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    sumireya_sana

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    sumireya_sana

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    俳優パロで作中の設定であるゾロがM◯U初の日本人ヒーローとして主演したのはどんな映画か?と考えて広がりすぎた妄想を『その映画をみた日本のとある自称評論家がブログに感想と考察を載せた』体で書いた文章です。おまけ要素として小説のキャプションに載せようかな〜と思ったんですが映画設定を考えたら楽しくなり過ぎて10,000字超えたのでキャプションに余裕で載せられなくてこっちに纏めました。

    ロロノア・ゾロがもしM◯Uで日本人ヒーローとして主演したら? マーベ◯コミックのイン.ヒューマンズ、特にAoSシーズン2の設定を元に考えています。イン.ヒューマンズ大好きだからそんなもん観たくない!って人はブラウザバックでお願いします。わたしはデイ.ジー・ジョン.ソンちゃんがだーいすきです!

    《マー◯ル原作の予備知識》
     インヒューマ.ンズとは?
     → 首都アッティ.ランに住む宇宙種族。 普通の人類より強化された身体能力を持ち、成人すると秘宝テリ.ジェン・ミストを浴びることで個別の特殊能力を得る。
    本来は地球の古代人であり、およそ25000年前に宇宙種族ク.リーによって人間兵器にするため改造実験されたネアンデルタール人。(wikiより)


    《とある映画評論家のつぶやき》
    ――――――――――――――――――――


    2022.XX.XX
     今日は三日前に日米同時公開されたロロノア・ゾロ主演のSFアクション映画を紹介。ア◯ンジャーズなどでお馴染みのM◯U(マ◯ベル・シネ◯ティック・ユニバ◯ス)のシリーズ第XX作目で、初めて日本人ヒーローが主人公として描かれる。
     
    【キャスト】
     出演:ロロノア・ゾロ、光月日和、霜月コウ三郎、黒炭オロチ ほか
     
    【あらすじ】
     ロロノア・ゾロが演じる主人公は、昔から映画やドラマの世界のような侍が戦う光景を夢に見ていた。夢にしては生々しく既視感のあるそれを不思議に思いつつも、京都で警察官として平凡に生きる男の人生は、ひとりの少女との出会いで一変する。光月日和が演じる美しい少女[小紫]が告げる。“あなたの夢は夢ではない。あなたが生きた前世の記憶なのだ”と。
     
     かつてわたしの一族が明治維新の混乱の裏で地中深くに封じた石碑が盗まれてしまった。盗んだその組織は幕末の世に壊滅させた筈が実は生き残った者がおり、歴史の影に潜んで力を蓄え、今や日本の至る所にまで力を伸ばしていて到底太刀打ちできない。今唯一彼らに対抗できる手段として、かつて彼らの勢力を打ち倒した幕末であなたが先祖と同じくわたしの一族を率いて戦い、今度は彼らが二度と復活しないように撲滅するしかない。わたしの力を使えば、あなたの意識を過去に生きる同じ魂を持ったあなたに移すことができる。
     
     作り物のように眉唾な話にもちろん青年は笑って取り合おうとしなかったが、その時突然謎の集団に襲撃を受けて、目の前で少女が自分を庇って銃弾を受けてしまう。なす術もなく少女がこと切れる寸前に、彼女の日本人らしからぬ青緑の瞳が輝いて―――次の瞬間に気がつくと、青年は見たことがない荒野に立っており、夢で見た“170年前の江戸時代に生きる”自分になっていた。時代が激動する戦乱の歴史の裏で、一人の浪人をきっかけに新たな戦いが巻き起こる。(パンフレット原文ママ)

    【評価】
     ※ネタバレなし
     75点/100点満点中
     
    ・物語:★★★☆☆
    ・配役:★★★★☆
    ・演出:★★★☆☆
    ・映像:★★★★★
    ・音楽:★★★★☆

     主演のロロノア・ゾロをはじめモデルの光月日和や往年の名優霜月コウ三郎などが脇を固める本作は殆どが日本人キャストで撮られていて、ハリウッド大作で活躍する彼らの演技には一見の価値あり。ストーリーは目新しさはないもののヒーロー映画のオリジンとしては十分で、日本舞台の時代劇ものとしても迫力があり出来は及第点だろう。主な言語は英語だが、日本語を話すシーンでは全員が正しい発音をしているので安心して字幕で見て欲しい。作中の日本の描写もところどころではアメコミらしい改変はあるものの、概ね日本人も違和感なく受け入れられる背景デザインだったと思う。
     
