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    nanayuraha

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    nanayuraha

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    守りたくて拐ったクリック君と、全て受け入れる気でいたテメノスさんと。そんな謎な文章。

    「君にしては良く準備したと、褒めてあげましょうかね。どうやら私は、少々君の事を侮っていたらしい。」

    ごめんなさいという言葉と共に、いきなり意識は闇に沈んで。目を覚ませば、見知らぬ部屋にいた。生活に困る事がないようにと、そこには生活に必要な物は全て揃えられていた。
    少し大きめのベッド、テーブルと二つの椅子、本棚…。飽きる事がないようにだろうか、本棚には色んなジャンルの本が揃っていて。

    「窓とこの部屋のドアには、何か仕掛けてありますね。もう既に、5回も弾かれてしまいました…って、危ない真似は止めろ?仕掛けた本人が何を言っているのですか、全く。」

    彼がここに来てしまう前に、この閉ざされた部屋をある程度調べてみた。
    優しい彼の事だからそれほど危ない物はないだろうと踏んではいたのだが、まさかドアと窓に近付くだけで吹き飛ばされるとは思わなかった。しかも近付いたと何かがそう判断する条件が、かなり厳しめだった。どれぐらいかと言うなら、ついうっかりを許さぬ程度にである。
    …最も、そのついうっかりで私がドアや窓に近付く事がないように、部屋の家具の配置には気が配られているようだが。本当に、お優しい事で。

    「それにこのブレスレット、もしかして異国の技術の物ですね?何時も感じられる体の中にある筈の魔力が、全く感じられない…。魔力を遮断するタイプか、それともある筈の物を消失させるタイプなのか。興味があります、これはどういう代物なのですか?ねぇ、クリック君。」

    気が付いたら身に付けさせられていたブレスレットは、呪われてでもいるのか、それとも決まった手順でなければ外す事が出来ないのか。暫くブレスレットを外そうと色々試してみたけれども、それが叶う事はなかった。
    彼が言うには、手順を間違えた時点で腕が吹っ飛ぶ様な代物ではないらしい。そんなの怪我しちゃうじゃないですかと怒る彼に、怒る所はそこなのかと思ったが、特に何も言わない事にした。言ったところで、きっと無意味だろう。
    ペナルティがないなら、暇潰しに色々試そうとは思う。どうせ魔法を封じられている時点で、私は既に詰んでいる状態だ。時間なら、沢山ある。

    「それで?君は何の為に、私をここに閉じ込めたのです?こんな君らしくもない方法を選択してまで、君は一体何を…はい?私の為?何を言っているのですか、君は。」

    彼が言うには、全て私を守る為であるらしい。この頃私が怪我をしている頻度が増えている事を知った彼は、このままではきっと、いつか私が死んでしまうのではないかと思ったのだと。私を守ると誓ったというのに随時傍に居ることが出来ない事を嘆き、そして行動した。
    私を拐うように此処へ連れてきて、閉じ込めた。全ては、私を守る為に。

    「へぇ、君は私を心配してくれていた訳ですか。成る程成る程…。君が言いたい事は分かりました、全く褒められたモノではありませんけどね。」

    褒められたモノではないと告げた途端に、彼は一瞬傷付いた様な顔をした。
    褒めて貰えると思っていたのですかね、心の何処かでは。これの何処に褒められる要素があるのか、説明してもらいたいものです。

    「やはり、いくら考えても理解が出来ない。君の性格や今までの振る舞いを振り返ってみても、君がいきなりこんな事をすると思えないのです。…最も、私が君という人物をちゃんと理解が出来てなかっただけかもしれませんが。」

    今まで彼が、私の意志を完全に無視する様な事は一度もなかった。危ないですよと、何がなんでも私に同行しようとした事はあったかもしれない。けれど、その程度だ。
    今回は他の手段を試すことなく、いきなり私を拐うという行動をとった。それほど心配をかけさせたと思えば、そうかも知れない。けれども…。

    「君は一体誰に、そうしろと唆されたのです?君をそうするように導いたのは、何処の誰ですか?」

    私の問いに、彼はただにっこりと笑うだけ。それに、教える気はないという事ですねと理解する。
    まぁ、返答があるとは最初から思っていなかった。それにそれが明らかになった所で、今の私ではどうする事も出来ない。

    「…おや、何をそんなに不貞腐れているのです?私が落ち着いているのが、そんなに不満ですか?驚いてはいるのですよ、これでも。ただこういう場合、焦った所で何もならないという事を知っているだけです。」

    泣く姿でも想像していたのか、それとも怒り狂う姿でも想像していたのか。
    どちらにせよ、今の私は彼の望みの姿では無かったらしい。そこでしょんぼりされてもね…と思う。

    「普段と違う私が見られると思った?それはそれは、期待に添えず申し訳ございませんねぇ。」

    本当に驚いてはいるのだ、これでも。
    起きた事は予想していた事とは全く違っていたが、全ては間に合っている。私が落ち着いて見えると言うのが真実なら、要因はそこにある。

    「(随分と前から、君が何か悩んでいるのを私は知っていました。それで君が何を望もうとも大丈夫な様に、手筈は整えていたんです。…そう、どんな事を望もうとも。)」

    後は、彼にそれとなく話を振るだけだった。受け入れる準備も、それに必要な物も既に全て整っていると微笑んで。
    けれども、そんな私より先に彼は行動を起こした。全て自分で手筈を整えて、実行してしまった。少々後先考えていない行動ではあるけれども、彼は己が手で望みを叶えてしまった。…私の手を借りる事なく。

    「(少し粗さがあるから、予め用意しておいた物が無駄になる事は無いけども…。それでも君に道を示すのは、君を導くのは、他ならぬ私でありたかった。ねぇ、クリック君。)」

    君の成長を喜ばしく思うと同時に、少し寂しい。
    私がそんな事を思っているなんて考えてもいないのでしょうねと、ちらりと彼を見る。どうしました?と笑う彼、そんな彼に出し抜かれたままというのがとても面白くない。

    「クリック君、少し私とお話でもしませんか?時間はあるのでしょう?」

    もういっそ、恥も何もかも捨てて目の前で泣いて見せようかとも思う。私を守るのは自分であると言う癖に、君は他の人の導きを受け入れるのですねとか言って。
    色んな事を考えながら、彼を手招きする。

    「何時ものように、紅茶でも入れてあげましょうね。…さぁ、いらっしゃい。」

    君を導く存在は私だけで良いと望んだら、君はそれでも私を受け止めてくれるでしょうか。
    白い方の私しか知らない、君は。
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