『なくしもの』⚠︎ATTENTION⚠︎
・当作品は理不尽都市アクションゲーム「トライブナイン」の二次創作SSです。三章までのネタバレを含みます。アニメのネタバレも多分あります。また、資料の不十分さやプレイ・視聴から時間が経っていることから矛盾が生じている可能性がございます。
・自己解釈を含みます。
・カップリングのつもりで書いてはいませんが、カップリングものとして読むこともできるとは思います。
・当作品はフィクションです。
以上が了承できる方のみ先へお進みください。
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人気のない、それなりの広さのスペース。テレビ会館の屋上にあたるその場所に、青山は立っていた。少し冷たい微風を肌に感じながら、ぼんやりと辺りを眺めている。その背後から、近づく影が一つ。
「カズキ。ここにいたのか」
「……Q。どうしたの? 何かあった?」
「いや、そういう訳では無いが。そういうカズキは、ここで何をしていたんだ」
青山はどこか寂しげな目で空を見上げ、答える。
「探し物、かなあ」
「何かなくしたのか」
「うん、そうだね。すごく大切なものだ」
一体何を、とQが問おうとしたところで青山が続ける。その声は少しだけ、震えていた。
「大切なものだったのに、ここでなくしちゃって。気付いて、辿り着いた頃には何も無かった……。もう、後の祭りってやつさ」
「……? そんなことは、ないだろう。なくしたのならどこかにあるはずだ。私も探そう」
「アハハ、……君がそれを言うんだ」
青山が顔を背ける。何か間違えてしまったか、とQは嘆息した。そしてその原因について思考を巡らせる。Qもそこまで鈍感ではない。ずっと共に過ごしていた友の異変の原因に、なんとなく気付いていた。
「これは、推測になってしまうのだが。もしかしてそれは、私が王次郎と呼ばれていることと関係があるのか?」
「……どうしてそう思ったんだい?」
「どうしてかは分からない。だが、カズキは、王次郎という人間の話になった時決まって苦しそうな顔をする」
憂慮の念を見せるQに、青山は曖昧に笑って返す。
「……さあ、どうかな。秘密。聞かないで」
「……そうか」
「秘密」や「聞かないで」は青山がこれ以上追求されたくない時の常套句だ。こういう時、青山は下手に嘘をついたりせず、正直に言う。明確に線を引いているのだ。Qにとって、それが今は、酷くもどかしかった。
「なあカズキ」
「うん? 何、Q」
「死ぬなよ」
思いもよらぬ言葉に、青山は目を瞬かせる。そんな言葉を吐いた本人はといえば、至極真面目な表情だった。青山は小首を傾げる。
「あはは、死なないよ。何で?」
「今のカズキは、見ていて不安だ」
「ん〜……平気だよ。柄にも無く落ち込んではいるかもしれないけど。まあ……気持ちの整理に時間は必要かな。それよりさ、Q」
青山は改めて、Qに向き直る。
「死ぬなっていうなら、君だってもう勝手にいなくなるなよ。いつだって、連れ戻すのは大変なんだからさ」
「……ああ。分かった」
もう、という言葉に引っかかりはした。しかし、Qがそれ以上何かを聞くことはなかった。青山が素直に教えてくれるとは思わなかったし、何より青山との約束を守る方が大事だと思ったから。