     主演のゾロはこの映画がハリウッド大作初主演とのことだが、端正な顔立ちと欧米人にも引けを取らない体作りをしていて非常に存在感があり、特にアクションシーンで日本刀を扱う殺陣は見事だった。ヒロインの光月日和は今回が映画初出演らしいが、演技は悪くなかった。雑誌を見ないのでこれまで彼女をCMや街の広告でしか拝見したことはなかったが、流石の美貌が画面でよく目を惹いて神話の時代から続く神秘的な一族の巫女という設定にぴたりとハマっていた。
     
     ストーリーは後述する通りイン.ヒューマンズとしての設定が歴史の長い日本神話や民族との関わりとうまく調和されていて興味深く、作中で展開されるマル◯バースはのちのち合流すると思われるア◯ンジャーズシリーズへの布石を予感させ、続編が楽しみな映画だ。

    【感想と考察】
     ※ここからネタバレあり!!
     ↓↓↓↓↓↓↓↓↓
     
     ハリウッド資本が作る日本といえば、例に漏れず風俗街にしか見えない謎のネオンが煌めく街の様子やおかしい日本語の看板などが頭に浮かぶだろう。それはマ◯ベル作品も同様で、2019年公開の『アベ◯ジャーズ:エンド・ゲ◯ム』でちらりと東京が登場するが、どう見ても香港や上海の街並みが入り混じる背景で大量のヤクザが滅多刺しにされていた。ちなみにこの映画と同様に真田◯之が出演したこちらは20世紀F◯X制作の『ウ◯ヴァリン:SAM◯RAI』も同じく日本が舞台だが、これは上野増上寺でロケをしていたりと他の映画に比べればまだ辛うじて日本の景色が残っていたのだが。
     
     閑話休題。本作は日本が舞台でもメインターゲットはアメリカや中国なので、そんな観客が望む“日本”を詰め込んだ映画だな、というのが第一印象。はじまりは現代の京都だが、主な舞台は江戸幕府滅亡間近の約170年前。外国人が大好きな『侍』や『忍者』が現役の時代だ。途中からは現代のシーンで『ヤクザ』も暗躍する。まさに日本好きの外国人向けの欲張りハッピーセット!のような映画と言えるかもしれない。終盤の京都の清水寺において、敵味方が入り乱れる中で侍や忍者が大立ち回りするシーンがこの作品最大の見せ場だろう。今作は可能な限り日本国内でのロケをしたことを売りの一つとしているが、過去の映画に比べると確かに美術背景の拘りが感じられて正確な日本風景が多かったと思う。なんちゃって日本になりがちな現代よりも江戸時代のシーンが多いことが上手く作用し、イン.ヒューマンズを祀る神社や荒野の戦場などは歴史を踏まえつつも映画独特の魅力的な世界観がうまれていた。
     
     この映画の見どころは、なんといっても最近流行りのループものの要素から“マルチバース”が展開されるところだ。まず平和な日本で生きていた主人公(演:ロロノア・ゾロ)は小紫(演:光月日和)の“他人の意識を同じ魂に移す”力によりタイムリープしていきなり戦乱の世で生きる自分になる。しかしいくら警官とはいえ知識がなく文明も未発達の地ではただ生きる伸びることも難しく、侍の諍いに巻き込まれて呆気なく死んでしまう。しかし次の瞬間に彼が目を開けると、知らない場所だが見覚えがある現代の部屋の中にいた。“あれは長い夢だったんだ”と安堵して部屋にあったテレビをつけるが、しかしすぐに違和感に気付く。テレビに映る街の様子は暗く殺伐としていて、突然にニュース速報が入って知らない政治家の演説の様子が映った。その内容からは、日本が世界的な軍事大国として今も他国と戦争中であることが察せられる。混乱した主人公が明らかに記憶と異なる街を彷徨っていたところ再び現代の小紫と出会うが、彼女は以前会ったときは「江戸時代で過去と同じように敵組織を倒して欲しい」と言ったのが、今は「江戸時代に戻り今度こそやつらを倒して欲しい」と話して涙を流しながら懇願してきた。この会話を通して、主人公は「自分が過去で死んだことで未来が変わってしまっている」と気付く。
     
