カシャカシャとシェイカーを前後に振ってドリンクを混ぜる。頃合いになったところで蓋を開けてカクテルグラスへと注いだ。グラスを指で支えて床を滑らせるように相手へと提供する。
「お待たせしました、ベルベットハンマーです」
「お、おお……」
カクテルを出された相手、闇ノシュウはカクテルと僕を交互に見てパチパチと手を叩いた。誰もいないこの場では彼の手の音が響く。手を叩き終わったシュウはグラスに手を伸ばして少し持ち上げ、くるくると回して笑みを浮かべた。
「すごいね、アイク。バーテンダーみたいだよ」
「みたい、じゃなくてバーテンダーだよ」
「そうだった」
今日は僕達のバーが来週開店するからシュウをお客に迎えて接客の練習をしていた。本当はヴォックスやルカも呼んでみんなで練習をするつもりだったけれど、今日はみんな遠方へ行って開店に必要なものを仕入れに行っていた。味の確認もしてもらいたかったけどシュウ相手に飲んで欲しいと言えるはずもなく、出来上がったカクテルの見た目を楽しんでもらって後で僕がすべていただくつもりだ。
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