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    ITT罪深い

    #mafiyami

    💛💜 とん、と肩同士がぶつかる。ごめんねと隣の彼を見上げると思った以上に顔が近かった。綺麗なアメジストに熱を浮かべ、こちらを見つめる彼に、僕はついにこの時が来たのかと息を飲む。
    「るか、くん...」
     彼、---愛しい恋人の名前を呼ぶ僕の声にも熱を帯びている。ここまで来るのに本当長かった。緊張で震える手をおさえるため、ぎゅっと手を握り締めては覚悟を決めてゆっくりと瞼を閉じた。



     僕とルカくんは元々は同僚だった。部署は違うけれど、同じ会社で働く同期でたまに飲み会で話すぐらいの関係だった。入社何年目かにしてお互いゲームが好きだと知ってその話で盛り上がり、飲み会だけでは話し足りずに僕の家で飲み直して話を続けることになった。その日から僕たちはただの同僚から友達へと変わった。
     交流を深めていくうちに、気付いたら僕はルカくんのことが好きになっていた。僕にとって初めての恋。しかも、相手は同性のだ。女性のことも好きになったことがないのに初めてが男性なんて僕の頭はキャパオーバー。少しの間、ルカくんを避けることもあった。始めこそ混乱したけど時間が経つにつれて、付き合わなくともこうやって一緒に過ごせるだけでいいと思うようになっていた。それなのに酔った勢いで好きだと伝えてしまった時は、血の気が引いてこの場から逃げ出したくなった。ルカくんと過ごせる些細な幸せが壊れてしまう、僕の瞳には涙が溜まってきてすぐにでも溢れそうになった。絶対に断られる、そう思っていたのにルカくんから俺も、と返事を貰えた。かくして、僕たちは友達から恋人へと関係を変化させた。

     前述の通り、僕は今まで恋をしたことがなかったわけで。勿論のことお付き合いなんてしたこともないので全てが初めて。ルカくんは格好よくて誰に対しても優しいし経験豊富なんだろうと思っていたけど、意外にも交際は僕とが初めて。お互いが初めて、急いで階段を上がっていくには知識も経験も何もかも足りない。ゆっくり、僕たちのペースで進めていこうと2人で話し合って決めた。それからは付き合う前見たく、どちらかの家に行ってゲームしたり映画見たり、たまには映画館に行ったり買い物したり綺麗な景色を見にいったり。とても清い交際を続けていた。
     だけど僕はそろそろ次の段階に進みたいと思っていた。僕たちが恋人になって半年。ルカくんは一向に僕に手を出そうとしない。この手を出さないというのは性的な意味ではなく、その前段階。手を握ったり抱きしめたり、ルカくんからは絶対にしてこない。触れ合うのも何回かに一回ぐらい、こんなスローペースな僕たちはまだキスすらしたことなかった。

     僕に触れない彼が今、熱っぽい視線を浮かべて僕を見ている。今日、今この時こそ、僕たちが一歩先に進める時だと確信した。恋人の名を呼んで瞼を閉じる、いくら相手がルカくんだとしてもこれだけで何を待っているのか理解できるはず。しかしいくら待てど、期待している感触が降りてこない。それどころか、ルカくんが動いた気配すらない。この状態になってから体感5分、いくらなんでも遅すぎる。恐る恐る目を開けると目の前で顔を真っ赤にしたルカくんが固まっている。
    「無理!!無理だよ!!!!」
    「...は?」
     ぶんぶんと首を横に振る。両手を上げて、意地でも僕に触れないという意志を感じる。それがなんだか不満で、このままでは距離を離されそうに感じた僕は、彼の膝の上に座って首に腕を回す。
    「なんで、ルカくんもしたそうだったじゃん」
    「無理、無理なんだって!シュウ!」
     理由も言わずに無理と連呼するルカくんにだんだんと怒りが込み上げてくる。ここまでキスできる雰囲気を作り出して、すぐにでもできるように準備までしているのに、どうしてキスしないの。もうくっつけるだけじゃないか。
    「僕たちもういい大人だよ!?そろそろ覚悟決めてよ!」
    「...っ!ぃ、ちょ、待って...っ、本当に」
    「待てない、...待てないよルカくん...っ」
    「...しゅ、う...?」
     ルカくんが目を丸くして驚いた表情を浮かべて僕を見つめる。震える手で僕の頬に添え、親指で瞼を撫でられた事で気づく。知らぬ間に、ぼたぼたと大粒の涙を僕は流していた。
    「シュウ、...泣かないで。いや、泣かせてるのは俺なんだけど。〜っ、なんて言えばいいのかな...」
    「っ、る、かくん...っ、」
    「あ〜〜〜!ごめん!シュウ!」
     勢いよく抱き締められてルカくんの胸に顔を押しつけられる。ちょっと、苦しいよ、そんな言葉を投げようと思ったけれど、ルカくんの胸から凄いうるさい音が聞こえてくる。
    「聞こえる俺の心臓の音...」
    「ルカくんの中で太鼓でも叩いてんの...?」
    「それぐらいうるさいよね...。こうやってシュウのこと抱き締めてるだけでこんなになんの、俺」
     少しだけ身体を離して、大きな手で僕の頭を優しく撫でる。ルカくんの顔はまだ真っ赤なままで、まだ緊張がとけないのか手が震えている。今度は僕から背中に腕を回して抱きつくと、またあの大きく鳴らす心臓の音を聞いた。
    「シュウとキスしたら俺死んじゃうよ...」
    「...でも、僕はしたいよ」
    「うん...」
     ふぅーっと大きく息を吐くルカくん。覚悟を決めたようで、先程までと打って変わって真剣な表情を浮かべて顔を近づけてくる。お互いの視線が絡み合ったまま額同士がくっついて、自然と瞼を閉じた。すると唇に柔らかい感触、初めてルカくんと僕はキスをした。触れるだけの口付け、いやどっちかっていうと掠めるに近い。こんな年齢にもなって子供みたいなキスだった。瞼を上げると、顔を真っ赤にしたルカくんが両手で顔を塞いで天を仰いでいた。るかくん、名前を呼んで顔から手を離させると両頬に僕の手を添える。未だにクレヨンで塗ったような赤い顔をしてるルカくんは、視線を泳がせている。もう一度名前を呼んでこちらに視線を向かせれば、そのまま勢いに任せて僕は唇を奪った。

     もう待てないって言ったでしょ!
     
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