     ここの展開だが、キャスト目当てなどで初めてこのシリーズを見たり、SF設定にあまり詳しくない観客は主人公の考えを「ふーん、そういう設定なのね」と流すだけだろう。しかしエ◯ドゲームなどのM◯Uを見てきた観客は、主人公の想像より複雑な現象が起きているのだと気づくのが面白い作りだ。それは即ち、この作品は《マル◯バース・サーガ》に属する=主人公と小紫の行動により時間軸が枝分かれし、彼の生きたユニバース(マルチ◯ース化)ではなくなっているということ。これは今もなおファンの間で混乱の渦を巻き起こしているミッドクレジットの小紫の台詞が裏付けている。(詳しくは後述)
     
     過去にタイムトラベルをして歴史を変えても、有名なバック・◯ゥ・ザ・フューチャーで描かれるように今の自分の未来が変わることはない。→ ただその過去から続く時間軸が分岐して別の未来(ユニバース)が出来る(=マルチバース化)だけ……というのが、エン◯ゲームで説明された量子物理学に基づく仕組みである。この映画で例えると、小紫が敵を全て撲滅して欲しいと頼んで主人公が成し遂げたとしても、依頼した現代の小紫はその恩恵を受けることはなく、撲滅して平和になった新しいタイムラインが出来るだけで、主人公はそこで生きることになる。有名なタイムトラベル作品の殆どはこのシリーズで考えると誤った理論をしていることとなり、量子物理学に詳しくない小紫や主人公は当然ながらその事実を知らない。そのために何度もタイムリープを繰り返したこの映画は恐らくM◯Uの世界で最もタイムラインに多大な影響を与えてしまっており、後々大きな問題になるのでは、と想像できる。(ドラマ『ロ.キ』で登場したTV.Aがあればタイム.キーパーたちに剪定されたかもしれないが、シル.ヴィの行動により介入されることはなくなったのだろう)
     
     ちなみに過去で死んだのにその未来である現代の身体で主人公が目覚めるのは、以下二点の理由が考えられる。
     ①過去に戻るよりも以前に既に主人公の前世で子供が誕生しており、主人公はその子孫であるから
     ②前世の主人公に兄弟もしくは親戚がおり、主人公はその子孫であるから。
     子供がいるのに劇中で全く話がないのは不自然なので、②の可能性が高いがいずれにしても続編以降で語られる内容となるだろう。
     
     ループによってマ◯チバースが起こる設定は日本のコンテンツでいうと少し前にアニメ化もされた少年ジ◯ンプ+連載の『サマータイ◯レンダ』を思い浮かべる方もいるかもしれない。ただこちらは死ぬと“過去のある時点”に戻るところが、今作は死ぬと“未来(現代)のある時点”に戻るため、未来で【語り継がれた歴史】から情報を得て過去で行動することができる。そのため、本来ならすでに過去勝利している敵との戦いなので、その歴史を知る小紫から例えば仲間の説得の仕方やら敵の根城の場所などを聞いてその通りに行動すれば簡単に敵を倒すことが出来るはずだ。ところが一番最初のユニバース(以下、U表記、別の宇宙のことは《アース◯◯(◯は数字)》と呼ばれるが、公式の定義と混同しないように本作の世界はユニバース◯(◯は数字)と数えることにする)1においては小紫が意図せず射殺されたせいで碌な話を聞くことができなかったために、主人公が志半ばに死んで本来“敵に勝利した”歴史では無くしてしまった。そのためU2からは“負けた”歴史の情報しかないせいで基本的に後手後手に回ってあらゆる困難に直面する。それでも正確なルートを辿れば勝てる可能性はあるわけなので、ループするたびに知識が蓄積されて侍としての技量も成長するおかげで、前回では成し得なかった仲間の説得や武器の調達などが出来るようになる展開は、伏線の回収も鮮やかでループものらしい爽快感を味わえた。
     
