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    ha_na_da_a_o

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    ha_na_da_a_o

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    ごめんなさい

    現パロ/吸血鬼パロ ブラ晶 私がその日、普段は通らないような路地裏に足を踏み入れたのは、単純に疲れていたから。人通りが少ないとか、暗いとか、そんなことは考えられないくらいに疲れていて。一秒でも早く家にたどり着いて、猫に癒されながら眠りにつきたかった。
     結果的にその判断は、私を家に返してくれなかったけれど。

    「……え、」

     薄暗い路地裏を足早に抜けようとして、誰かが倒れているのを見かけて。どうしよう、と逡巡しながら一歩後ずさったところに空き瓶が転がっていたらしく、ごろ、と鳴ったその音でその人は目を開けた。

    「……おい」

     ぱちり、と瞬いた瞼の中。柘榴色の瞳と目が合った瞬間、私は動けなくなった。
     それは、未知の感覚で。何と言うか──そう、“魅入られた”のだと思う。

    「おい、聞いてんのか?」
    「……ぁ、」
    「……ん? お前この間、俺が助けてやった人間か?」

     外壁に身体を預けて横たわったその人は、ようやく慣れ始めた目でよく見ると傷だらけで。それなのに、眼光はするどく、余裕を持った挑戦的な表情を浮かべている。そして彼の言う通り、私はその瞳と表情に覚えがあった。

    「道端で変なもん売りつけられそうになりながら、スリにまで合いそうになってたお人好しだよな?」
    「え、っと……その説はどうもありがとうございました」
    「はは。……ま、お人好しは嫌いじゃねぇし、俺もあん時は余裕があったからな」
    「はぁ……」

     ひと月ほど前、街中で物売りに声をかけられて、話を聞いている最中。気が付けば疎かになっていた手元の荷物から、財布が盗まれようとしていることを知らせてくれたのが、目の前の男性だった。
     その時も、印象的な瞳だと思った記憶があるけれど……今日は月明かりの元で見るせいか、余計に惹かれるものがある気がする。と言うか。

    「あの、その傷……大丈夫なんですか?」
    「……はは。お前、本当にお人好しだな」
    「え?」
    「普通こんな路地裏に知らない男が傷だらけで倒れてたら、見ないふりするか、せいぜい警察か救急車呼ぶかだろ」
    「……そう、ですかね」

     でも、目の前の人に魅入られてしまったんだから仕方がない。それに。

    「あなたには、助けてもらった恩がありますし……私に出来ることなら何でもしますよ」
    「何でも、って……お人好しもここまでくると狂人の域だな。……まぁいい。丁度いいからお前の血、吸わせてくれよ」
    「……え?」
    「お前も噂くらいには聞いたことあるだろ、吸血鬼の話」

     そう言って薄く笑った唇からは、確かに鋭く尖った牙が覗いている。……え、吸血鬼って、本当に?

    「まぁ俺、今ちょっと腹減ってるからよ……下手したらお前、死んじまうかもしれねぇけど」
    「……死……!?」
    「はは、ここで会ったが運の尽き、ってことで。そもそも『何でもします』ってのは、お前が言ったことだしな。せいぜい、行き過ぎたお人好しに育った人生を呪っとけよ」

     じゃあな、と言われた瞬間首元に走った痛みで、もう後には引けないと悟った。





    「おい、そろそろ起きろ」
    「……は、……ここ、どこ…………?」
    「俺のアジトってとこだな。……それより体調はどうだ、晶」

     名前を呼ばれて、ぼんやりとしていた意識がクリアになっていく。あの日、私は路地裏を歩いていて……吸血鬼に会って、血を吸われて……?

