花を吐く話[水木視点]
水木視点
――俺、結婚することになった。
そういって目の前の男は薬指に嵌まる銀色の指輪を見せた。それをみた俺はどうしようもなく心臓が痛み、胸元のシャツがしわくちゃになるくらい握りしめたかったがぐっと堪え、口の端を引き攣らせながらなんとか笑みを浮かべておめでとうと言った。
そこではっと目が覚めた。辺りを見回せばまだ暗く真夜中で、先ほどみたものは夢だとわかり安心したのもつかの間――
「っ、う゛……か、ッは……ゲホッ――」
唐突に襲う吐き気に咳き込んでしまい、便所に駆け込む暇もなく掛け布団の上に胃の中身をぶちまけたつもりだったのだが吐瀉物特有の酸っぱい臭いはせず、不思議に思いそちらをみると花のようなものが散っていた。
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