     今作は作中で明言されていないものの、日本で生きる《イン.ヒューマンズ》たちの戦いの物語だ。イン.ヒューマンズというのは、マー◯ルコミックにおいて宇宙種族の一つでそれぞれに特殊能力を持つ人々の総称を指す。これだけだと日本でも人気なX-◯ENで登場するミュータ.ントと勘違いする人がいると思うが、イン.ヒューマンはミュータ.ントのように遺伝子変異(=ミューテー.ション)によって生まれながらに能力があるのではなく、《テリ.ジェン》という物質によって特殊な力を得る(=テリ.ジェネシス)ことが出来る。《テリ.ジェン・ミスト》と呼ばれるテリ.ジェンを加工して霧状にしたものを浴びることでテリジェ.ネシスが起きる。本作で小紫の一族が《石碑》と呼んでいる石があるが、これを特定の水につけた瞬間に霧のようなものが発生してそれを浴びた主人公が力“触れた金属を操作(=黒化)する”力を得る。この描写は間違いなくテリ.ジェネシスによりイン.ヒューマンとして力を得る設定と同じで、彼らは日本のイン.ヒューマンズということになる。
     
     原作におけるイン.ヒューマンズの設定に軽く触れておこう。宇宙で各惑星と戦争していたクリ.ー帝国に住むクリ.ー人(GotGシリーズのロナ.ンなど)が太古の地球に降り、戦争の兵器とするために地球人類に遺伝子改造(映画『エターナルズ』に登場したセレスティアルと掛け合わせた)を施して出来た存在がイン.ヒューマンズだ。その後クリー.人たちの内紛によりこれらの存在は破棄、隠匿されてクリー.人は地球を去ったものの、彼らの遺伝子はその後も受け継がれていた。
     
     パンフレットによると小紫たちの一族が歴史に登場したのは25,000年前で、日本ではおよそ旧石器時代にあたる。劇中の台詞などから推測するに、日本でもクリ.ー人により造られたインヒューマンが霧(テリ.ジェン・ミスト)を浴びてまるで神のような力を得た様子を見た人々は彼らを《神使》と呼び、日本神話に登場する《霧と異世界との境界線を司る神:天之狭霧神(アメノサギリノカミ)》が遣わした一族として密かに崇め奉った。その後一族は未来視の能力者が現れた時より朝廷に預言者として召し抱えられており、幕末の小紫は後の明治天皇の女房として仕えている。初めの頃薩摩藩で貧しく生きる主人公も、かつてこの一族で最も強い武力を持つ者の末裔だったためイン.ヒューマンの遺伝子を持っている。
     
     本作のイン.ヒューマンズの設定は実は原作から変更が加えられていて、過去のドラマシリーズの『エージェ◯ト・オブ・シ◯ルド』に登場した設定に近い。例えば原作でイン.ヒューマンズとして有名なブラッ.ク・ボルトなどは能力以外に超人的なパワーを有しているが、本作を見る限りイン.ヒューマンズたちは能力以外は一般的な身体能力しかないと思われる。またテリ.ジェン・ミストをイン.ヒューマンズの遺伝子を持っていない人間が浴びると石化するというドラマの設定が本作でも見られた。今回のヴィランはこの影響を逆手にとり、奪った石碑でテリ.ジェン・ミストを世界中に撒き散らして他の人類を石化させて滅ぼし、イン.ヒューマンズのみが支配する世界を作ろうとする。
     (余談だが、M◯U映画あるあるで同じ世界観で生きてるのにあるヒーローがトラブルを解決する裏でアベンジャーズは何で助けてくれないの?という問題がある(映画序盤でも主人公は「アベ◯ジャーズにでも頼めよ」と言う)のだが、本作では
     →敵が石碑を使って霧(テリ.ジェン・ミスト)を降らせると、ゾロや日和などの特殊な血筋(インヒュー.マンの遺伝子)の人間以外は石化してしまうため他のヒーローは頼れない。
     とまあまあ納得できる理由が説明されていた)
     
