思い出の共有とか、個人の記録とか、きっと多くの人がしている使い方じゃなくて、専らアイドルやその周辺の情報収集のために始めたSNS。話題のAIの技術なのか、私個人の興味の対象に関する話題も流れてくるようになって。そんな中でたまたま見かけた新味の飲み物はなんとなく気になっていて、これまたたまたま街中で見かけたから思わず買ってしまった。
「珍しいものを飲んでいますね?」
「あ、七種くん。お疲れ様です」
「お疲れ様であります、あんずさん」
同い歳でアイドルで、かつプロデューサーとしてライバルでもある七種くんが私のことを名前で呼ぶ時は大抵、疲れている時か、何か裏がある時。声のトーンがいつもよりやや低いことを考えると、今日のパターンは多分前者。だから、特に咎めることはしないでおいた。ここはES内で、周りに誰も居ないし。
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