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    nanayuraha

    @nanayuraha

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    nanayuraha

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    お祝いといえば、贈り物ですよね!と。クリテメだと言い張ってみる。

    贈り物を、君に実に自分らしくない事をしているなと、そう思います。悩む事など、何も無いというのに。

    「ごく普通に見えるシルバーのブレスレットに、考え付く限りの加護をかけた。後はこれを、クリック君に渡すだけ。渡す、だけ…。」

    宿屋、自分に与えられた部屋にて。
    テーブルの上のちょんと置いてあるごく普通のシルバーのブレスレットを前に、私は頭を抱えていました。
    渡すのが一番勇気がいるとは、考えてもいなかった!

    「私のダーリン、記念日にお祝いのプレゼントくれるの。で、昨日は私とダーリンが初めて想いが通じ合った日。」
    「でた、のろけ話。砂糖吐きたくないから、ちょっと待って。今すぐ超絶苦いコーヒー用意するから、それまで待って。」
    「でね、昨日は、初めて私からプレゼントあげてみたの。そうしたらダーリン泣いちゃって…。あんなに泣いちゃうぐらい喜んでくれるなら、もっと早く私からあげれば良かったなって。」

    ことの発端は3日程前、そんな事を話している女性二人とすれ違った事でした。
    記念日を祝ったと幸せそうに笑う女性とその話を死んだ魚の様な目を…ごほん!失礼。ハイハイと少々うんざりした感じで聞いてあげている女性の二人組です。

    「そういえば、私はいつもクリック君に貰ってばっかりですね…。」

    今日は初めて出会った日、初めてデートをした日、ちゃんと最後まで怪我させる事なく守れた日、初めて想いを受け入れて貰えた日…等々。彼は私に会いに来ては、何かと理由をつけて贈り物をくれるのです。
    以前、貰ってばかりで申し訳なくて断ろうとした時はありました。けれども、

    「これは、僕がしたくてやっている事です。だから遠慮なく貰ってくださると嬉しいです、テメノスさん。」

    そう言って笑うから、礼を言って受け取ると本当に嬉しそうに笑うから。ありがとうと礼を言って、彼からの贈り物を今までずっと受け取ってきました。
    泣いちゃうぐらい喜んでくれた、先程の女性の言葉が脳裏を過りました。私から贈り物をした場合でも、彼は喜んでくれるのでしょうか。

    「一目で記念だと分かる物の方が良いのでしょうか、それとも実用性のあるものの方が…?」

    何時もは何も用意出来ず彼に遅れをとっていましたけれども、今回だけはまだ間に合うはず。
    やるからには、ちゃんとした物を贈りたい。私だって、彼に贈り物を。

    「目立たない物であれば、普段も身につけてくれるでしょうか…。」

    そこから行動に移るのは早かったと思います。店でごく普通のシルバーのブレスレットを買い、少しずつ少しずつ自らの手でソレに加護をかけていきました。
    クリック君が怪我をしないように、悪い物を寄せ付けないように、災いから遠ざかるように、後は…。まぁ、色々と祈りを込めました。どれだけ効果があるかは分かりませんが、私が傍に居られない時も彼を護ってくれるようにと。

    「拾ったので、あげます。いや、断られたら意味が…。いっそ匿名で送り付けて、駄目だ怪しすぎて受け取って貰えない。やはりここは素直に理由を、いや、それが出来たならここまで悩んでいません。」

    ああああと、唸り声をあげながら必死に考えを巡らせる。
    今でもこうなってしまっているので、きっと彼を前にしたらもっと可笑しな行動をとってしまうに違いない。折角用意したのだ、ちゃんと受け取って貰いたい。

    「そうだ、ソローネ君に私に変装してもらいましょう!それなら、きっと大丈夫なはずです。」

    我ながら良い案ですと思ったのですが、そういうのは自分で渡しなと脳内のソローネ君に断られてしまいました。
    私の脳内で生み出されたイマジナリー的な存在なのですから、私に反旗を翻さないでください。

    「難しいですね、贈り物をするという事は…。」

    相手を思い、用意した。けれどちゃんと喜んでくれるか分からず、一歩が踏み出せない。
    私も臆病者になったものですと、項垂れるしかなかった。

    「クリック君!!」

    結局クリック君に会うまで何か良い案など何も出せず、私は勢いそのまま行くしか道はなかった。

    「大した物ではありません。本当に大した物ではありませんし、要らないなら捨ててくれても良いですよ。ええ、大した物ではありませんから!!」
    「テメノスさんが、僕に贈り物を…っ!?」

    何時もありがとうとか、これからもよろしくとか、愛してますよとか。こんな時だからこそ言うべき言葉は沢山あったであろうに、それらは一切私の口から出ることなく。
    雰囲気も何もかも台無しにして押し付けるように渡したというのに、クリック君は嬉しそうにソレを受け取ってくれた。

    「一生大事にします、テメノスさん!」

    感極まった彼に力一杯抱き締められて、花畑で手を振る懐かしい友人が見えた気がしますが、きっと気のせいでしょう。
    余程嬉しかったのか、クリック君はその時渡したブレスレットを何時も大事に身に付けている。たまには外しても怒らないというのに、私は。



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