     イン.ヒューマンズというのは、マー◯ルの黒歴史と呼べるほどに実写化が悉く失敗している。前述の通りよく知らない人にとってはミュー.タントと違いがよく分からずにその差別化がうまく図れていないのが要因にあるだろう。しかし本作においてはイン.ヒューマンズの設定と日本の神話や歴史がうまく噛み合っている。ミュー.タントと異なりイン.ヒューマンズは遥か昔に起源を持つため、長い歴史を持つ日本において彼らが誕生して脈々と受け継がれていき、幕末の時点で一族としてある程度の地位を培っているという設定は自然だった。そしてその当時では到底あり得ない力を持ったイン.ヒューマンズを見て、古くから八百万の神を信仰する日本民族は彼らを神の使いとして迫害するよりも敬って伝承するのもあり得ない話ではない。(キリスト教などの一神教の土地では、異能の存在は迫害されることが多い)
     しかし作中では能力を持つ人間はすべて神使と呼ばれており、イン.ヒューマンズのイの字も出てきていない。(現代に「自分たちは恐らく宇宙人によって生み出された」と小紫が言及しているのに留まる)この後のM◯Uにおいて彼らとそのほかのイン.ヒューマンズたちがどう関係してくるのかが気になるところだ。
     
     上のSF要素に加えて、本作は日本の幕末の歴史を知っているとより違った面白さを味わうことが出来る。主人公の先祖は、過去イン.ヒューマンズの一族の後継者争いに敗れて破門されたために、現在の鹿児島県にあたる薩摩藩に逃れて浪人として生きている。対する小紫は“霧を浴びて神の使いとなる者”として朝廷が極秘裏に抱える一族の後継者、そして睦仁親王(後の明治天皇)の女房を勤めている。そんな彼らが共闘を求めるのが現在の滋賀県で今も甲賀の里として有名な甲賀流忍者の一族だ。
     
     薩摩藩といえば長州と同盟を結び討幕を主導して明治維新の原動力となったことで有名で、その時に大政奉還の上奏を勅許しのちに王政復古の大号令を発して明治新政府を樹立したのが明治天皇だ。作中で主人公側の侍が「御老公(さま)」と敬い読んでいたのは恐らくNHK大河ドラマで知名度のある『篤◯』の養父である島津斉彬だろうと察せられて、わたしが気付かなかっただけで他にも偉人が登場しているかもしれない。(恐らく歴史との整合性を考慮して作中では江戸時代の年代は明言されておらず、会話から察するに薩長同盟締結前後かと思われる)本来田舎の芋侍である薩摩藩士たちだがこの頃は島津家の威光もあり当時の日本で一二を争う軍事力を備えているため、作中の兵力調達の流れも説得力がある。それに加えて「尊王」意識が強く昔から朝廷に遣える小紫の一族に同調するのは、歴史を考慮するとなんらおかしな態度ではない。また一族の分家の人間が甲賀流忍者として生きており、彼らと作中で紆余曲折を経て協力することになるが、甲賀衆も歴史上幕末において佐幕から一転討幕派となり後の戊辰戦争に参加しているため、この時代で徒党を組む相手として相応しいだろう。この頃から討幕の思想を共有する彼らがこの戦いで親交を深めて、その関係がのちの攘夷活動に繋がると考えることもできて非常に興味深かった。
     
     個人的によく考えたなと思うのが、およそ現実では不可能と思われる彼らの忍術が実は“イン.ヒューマンズとしての特殊な能力”だったので忍法は実在するという設定!これにより海外で大人気の某有名忍者漫画並みのダイナミック忍法がM◯UのあのVFXで展開されるのだから、それはもう凄かった。この時点で基本的に日本刀で戦う主人公の影が若干薄くなっていたのだが、そこはちゃんとこれを上回る見せ場が用意されているのでご安心を。よくよく調べるとこういった忍術は滋賀の甲賀ではなくお隣三重の伊賀の方を指すらしいが、そこはまあいつものハリウッドアレンジとして目を瞑ろう。以上のように、今作は江戸幕府末期の激動の時代の裏で実はこんなことがあったかも、と深読みするのが楽しい時代設定と言えるだろう。

