最後の一個だったはずだが、果たして帰る頃には残っているのだろうか。先に帰宅しているであろう弟とのアイス争奪戦に備え、いっそコンビニで調達しようかと思案していると見慣れない男性が正門前に立っているのが目に入った。
    その男性は長身でなかなかに恰幅がよく、見慣れないグレーヘアーを風に揺らしていた。
    しかし、慣れない暑さのせいかサングラス越しでも眉間に深くシワが刻まれているであろうことが分かる彫りの深い横顔に、何か困り事かとお人好しが服をきた羽海野ひなは、体格の良い外国人を遠巻きに眺めているだけだった周りの目など気にせず話しかけていた。

    「―何かお困り事ですか?―」

    万国共通言語で語りかけると、その男性はゆっくりと振り返り、こちらを見下ろした。
    わ〜、背高い。2mくらいありそう。

    「―あぁ、観光で来たんだが迷っちまってよ。良かったらそこのかわい子ちゃん、駅まで道案内してくんねぇかな?―」

    にっこりと、人好きのする笑みを浮かべる中年男性はサングラスを少し下げて甘い笑みでウィンクしていた。
    長身外国人男性のウィンクの破壊力たるや。

    「―もちろんです!駅はこっちですよ―」

    思いがけず赤くなりかけた頬を隠すように前を向いて歩き出す。
    ちらっと後ろを振り向けばその男性はにへらと笑みを称えて付いてきた。

    「―子猫ちゃんはここの学生なのかい?―」
    「―そうですよ。3年生です!えっと、あなたは?―」
    「―俺様〜?そうだなぁ、かわい子ちゃんの名前教えてくれんなら答えない事もねぇかもなぁ―」

    大股なのに不思議と合う歩調に気付くことなく、ひなは当たり前のように頷いた。

    「―羽海野ひな―」
    「―うみ、の…?―」
    「―ひな―」
    「―ひ、な…―」

    辿々しく鸚鵡返しをする彼。
    きっと口馴染みのない日本語に戸惑っているのだろう。
    もしかしたら、日本に来たばかりなのかもしれない。

    「―はっ、見つけた―」

    すっと男の目が細くなる。

    「―ん…?どうかしました?―」
    「―いんやぁ〜。可愛いお嬢ちゃんだから一緒にお茶でもどうかなってね〜。ほら彼処に美味しそうなカフェあるし?おじさん日本語分かんなくってさぁ〜―」

    困ってんだ、と少し屈んで目線を合わせるようにしながら眉を下げられてしまう。
    こちらも困ってしまう。

    「―だめか?―」
    「―…いいですよ―」

    ずらしたサングラス越しに藍色の瞳が覗いてくる。
    知らない人に着いて行っちゃダメよ、と微笑んでいた姉には内緒にしなければと心に決めて先程男が指を指していたカフェに揃って入っていった。
    腰に腕が回されているのには気づかずに。




    ――――

    20XX年、機関所属の羽海野夫妻によりブラックボックスが紛失。
    捜索と共に夫妻は尋問後、殺害。
    子供が3人日本に生存している。恐らく夫妻の住居と推察される。
    日本への捜索派遣、及びブラックボックスの回収を任命。
    回収後帰還せよ。


    ――――



    ――数週間後。

    「あれ?おじさんだ〜」
    「おう、かわい子ちゃんじゃねーの。今日もキュートだねぇ。可愛いついでにおじさんと飯でもいかねぇ?」
    「あははっ!なにそれ変なの〜」

    きゃらきゃら笑う彼女とナンパ男に周囲の人間がぎょっとする。
    あの大学のマドンナ、ヒロイン、高嶺の花、鉄壁の守りをもつ羽海野ひなにナンパする外国人。
    しかも大学内。異質だ。つーか誰だ。

    「あの外国人アノ人にシバかれるんじゃね?」
    「いやでもアノ人今海外じゃなかった?」
    「おいおい!つーか羽海野外国人と車に乗ってったけどぉ!?!?」
    『は???』

    黒塗りのスポーツカーに優雅にエスコートされ、車はあっという間に去っていく。
    あんぐり開いた口が塞がらない。

    「有り得ねぇ…なんだあの高スペックイケおじ外国人」
    「え、羽海野って年上好き?」
    「おじ専ってこと?」
    「イケおじハンサム〜」
    「あれってパパ活…?」
    『えっ』

