『夜の来訪者』 久しぶりの静かな夜。
ベッドヘッドに寄りかかり、足を投げ出すようにして本読んでいた俺の耳にガチャりと鍵の開く音がした。
かけていた鍵を勝手に開き、ノックもなしに開く扉。
こんな風に部屋に入ってくるやつは一人しかいない。
開いた扉を睨みつけながら、そいつへ向かって文句を言ってやろうとした。
「ノックくらいしろっていつも言って……」
が、開いた先にいたのは文句を言おうと構えていたブラッドリーと、もう一人。
「こんばんは。ネロ」
「オーエン?なんで?」
「ねぇ、今すぐ舌が溶けそうなくらい甘いホットミルク、つくってよ」
「え?……あぁ、ちょっと座って待っててくれ」
よく理解も追いつかぬまま、ホットミルクが飲みたいと請われれば動いてしまう。空腹なら軽く何かつまめるものがあったほうがいいだろうかと考えてしまうのも料理人の性だろう。
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