     本作の主人公は、“意図せず逆行することになり騒動に巻き込まれる”というタイムリープ系ではよくある設定だ。日本の作品だと実は優れた技能があるが普通の少年であり思い悩みながら成長する、人によってはちょっと鬱陶しさも感じる人間性の主人公が多いが、これはハリウッド大作らしく基本的には「正義感が強く思いやりがあり、考えるより先に行動する」性格となっている。悪く言えば直情型でトラブルを起こしがちだが、現代の警官としての倫理観や身寄りがなくひとりで生きてきた経緯から意外と判断力には優れており、絶妙にノイズがないキャラクター像が作り上げられていた。今作はただでさえマルチ◯ースの複雑な仕組みに加えて日本では知名度がないイン.ヒューマンズがテーマとなっている。キャラクターまで複雑にすると描くべき要素が多すぎるので、シナリオの中でキャラクター像の構築を必要最低限にしたのは正しい判断だと思う。それに加えて、ロロノア・ゾロの演技もどちらかというと考えるより行動するキャラクター性が非常にマッチしていて、映画を10分も見れば彼の魅力の虜になるだろう。裏表なく心の奥底から人々を守りたいという熱い思いに心を打たれるし、ループするたびに小紫の死を見届けることとなる彼の慟哭には胸を突かれた。小紫は一応今作においてはヒロインという立ち位置だろうが、主人公との関係は描かれる範囲では恋愛未満で終わっている。魅力的な男女が困難を乗り越えれば当然のように結ばれる、などというシナリオはもう今の時代では観客は受け入れない。二人とも大義が第一であり、それを成就させるための同志としてお互いを認め合っている。わたしは古い人間なのでお似合いの二人が結ばれてくれると嬉しいな、という思いがあるものの、ロロノア・ゾロはどこか孤高の剣士のような気高さがあり、彼が誰かと添い遂げる様子は今はまだ想像できないところもある。

     長々と語ってきたが、最後にこれだけは言及しておきたい。この映画はシリーズファンから好意的に受け止められており(トマトメーターが80%フレッシュだがオーディエンススコアは脅威の98%!!)、公開から今までネット上では考察が飛び交っている。
     観客を惹きつける点は主に二つある。
     
     一つは、上でも説明した通り、作中で鍵となる石碑を使って行われる“儀式”は、明言こそされないが“テリ.ジェネシス”と同じであり、彼らがイン.ヒューマンズであることだ。
     最近のM◯Uの作品でイン.ヒューマンズが登場したのは今のところ同年公開のドク◯ー・スト◯ンジMoMのブ◯ック・ボルトのみだ。しかし彼は作中で《イルミ.ナティ》の組織の一員としての登場(イン.ヒューマンズの王とは言われている)であり、またアベ◯ジャーズが生きるアース616ではなく838の存在だった。
     果たして616では今回の映画のイン.ヒューマンズ以外は存在しないのか(だから彼らはイン.ヒューマンズという呼称を知らなかった?)、それともほかに存在して今後登場するのだろうか。(AoSやドラマ『イン.ヒューマンズ』がMCUの設定に数えられるか今のところ不明なのでここでは無視している。ディ◯ニー+では何故か『エージェント・カ◯ター』はフェーズ2にあるが前2作品は含まれていない。。)
     
     二つ目は、ミッドクレジットで流れた台詞だ。このシリーズは殆どの作品でエンドロール中、後にそれぞれ映像があるという通例があり、今作もそれに倣っている。そこで流れたシーンでは、戦いを終えて現代に戻った主人公が小紫に会いに行く様子が描かれる。共に戦い生きた二人は本編の最後にはお互いに惹かれあう何かがあるものの、彼らが結ばれることは【歴史には存在しない】と知っている。二人が共にいることでまた意図せずに未来を変えてしまうかもしれない。そもそも薩摩藩の下級武士と天皇の世話をする朝廷の女官では身分差もあり、この世で添い遂げることは不可能だった。そのため、二人は何も言わずに分かれて生きることにするが、ひとつだけある約束をした。「平和になった未来で会おう」と。その言葉通りに、ミッドクレジットのシーンで主人公が小紫の元へ行ったところ、彼女は目を丸くしてこう言った。―――「あなたは誰ですか?」
     
