依微香雨泥酔阿絮
「老温」
基本的に酒の強い周子舒は、どれほど飲んでも呑まれることなどほとんどない。
「老温〜?」
それは周知の事実であり、最近になって韓英から託された弟子すらも、提げた瓢箪の中身が酒であることを知っていた。
「どうしたの? 阿絮」
「老温、おまえも飲むか?」
実に景気よく発せられる言葉は、普段よりは気安いものの温客行としては見慣れたものだ。
だが、それが四季山荘の広間でなければ、という前提があるもので。
「なんだ? 老温、いつもおまえは鬱陶しいくらい俺の隣にいるのに、どうして今日は、そんな離れてるんだ?」
「……師匠?」
目をパチクリとさせる張成嶺は、普段凛々しく時に優しい周子舒の背中ばかりを見てきた。それでも時折り見え隠れするうちに押し殺した脆さを見てより師匠として敬い、神仙となっても尚こうしてふらりと四季山荘へ顔を出す師匠と、師叔の二人を心から尊敬し敬愛していた。
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