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    sumireya_sana

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    sumireya_sana

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    「トワイライト」という映画のロゾパロディをネタツイしてたものをまとめました

    #ローゾロ
    rosoro
    #ロゾ
    losso

    吸血鬼ロー×ゾロ♀の吸血鬼パロゾ①18歳になり孤児院を出ることになったゾロ♀は、遠い親戚の🦅の世話になるために小さな街に越してきた
    そこは昔何度か過ごしたことのあるところで、幼馴染のサンジとは再会していきなり喧嘩をする 顔を合わすと喧嘩ばかりになるので先の生活を不安に思ったが、転校先の高校には👒や🤥、ナミなど気やすい同級生がいて、サンジも含めてすぐに友人になれた
    しかし彼らと食堂で昼食をとっていたところ、ゾロはふと目が惹かれるようにある男の集団をみた 一番に印象的なのは、彼らが皆不健康に見える青白い肌であること 彼らはどこか他の生徒たちとは一線を画した雰囲気をしていた
    その中でも特にゾロが気になったのは、シャツから覗く手のひらに黒い入れ墨があり、青白い顔に目立つ濃い隈をしている男だった 
    異国の血を引いているようなエクゾチックな雰囲気で、ハンサムと呼ばれるような見目端麗男だ ついゾロがその男を見つめていると、一瞬だけ目が合った

    「ゾロ、意外とイケメン好きなの?」
    「あ?」

    後ろから面白そうな目つきでナミが聞いてきた なんだかそわそわとした心地になって否定する
    「…興味ねえ」
    「まあまあ、つい見ちゃうくらい格好いいもんねえ」

    ナミは人の話を聞かないタイプらしい ゾロが顔を険しくすると気を悪くすることもなく笑っている

    「あはは、ごめんって。でもあいつらはやめた方がいいわよ。保険医してる💋っていう先生の養子らしいんだけどね、わたしたちとは全然話そうとしないの。それに一番背の高いあいつ、トラ男って言うんだけど、今まで告白した子皆んな振ってるって」
    「だからおれはべつに好きなわけじゃ…」
    「まあまあ聞いてよ。お勧めしないのはそういう理由だからってわけじゃなくてね…あいつら、吸血鬼なんじゃないかって噂なの!」
    「吸血鬼?」

    そんな物語の中でしか聞かないようなワードを転校初日に言われるとは思わなかった

    「からかってるのか?」

    ゾロが一応聞くと、ナミはやっぱり笑った

    「まあ信じられないわよね〜。私も絶対信じてるわけじゃないけど、理由は色々あるのよ。曇りと雨の日しか学校に来ないとか、何かを食べてるところを見ないとか。まあとにかくそんな変人集団だから、あんまり近づかない方がいいわよ。ゾロせっかく美人なんだから」
    「お世辞はいらねえよ」

    ナミの話は興味深かったものの、お腹が空いていたゾロはすぐに昼食に夢中になってしまい、男たちの話からは気がそれた

    しかし、その後の化学の授業が合同クラスで、隣の教室の生徒と隣同士となったーー例の、トラ男という男と 
    トラ男が先に二人席に着いていて、迷っていたところを🤥に連れられたゾロがあとから隣の椅子に座ろうとした…そのとき、トラ男が思い切り顔を顰めて鼻と口を手で覆った 気にせずに座ったが、さすがのゾロも少し不快な気持ちになる 昨日はちゃんと風呂に入ったし、これまでも別に臭いと言われたことはないが…
    文句を言うこともないがトラ男は終始顔を訝しんでいて、共同実験でゾロが無意識に隣に行くとすぐに距離を開ける 授業が終わる頃には失礼なやつだなとゾロは不機嫌になってつい声をかけてしまった

    「おい」
    「…なんだ?」

    教室を去ろうとしたトラ男は振り返ってちらりと視線を合わせるが、すぐに目を逸らした

    「なんか言いたいことがあるなら言えよ」

    仁王立ちで問いかけるゾロだが、トラ男はまた口元に手をやって「何もない」と呟くように言って去った ゾロは呆気に取られてその背中を見送るしかなかった 
    いつもそこまで人間関係を気にすることはないのに、ゾロは放課後もずっとトラ男のことで腹を立てていた だから美味いもんでも食べて忘れようと思ったが、🦅の家は酒しかなかった 仕方なく近くのスーパーに買いに行くことにしたのだか、しかしスーパーにこそ匂いを辿ってつけたものの帰りの道は全く覚えておらず、歩けば歩くほど鬱蒼な森のような場所になっていく 「🦅の目の家ってこんな場所にあったか?」と疑問を持ちつつかろうじてある車道の脇を歩いていた。

