むかしむかし キミは ハッと気が付くと、ザザー..ザザーと波の音。打ち寄せる波は青く輝くのに、空は黒くどこまでも続く。
感じたことのある気配に、軽く痛む気がする頭に手をやってふと違和感を覚える。
「ん?まさか」
何か確認する物はと辺りを見回せば、近くの岩場に潮溜まりを見つけた。近づいてのぞき込むと、そこに映ったのは見慣れた顔。右手を上げて頬に触れてみれば鏡合わせの自分も同じ動作をした。ここのところ忙しかったから疲れは見えるが、若さの為か草臥れた印象は無い。今は大きな傷も無いし、黒い靄が覆い隠すことも無かった。
「このパターンか」
溜め息交じりに言葉を吐き出したが嘆いたところでどうなるものでもなく、ここから出るには自分で何とかするしかない。今回は初めから周囲の景色が設定されているだけマシだろう。
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