     何度過去に死んで現代に戻っても、どのユニバースの小紫もイン.ヒューマンズの力を持ち主人公のことを知っていたのに、なんとすべてを成し遂げた未来の彼女は主人公の記憶がなかった!!(これを語ると長くなるのだが、果たして小紫は幕末と現代で違う人物なのか、それとも実は同一人物なのかという議論もある。能力だけではなく、姿形まであまりにも一緒であるためだ。現代で主人公の味方をするのはほぼ彼女だけ(霜月コウ三郎演じる主人公の祖父が転生した若者の意識を通して助けてくれるのを除く)なのも、彼女以外の一族は現代に至るまでに滅亡してしまったのでは?と考察できる。小紫は現代に戻った主人公がその直前に死んだ歴史のことを詳細まで知っていた。これが歴史として先祖から日記か何かとして受け継いできた【記録】なのか、それとも彼女自身が経験した【記憶】なのか明言されていない)
     
     無事に敵を討ち果たしてハッピーエンドで終わったというのに、ずっとひとりで生きてきた主人公が現代ではじめて心を許した人間へ向ける満面の笑顔(ロロノア・ゾロの少し童顔であどけなさの残るこの表情がとても魅力的だ)に対して、「あなたは誰ですか?」と返されたこのやりとりは、当然ながら観客にショックを与えた。そして小紫の顔から一瞬だけ驚く主人公の顔が映り、そのまま画面は暗転してまたエンドロールが流れるため、この台詞の真相は不明なまま終わる。エンドロールが終わったあとのポストクレジットでは、主人公が復讐心を捨てたことで生き延びたあのキャラクターが、また何かを企んでそうな不穏なシーンが流れる……。
     
     元に戻った主人公のことを分からないというのは、果たして「現代の小紫は平和になったせいで歴史の伝承がされなかったために過去を知らないだけ」なのか(それでもこの時点で主人公と共有するものが何もないので切ないが)、それとも「主人公が実は石碑――“テリ.ジェン”自体が存在せずにイン.ヒューマンズやそれこそアベ◯ジャーズなどの他のヒーローも存在しない違うユニバースに来てしまった」からなのか。今のところ公式からは断定できるような情報がなにも出ていない。

     以上、考察する余地が多分にある興味深い映画だった。今回は新ヒーロー誕生の話なのでア◯ンジャーズなどの他作品を未見でも十分に楽しめるものとなっている。日本刀の殺陣シーンやイン.ヒューマンズたちのVFXは素晴らしい出来なので、興味を持った方はぜひ設備の整ったスクリーンで見て欲しい。
     ちなみに主演のロロノア・ゾロはすでにいくつか新作が決まっており、直近ではニコ・ロビン脚本のスパイ映画に出演するらしい。こちらは舞台畑で有名な演技派俳優のトラファルガー・ローとW主演するらしく、その点でも見応えのある映画となりそうだ。ぜひチェックしたいと思う。
     

    ――――――――――――――――――――
    (あとがき)
     この映画評論家はわたしレベルの知識しかないので間違ってたらすみません、まあ映画評論家の9割はただの知ったかぶりなのでね!(ごめんなさい)
     
     この設定のこだわりは主に二点。

    ①日和の役の力は他人の意識を異なる時間で生きる同じ魂の人間に入れられる。→時間を超えられるところがトキトキの実を意識してます。
     トキトキの実のように肉体ではなく“意識のみ”なのはマー◯ルコミックのキャラクターに肉体を移動させるアメ◯カ・チャベスちゃんがいるのでその力との差別化です。チ◯ベスちゃんはマルチバースを肉体ごと行き来する能力を持ちますが、今回の力も大枠の定義としてはマルチバースを超えて意識を移動させることも可能な設定。これはMoMの“ドリー◯ウォーク”と似てますが、時間を遡ることができる分こちらの方が上位互換の力です。魔術でできるということは、宇宙人に改造されて人智を超えることで実現可能な力なのではないかな?と考えています。
     この“意識だけ”が移動する設定の肝は、上で書いてる通りに意識のみ過去に戻ってゾロが行動を起こす→志半ばに死ぬと新しい時間軸が生まれて未来が変わる=マルチバース化(!!)すること。これはマルチバース・サーガの作品なので←
     幕末で死んだ後のゾロは特定の時間(現代で日和が死ぬ一定の時間の前)の現代の身体で目覚めるがそのたびに歴史が変動している感じ。意図せず未来を変えてしまうところはDC作品のドラマ版フラッ◯ュのフ◯ッシュ・ポイントが分かりやすいです。
     わざとじゃないけどたくさんの時間軸を発生させてしまうのでのちにア◯ンジャーズに合流したときにスト◯ンジとかイ◯ミナティの連中に「よくもタイムラインめちゃくちゃにしてくれたな!」ってめっちゃ怒られるやつ。笑(全然笑えないやつ)
     ちなみにゾロの能力は「触れた金属の硬度を変化(黒化)させる」力です。武装色で刀を強化するところを意識。