    ーーそのとき、パァーーン!と大きなクラクションが鳴った ゾロが振り返った時には眩いライトが視界を覆っていて、咄嗟に顔を手で覆って瞼を閉じた

    (轢かれるーー!)

    そう思ったけど避けることもできず、ゾロは立ち尽くしていた……ところが、全く予想した衝撃は襲ってこなかった それどころか、身体を何かが優しく包み込んでいるようだった

    「…ったく。危ねえな」

    掠れた低い男の声だった ゾロがふと瞼を開けて顔を上げると、すぐ近くに隈の酷い目があった

    「トラ男!?」

    ゾロはトラ男に抱きしめられて、道路の脇に座り込んでいた けれど、なんだかおかしい 先ほどは急カーブを少し先に行った道路脇にいたはずだ だから曲がりきれなかったトラックに轢かれそうになった…はずなのに、今はそのカーブから離れた直線の脇にいる いつの間にかにこんなに移動したのだろうか?疑問は尽きなかったが、今はそれより、だろう

    「悪い、助かった。ありがとうトラ男」

    ゾロが笑顔で礼を言うと、トラ男はやっぱり少し顔を顰めたけど今度は口を覆うことはなかった

    「それよりテメェ、どこに向かう気なんだ?」
    「え?どこって家に帰る途中だ」
    「お前の家は街の方だろ。こっちには何もない」
    「そうなのか?どうりで歩いても着かねえわけだな。はあ、それよりびっくりしてもっと腹減った。お前なんか食い物持ってねえか?」
    「…お前こんな状況で食べ物の心配するのか?」
    「当たり前だろ。腹が減ってはなんとやらだ」

    ゾロが当然だろと言う顔で言うと、トラ男がついというように初めて笑顔を見せた

    「呆れたやつだな…」

    苦笑いだったが、その顔を見たゾロは驚いて見惚れてしまった もっとそんな顔をすればいいのにと思うくらいに、魅力的な笑顔だった

    「その手に持ったやつを食べればいいだろ」

    トラ男がゾロが両手に持った大きなスーパーの袋を見た しかしゾロは首を振る

    「全部料理の材料だから食えねえんだ。野菜とか調味料とか。フランスパンくらいならあるけど」
    「なら俺の家にくるか?食い物はねえがキッチンはある。好きに使えばいい」

    トラ男がそう言うので、ゾロは喜んで頷く

    「いいのか?助かる!」

    そしてトラ男に連れられて森の中にある彼の家に辿り着いたゾロは驚いた 到底近くに人は住んでいないような深い森の奥にあって、そのせいかガラス張りの壁が多いお洒落で立派な邸宅だった
    案内されたキッチンは壁や床も白い大理石で作られていた…ところが、そこは綺麗というより全く使われていないようだった フライパンや鍋などはあるが、調味料は全くないという ゾロは呆れながらトラ男をみる

    「食い物どころか何もないのはどうなんだ。料理できないだろ?」
    「焼くくらいできる」

    トラ男がふんぞり返ってそんなことを言うものだから、ゾロは笑ってしまった 冷静でそつなくなんでも出来そうな顔をして料理は焼くしかできないなんて、随分と可愛らしいギャップがあるものだ

    「じゃあ助けてもらった礼に飯作ってやるよ」

    そのときトラ男が少しだけ何か言いたげな顔をしたが、何も言われなかったのでスルーして料理を始める
    とは言っても調味料も料理器具も満足に揃っていないので、簡単なスープとパンに合う魚の煮付けを作った 完成した料理を見てトラ男が驚いたように目を丸くする