    「え、私、生きて……」
    「はは。お前が持ってたフライドチキン、美味かったぜ?」

     あれ、ネロんとこのだろ、なんて続けられても話についていけない。

    「えっと、どういうことか説明してもらえますか……?」
    「あ? あ〜……仕方ねぇなぁ」

     面倒そうに頭をかいた彼──ブラッドリーと言うらしい──は、簡潔に話をしてくれた。
     私が出会ったあの日の彼は、吸血鬼狩りにあっていて、動こうにも動けないくらいの状態だったらしい。回復のためにとにかく血液を必要としていたところに通りがかったのが私で、最初は吸い尽くすつもりだったらしいが、私が持っていたフライドチキン(彼の好物とのこと)と、最期の私がした目を気に入ったから、吸い尽くすことはしなかった、とのこと。

    「目、ですか」
    「ああ。行き過ぎたお人好しのくせに、変に芯の通った目をしやがる」

     度胸とやる気のあるやつは好きだぜ、と笑った顔は、何だか仲間を見るような人懐っこいもので。

    「えっと……じゃあ私一人分の血液じゃ足りなかったけど、フライドチキンがあったおかげでギリギリ死なずに済んだということですか?」
    「あっはっは、いや、フライドチキンは確かに美味かったけどよ、基本的に血液じゃねぇと回復の足しにはならねぇよ」
    「じゃあ……」
    「どうして、って顔だな。……んー、とりあえずお前、その辺で転んでみろ」
    「はい?」

     あまりにも唐突過ぎて訳が分からなくて、反応できなかった。人に転べと言われて転ぶことってないもの。

    「あ? できねぇのか? じゃあ俺がやってやるよ」
    「え? やってやるって……いた、」

     腕を掴まれたと思ったら、そのまま腕を長い爪で引っかかれた。走った痛みに反射的にぎゅ、目をつむってから、傷の状態を確認するために恐る恐る目を開いて、その様子に目を見開く。

    「……え、な、何……!?」
    「はは、いいだろ、これ」

     引っかかれた跡からぷつぷつと浮かび上がっている血はそのままにみるみる傷が修復されていき、1分もしないうちに傷跡も残らず消えてしまった。まるではじめから何もなかったかのように。

    「何なんですか、これ……」
    「吸血鬼の治癒能力。これでお前も人外の仲間入りだな」
    「これで、って……私、吸血鬼になっちゃったんですか? なんで?」
    「お前一人の血じゃ足りなかったし、周りに他に人もいなかったしな。お前を眷属にするしか方法がなかったんだよ」

     ま、これからよろしくな。そう言われた私は、これから先の永い時を思って、血は足りているはずなのにくらくらした。
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    Replies from the creator

    ha_na_da_a_o

    PROGRESS⚠️せ〜りネタ⚠️のジュンあん

    続きはR指定入りますが、一旦全年齢部分を載せます🙇🏻‍♀️
    完成版は支部かな……多分……タイトルも未定…………
     プロデューサーの仕事は嫌いじゃない。むしろ、大好きなアイドルたちを輝かせるお手伝いのできるこの仕事が好きだ。でも、それはそれとしておやすみは楽しみにしている。それも、好きな人と一緒に過ごせるおやすみとなればなおさら。なのに。

    「はぁ……」

     下腹部の重いような感覚と、脚の間の不快感。もしかしてと思ってトイレに駆け込めば、案の定アレが来てしまっていた。予定日はもう少し先のはずだったけど、ここ数日仕事を詰めていた影響もあるのかな。
     『その日』が来るのは憂鬱だけど、十数年もこれと付き合っていれば、あぁまたか、くらいにしか思わない。けれど、何も今日じゃなくても。
     どうしよう、と思う。明日は久しぶりにふたりそろって完全オフの日で、だから、今日の夜からジュンくんがお泊まりに来てくれることになっている。私の家にジュンくんがお泊まりに来たことは今までに何度かあって──その時、『そういうこと』にならなかったことは今まで一度もない。……だから多分、ジュンくんは今回もその気だと思う。私も明確に拒否したことはないし……と言うか恥ずかしいだけで、私だって『そういうこと』をするのは嫌いじゃない。ジュンくんがいっぱい私を求めてくれるのはやっぱりうれしいし、その時ばかりは恥ずかしいという気持ちを忘れて、私もジュンくんのことが好きだといっぱい伝えられるから。
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