    その日、大学内で羽海野ひなはおじ専だという噂が流れた。



    ――車内。

    「そんでぇ、寿司屋に行ったら寿司が回ってきたんだよ。クレイジーだろ?なんで生魚が回るんだ」
    「回転寿司だからだよ〜。あと別のお店だとお寿司が新幹線に乗ってくるよ」
    「新幹線んぅ!?!?」
    「そう、それにうどんもポテトもパフェもあるよ!」
    「寿司屋なのにぃ〜!?意味が分からねぇそんなのもう食べ放題のテーマパークじゃねぇか」
    「あ、じゃあお昼そのお店にしよ!」
    「オーライ、行ってやろうじゃぁねぇの!ハッスル寿司!」

    隣で笑い声をあげ、楽しそうに道案内をしてくれる彼女。
    羽海野ひな。20歳。郊外の大学に通う普通の女の子。
    見目も良く、困ったふりをしたこの怪しい外国人を助けてくれる善人。
    だが、彼女の両親は某国の特務機関の研究員だった。
    とあるパンドラの箱を国外に流出させ、機関によって殺された。
    パンドラの箱の詳細は一切不明。だが、国を、ひいては世界を脅かす兵器、もしくはテクノロジーだと聞いている。
    そんなものを作りだし、隠した人間の子供が本当に善人なのだろうか。
    彼女は実家に姉弟と3人で暮らしているという。
    恐らく自宅に何か手掛かりがあるはずだ。
    日本に来て1ヶ月。ここで引き当てたアタリを逃がす訳にはいかない。

    まぁ、俺にとっちゃあこの女が善人だろうと悪人だろうと関係ねぇーけどよ。
    それに、こんなお子ちゃま俺のテクでイチコロだぜぇ〜。
    ハニトラで情報ぶんとったらサヨナラしてやんよ〜。

    の、はずだった。はずだったのだ。
    数日前から、こうして何度か食事に誘ってはあの手この手で落としに掛かっているのだがどうにもおかしい。
    今までの女なら1回や2回の逢瀬でゴールだというのに、目の前でのほほんと笑う何の変哲もない少女は、出会ってから数週間。何度デートを重ねても進展しない。
    良く笑うし、触れれば照れる。
    愛を囁けば耳まで染めて俯いてしまう。
    なのに、なのになぜか落ちてこない。

    「この後行きたいところは?」
    「うーん、あ!新作のドーナツ出たからミセド行きたいかな〜」
    「…ドーナツ?」
    「うん!ドーナツ!あ、もしかして苦手?」
    「いんやぁ苦手っちゃあまぁ…甘いものはそんな得意じゃねぇんだけどもよ、もっと高いものでもいんだぜ?」
    「え〜だってそしたら割り勘しても金欠になっちゃうもん」
    「ソ、ソウダヨネー」

    そう、この娘、全て割り勘なのだ。
    この俺様を捕まえて割り勘。
    あんびりーばぼー。

    「おじさん、どうしたの?」

    上目遣いで心配そうに見上げる女の子。
    水色の瞳をキラキラと輝かせ、日本特有の幼い顔立ちに反して発育の良い身体がアンマッチ。そしてそこが良い。
    日本人も可愛いな、なんて思うイギリス人である。

    「体調悪いの?大丈夫?」

    見惚れてなどいない。断じて。
    あぁ、この俺様が!百戦錬磨のクールガイがこんなレディにも満たない少女なんかに見惚れる筈がないだろう。

    ペタペタとひんやりとした小さな手がおでこに触れる。
    熱は無いね、などと呟いているがこれは新手のハニトラだろうか。
    こちらが情報を探っているのがバレて逆ハニトラをかけられているのだろうか。
    もしかしたら、荷物に盗聴器とかGPSでも入っているのではないか。

    「お〜い、おじさ〜ん、お〜い。あれ〜?聞こえてないのかな?」

    おでこから頭や腕なんかもペちペちされる。
    ゆるく巻かれた髪が頬に当たってこそばゆい。

    「ひな、結婚しよう」
    「えっ!?けけけ結婚!?お、お友達以上からでも良いですか!?」
    「おじさん寂しい〜!恋人から初めよぉぜぇ〜」
    「軽口叩けるなら元気だね!」

    小さな手をギュッと握りしめ懇願するも、するりと逃げられてしまう。

    「もぉ〜心配したのに」

    拗ねたように膨らむ頬を指で押せば間抜けな音をたてながら空気が抜けていく。
    もちもちだ。これがジャパニーズ モチ か。

    こうなれば、俺と彼女のハニトラ対決だ。
    受けてたってやる。

    「ってことで、ひなぁ〜指輪見に行こっか?」
    「何で!?」
    「え、先に式場の下見がいいって?」
    「まってまってミセド行きたいって行ったのに〜!」






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