    「料理得意なんだな」
    「幼馴染がコック志望でな。昔からよく一緒に料理作ってた。あいつの方がずっと上手いが、まあでもよく出来た。ほら」

    ゾロが魚を一口スプーンで掬ってトラ男の口元に手をやる あーん、という姿勢に、トラ男は初めて慌てたような顔をした

    「いや、今腹空いてねえから…」

    そんなことを言って断ろうとしてるのは分かったが、ゾロはムッとしてトラ男の口に無理やりスプーンを突っ込んだ「!!」トラ男は初めこそ険しい表情をしていたが、魚を咀嚼していくうちに眉の皺を和らげていく 飲み込んでから、ぽつりと言った

    「…美味い」
    「だろ?」

    ゾロが得意げに笑って見せると、トラ男も同じように笑顔を見せた

    「ああ、ありがとう、ゾロ屋」
    「!」

    その顔を見て、ゾロはなぜだか頬が熱くなるのが分かった

    「いや、これはさっき助けてもらったやつのお礼だから…」

    慌てて取り繕うゾロだが、トラ男はそれからずっと笑顔で料理を食べた その間この街に来るまでのことなどをトラ男が聞いてくるから、なんとなくくだけたかと思ってゾロはつい聞いてみた

    「お前、初めて教室で会った時なんで口と鼻覆ったんだ。失礼だぞ。今はなんもしてないのに…」
    「ああ。…悪かった。悪気はなかった。ただ、その、匂いが…」
    「匂い??…おれ臭いのか?」

    ゾロが流石に気にして袖の匂いをくんくんとするが、とくに何も匂わない トラ男は言い辛そうに話した

    「臭いわけじゃない。…それどころか、お前は甘い匂いがするんだ」
    「甘い?」
    「ああ。食べたくなるほど甘くて芳しい匂いがする…」

    トラ男はおのれの顎を掴んで、見つめ合うように言った おかしなことを言うやつだなと思ったけど、それよりもゾロは気になることがあった

    「お前の目、黒だと思ってたのに金色にも見える。変化したみたいだ」

    それを聞いてトラ男はハッとするが、ゾロはその目を見つめ続けてつぶやいた

    「月みたいですごく綺麗だ」

    そう言われたトラ男が驚いて目を見開くと、また黒の瞳が満月みたいに輝いた……二人はそのとき、ただ見つめ合っていた するとトラ男の手がゾロの頬の輪郭を添うようにそっと当てられる そのあまりの冷たさに内心ゾロは驚く しかしそれよりも、少しずつトラ男が顔を近付けてくるのに夢中で、心臓が煩いくらいに鳴っている…