    ②ゾロが原作でモモの助に教えるスナッチの語源がたぶん薩摩藩士のチェストから来てるので薩摩に縁があるのかな?と考えて今作は京都(ワノ国花の都のモデルの一つ)から流浪して薩摩藩で生きているという設定。幕末が舞台なのは完全にわたしの好みなんですけど、そういえば鎖国状態のワノ国も江戸時代がモデルですよね。
     AoS設定のイン.ヒューマンズが出るのもわたしの好みなんですけど(ほんまのほんまに可哀想で可愛いデイ.ジーちゃんが大好き😢)、イン.ヒューマンズがテリ.ジェン・ミストを浴びる様子→霧を司る神に例えられないかな、と考えて見つけたのが『天之狭霧神(アメノサギリノカミ)』。そこからこの神を祀る神社を調べたら全国に四つ(今確認してるもの)見つけたんですが、そのうちの二つがこれ。
     ・狹霧神社(1716年建立)→ 鹿児島県姶良市平松5668
     ・水上神社(859年現地に遷座)→ 滋賀県長浜市余呉町摺墨648
     ……何も意図せずに後付けで考えた設定の中で薩摩藩と甲賀流忍者の縁がある鹿児島と滋賀にそれぞれ天之狭霧神(アメノサギリノカミ)を御祭神にした神社があるのすごない???????全国に50社くらいあってそのうちの2社ならともかくたぶん4社くらいしかない中の2社よ??????すごない??????(2回目)(無駄な情報なんですがわたし鹿児島生まれ滋賀育ちなので2社ともめっちゃ近くに住んでて感動がすごかったです本当に。姶良と長浜にそんな神社があったとは…)
     という調査結果を結びつけて、薩摩藩と宮川藩にそれぞれ天之狭霧神(アメノサギリノカミ)を祀る神社を護る存在として一族がいるという設定。
     日本に数ある忍者衆の中で今回甲賀流忍者を選んだのは、設定通りに幕末で明確に倒幕派として活躍したところからです。NAR◯TOとかで連想する忍術が得意なのは上の通りどちらかというと伊賀の方で、甲賀は薬を扱うことが得意だったらしいんですが、まあ伊賀と甲賀って協力関係だったこともあるらしいから忍術を使える人くらいいたでしょう!忍術が実は特殊能力だった、は=雷ぞうのマキマキの実を参考に。アメコミとかの特殊能力って忍者の忍術を元に考えられたものってあると思うから、忍者が実は能力だったって設定だと由来と名前が逆転しててちょっと面白い。

     映画のタイトルと主人公の名前を書いてないのはわざとです。小紫はともかく主人公の名前はンピからちょうどいい名前がなくて勝手に作ってしまうとゾロの要素薄くなるなと思って考えるのをやめました。タイトルは仮だと『ロー.ニン』。M◯U好きな人はもちろん知ってると思いますがホークア.イが名乗った別名ですね。ただ原作はロー.ニンって何代もキャラクターがいて、日本人ヒーローが名乗ってた時もあります。ただM◯Uだと今度配信される『エコ.ー』の中でマヤが二代目ロー.ニンになる気がしてこっちもなんとなく書きませんでした。
     
     こんなにいろいろ書いても何の役にも立たないの面白すぎるな。仕事しながらだいたい一日で考えました。この《評論家が書いた》体の文章考えるのすごく楽しかったです。色々調べましたが一日で考えたのでたぶん説明できない矛盾が全然あると思います。普通にマル◯バースの仕組みって考えると頭痛くなる。もはや謎解きじゃん。

     長々と閲覧いただきありがとうございました。……いやここまで見てる人間果たしておるのか?笑
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