ホンゴウの生い立ちから海賊になるまでの半生の独白(捏造)十歳でおれの人生は激変した。少し年の離れた兄が死んだからだ。
何一つ不自由のない暮らしだった。
仕事で忙しくともできるだけ顔を見せようとしてくれる父様と母様。執事やメイドや家庭教師たち。衣食住に恵まれて、習字率の低いこの国で厳しく勉学に励むのも贅沢だった。新しい事を覚えるのは今でも嫌いじゃない。好奇心旺盛なタイプなんだと思う。
そんな贅沢品であるマナーや数学や語学の勉強はいつだって兄さんと一緒だった。
家庭教師の厳しい授業も、満たされる知識欲と、兄さんが褒めてくれるから、好きだったんだ。
「今日はテストでいい点が取れたから」なんて、二人でキッチンからパンをかっぱらってきて、庭でこっそり食べたりする。バレて執事や母様に叱られる。大目に見てやれという父様。そんな日々が好きだった。
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