    「え、キャプテンなに女連れ込んでんですか?!」

    そんな叫び声が聞こえて、二人ははっと体を離した

    「🐧…でかい声を出すな」

    トラ男が呆れたように額に手をおいた

    「え、普通のニン…?!え?!かわいい!!」

    帽子を被った男がじろじろと見てくる

    「おい、近付くな」

    トラ男が男との間に体を割り込ませた
    知らない男に怯えたわけではないが、なんとなくトラ男のその背に体を寄せる

    「…今日転入してきたゾロだ」
    「ああ!そういえばすごく可愛い子が入ってきたって話題でしたよね!」
    「……」

    なんとなく不機嫌そうに顔を歪めるトラ男の袖を軽く引く

    「!悪い、こっちの五月蝿いのは🐧だ。遠い親戚で一緒にここに住んでる」
    「宜しくね、ゾロちゃん」

    そういえば初めてトラ男を見た時の集団の中にいたかもしれない

    「そろそろ帰るか」
    「あ?ああ」

    急かすようにトラ男が言って玄関に連れられる

    「悪い、なんか邪魔したな。キッチン助かった、ありがとな」
    「いや…こっちこそ、美味しいご飯をありがとう、ゾロ屋」

    トラ男はまたあの笑顔を見せた

    「お前、そうやって笑ってる方がいいぞ」

    ゾロはつい笑ってそう言った するとトラ男は驚いた顔をして、また笑った

    「…変なやつだな、お前は」

    翌日学校へ行くと、駐車場でちょうどトラ男たちが来たのと会った

    「よう!」

    ゾロが手を挙げて声をかけると、トラ男は困った顔をして少しだけ手を挙げて応えて行った その様子を後ろから見ていたらしいナミが興奮したように声を上げる

    「ちょっとゾロ、どういうこと?!なんでトラ男くんと挨拶してるの?」
    「何でもねェよ。昨日偶然会って…」

    それからはナミに質問責めで、ゾロはかわすのに苦労した…何故だか、トラ男のことや家のことはあまり話さない方がいいと直感していたからだ

    そういえば、思い出してみるとトラックから助けてもらった時は不思議だったなと思った…まるであのときは瞬間移動したみたいだったーーお、ちょうどこの辺りから、とゾロが道路を見下ろしながら歩いてると、誰かの靴先が見えた 顔を上げると、また怒った様な顔のトラ男がいた

    「お前な…今度は何しに来たんだ?」
    「あ?家に帰るところだ」

    当たり前だろとゾロが答えると、トラ男は形容し難い表情をする

    「お前のそれ…本気なのか?」
    「?それって?」
    「方向音痴だろ」
    「は?ちげェよ」
    「無自覚なのか…」

    トラ男が呆れた様にため息を吐いた

    「で?腹が空く前に帰れそうか?」
    「あ?あ〜…ここから昨日車でお前に送ってもらったって考えると…遠いよな」
    「かなりな」

    トラ男がくすりと笑って問いかける

    「またキッチン使うか?」

    それから、ゾロが迷ってなぜかトラ男の家に辿り着くたびに何か料理を作ってやるのが日課になった トラ男が心底美味しそうに笑顔で食べてくれるから、ゾロもつい色んなものを作った 家のために食材を買っていたのが、トラ男のために買うようになった

    その日、学校の行事のせいで帰りが遅くなった トラ男にいつものように送ってもらって家の前で別れると、後ろから声がかかる

    「おい、テメェ、女の癖にこんな遅くに一人で出歩くんじゃねェよ」
    「あァ?」

    振り返ると、サンジが不機嫌そうに立っていた

    「お前仕事は?」
    「終わったとこだよ」

    なるほど、結構な時間までトラ男の家で過ごしていたらしい

    「何してた?」

    サンジがなぜか真剣な顔でじっと見てきた

    「…なんでもねェよ」

    そう返すと、ため息を吐かれる

    「さっきの車にいたの、トラ男だよな」
    「!」
    「あいつはやめとけ」
    「何だよ、いきなり…」

    サンジとは幼馴染で育ったもののこれまで喧嘩ばかりしていた それなのに、今は見たこともない真面目な顔をして告げる

    「トラ男の噂のこと、ナミさんから聞いただろ」
    「…吸血鬼ってやつか?お前までそんな与太話するのか」

    ゾロが呆れて言うと、チッと舌打ちが返る 暫しの沈黙の後、静かな空気をサンジの声が震わせる

    「嘘じゃなかったら?」
    「…は?」

    ゾロのとぼけた声の後に、サンジが話を続ける

    「昔話がある。ヴィンスモーク家が大地主でここを支配してた時、おれの祖先とトラ男たちの一族は盟約を交わした。お互いの領分を決して犯さなければ、その正体は誰にも明かさないと…古い話だ」

    サンジから、何故か目が離せなかった

    「昔話なんだろ」

    ゾロがついそう尋ねるが、サンジは笑わなかった

    「お前を傷つけたくねェんだ、ゾロ」


    その夜、ゾロは不思議な夢を見た 真っ暗闇の中に二人の男女が倒れている ゾロが近付くと、その人影が勢いよく顔を上げる 「!!」ーー女は、自分の顔だった その首元からは真っ赤な鮮血が流れている その血は男の尖った歯にも滴っていて…その瞳は金色に輝いていた そう、満月のように美しく……

    「ッ!!」

    ゾロはベッドの上で瞼を開けたその瞬間、驚いた ほんの一瞬、トラ男が立っているような気がしたからだ …一つ瞬きした後、そこにはいつもの壁と本棚しかなかった…変な夢を見たからきっと見間違いをしたのだろう サンジから変な話を聞いたせいだとため息を一つ吐くーー『吸血鬼』 話だけ聞くと馬鹿らしいなと思っている…でも、🤥やナミならともかく、あのサンジがこんな冗談を言うとは思えなかったから 傷つけたくないとは、どういう意味なのだろう

     *

    「プロムのドレス決めた?」

    ある日昼食を食べていると、ナミから尋ねられた

    「ああ。親戚の借りる」
    「どんなの?」

    ちょうど先日👻が携帯に画像を送ってくれたので、それを見せる

    「うわっ、すごいゴスロリ…うーん、ゾロならなんでも似合うと思うけど、もっと違うのにしない?あっ、そうだ〜今度の週末買いに行きましょうよ!」
    「面倒くせェからパス」

    ゾロは即答したが、ナミは聞き入れなかった

    「じゃあさっき寝てた数学のノート見せませーん!」
    「ハァ?!」
    「あんたはついてくればいいだけよ!土曜日にセンター街ね!決まりだから!」

    ナミのあまりの勢いに、ゾロは頷きそうになってから思いついたことを尋ねる

    「そこって大きな図書館があるよな?」
    「え?ええ。あったと思うけど」
    「分かった。行く。でも図書館で調べ物するついでだからな」

    …サンジのあの話のことを、ちょうど調べようと思っていたのだ ゾロの頭の中には常にトラ男のことがあった 本人に吸血鬼なのか?と聞くわけにいかないとは言え、勝手に調べ物をするのにも少しの後ろめたさを持ちつつ…

    「うーん!可愛い!やっぱりゾロはスタイルがいいからノンショルダーのほうが似合うわね!このおっきい胸もガンガン男共にアピールしたいわよね!サンジくんもこればっかりは誤魔化せないと思うわ!あっ!あの赤いドレス可愛い〜!じゃあ今度はこっちね!」
    「……」

    嫌な予感はしていたが、迎えた土曜日、ゾロは笑顔のナミに見事に着せ替え人形にされていた すでに5着も着回されて、もはや反論する気も起きずにゾロはげっそりとされるがままだ 何としても断っておけば良かった…… それから一時間ほど好き放題されるが、図書館に行くと言ってようやく解放された 
    すっかりと疲れ切っていたがゾロは気を取り直して調べ物をした ヴィンスモーク家の歴史、盟約、そして吸血鬼ーー

    『民話や伝説で度々語られる蘇った死人、または不死の存在。彼らは人よりも長い時を生き、冷たい肌を持ち、高い俊敏性と大きなパワーを秘めており、人智を越える特殊な力を持つものもいる。彼らは食べ物を必要とせず、人の血のみを栄養源として飲む……』

    それから古い伝承を読んだりして、ゾロは夢中で調べていた しかしふと窓の外を見れば真っ暗だった まずい、この後ナミと夕飯を食べる約束をしていたのに 慌ててレストランへの夜道を急ぐが、そんなゾロに後ろから声がかかった

    「お嬢ちゃん可愛いねぇ!」
    「おれたちと遊ばない?」

    振り返る暇もなく、五人の若い男たちが迫っていて手を握られた

    「やめろよ」

    振り払おうとするが、男の力は強かった ゾロは養い親の🦅に剣技を教わっていて、体術の心得もある

    「怯えちゃった?悪いようにはしないよ〜」

    男がさらに迫ってくるが、ゾロは冷静だった しかしいきなり五人を振り払って逃げるのはキツイだろう チンピラたちに従ったようなフリをして、さてどうしようかと悩んでいた瞬間だった

    「そいつから離れろッ!!」

    聞き覚えのある声がしたかと思うと、力強い腕がゾロを抱き寄せる そしてゾロの手を掴んでいた男は、ドン!と胸を押されて文字通り空を飛び、五メートルほど後方に倒れた 到底人の力とは思えない ゾロはそれを呆然と見つめて、自分を抱く男の顔を見上げた

    「トラ男…」

    チンピラ共は「お前は誰だ?!」と突然現れたトラ男に向かって威嚇をする しかしトラ男の先ほどの怪力な上に

    「今すぐ失せろ!でないと引き裂いてやるぞ!」

    という凄まじい怒りを見て、あっという間に散って行った 二人きりになった途端に、トラ男が大きくため息を吐いた

    「ゾロ屋、頼むから、危ない目に遭わないでくれ…」

    トラ男がそう言って、ぎゅうと強く抱き締めてくる

    「わ、わるかった。助けてくれてありがとう…」

    ゾロはまだ呆然としてそれだけ返してから、恐る恐るトラ男の背中に手を回した

    「どうしてここにいたんだ?」
    「……」

    その問いに、男は答えなかった その後ナミとの約束の話をすると、心配だからとトラ男が送ってくることになった レストランに向かうと、ナミが店の前できょろきょろとしていた

    「あっ!!ゾロ、もう何やってたのよ、電話にも出ないで!また充電切らしてたでしょ?心配したんだからー…って、あれ、トラ男くん?なんでここに?」
    「さっきチンピラに絡まれてるところを助けてくれたんだ」
    「えっ?!大丈夫なの?!何もなかった?」
    「ああ」

    ナミが安堵したその拍子に、ぐう、とゾロの大きな腹の虫が鳴った 昼から何も食べていないのだ すると、それを見たナミが提案する

    「良かったらレストランはゾロとトラ男くんで使ったら?二人で予約してるから」
    「は?」

    驚くゾロの様子も気にせずに、ナミが捲し立てる

    「いいのいいの!!私はちょっと用事が出来たから帰るわね!!…来週学校でどうだったか話聞かせなさいよ」

    最後の方に小声でそんなことを言って、ナミがウインクをする 余計なことを…と思う間も無く、タクシーで帰ってしまった

    「どうする?」

    トラ男が尋ねた答えは、ゾロの腹の虫がまたしてしまった

    「お連れ様は本当に何もいらないのですか?」
    「ああ、お構いなく」

    ウエイターの問いかけにトラ男がそう返す ゾロの前には結構な量の皿があるのに、トラ男の前には水のコップが一つあるだけだ

    「…腹減ってないのか?」

    ゾロが思うところがあってそう尋ねると、トラ男は頷くだけだった ウエイターが去った後、店の隅の方だから思い切って小声で話すことにした

    「それで、なんであんなところにいたんだ?」

    トラ男は顔色を変えないものの、やはり答えはしなかった ゾロは今度はこう聞いてみた

    「おれを尾けてたのか?」
    「…遠くから見守ってたんだ。お前が危ない目に遭わないように」

    トラ男の返答を聞いて、逆にゾロが驚いて黙ってしまった 冗談だったのに…

    「助けが必要になるまで距離を置いて見守っていた…そしたら、あのクズ共の心の声が聞こえて…」
    「!待て」

    ゾロは聞こえてきた言葉が信じられなくて、つい話を遮った

    「心の声が聞こえた?心が読めるってことか?」

    トラ男は誤魔化さなかった

    「ああ。…この店にいる客全員の考えが分かる。どいつもこいつもセックスとか金とかばかり考えていて、俺の頭の中はいつも喧しいんだ…だが、お前の心だけは読めない。お前は静かで、すごく心地いいんだ。でもお前の気持ちが読めなくて、時々ひどく苛つくが」

    トラ男がそう言って苦笑いをする つい尋ねていた

    「それっておれがおかしいのか?」

    するとトラ男はきょとんとした顔をしてからまた笑った

    「違う。お前はおれにとって魅力的だってことだ」

    真っ直ぐと視線を寄越してきて、そんなことを言ってきた ーーどきりと、ゾロの心臓が高鳴った その後は、たくさんのご飯を食べるゾロを、トラ男は殆ど黙って見つめてきた

    その後、いつものように車で家まで送ってくれたが、いつもとは違ってトラ男が車から降りた ゾロの前に来て、手を握ってきた その手はやっぱり酷く冷たかったけど、今度は驚かなかった

    「ゾロ屋、おれはずっと自分が我慢強いと思っていた。現にどんなことでも耐えてきた…それなのに、お前のことになると我慢できないんだ。お前にもっと触れたい。お前に近付くべきではないと分かってる。それでも…」

    そう言って、トラ男が身体を抱き寄せた。素直に抱き締められながら、ゾロはその言葉に応えるように言った

    「……トラ男、おれ、お前が何者か分かった気がする」

    それを聞いて、顔を上げたトラ男が額同士をこつんとつけて、目を合わせながら言った

    「なら明日、答え合わせをしよう」

    (つづく)
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