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    nanayuraha

    @nanayuraha

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    nanayuraha

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    監禁話にはならなかったよ的な、多分クリテメ。何が書きたかったかなんて、私も分からない。

    私は、私に忠実である事にしました。私は、私のやりたいようにやると決めました。誰の指図も受けません、誰も私の邪魔をする事は許しません。阻むなら、排除するまで。
    さぁさぁ、不満があるのなら全力で抗ってごらんなさい。

    「おや、テメノス様。今日はお一人ですか?珍しいですね、何時も騎士様とご一緒におられるのに。」

    必要な物を買い物に行ったよろず屋の亭主に、そう声をかけられた。たまには一人で歩きたい時もあるのですよと、ふふふと笑いながら私は言う。

    「ええ。あの子は、お家でお留守番なのです。」


    『私とワルツを』


    「どう言っても、私を守る事が己が使命と言って聞かない。自分の怪我よりも、私の怪我の心配をする…。色々限界だったのです、私も。」

    回復魔法だって、万能ではありません。治せないものだってある、手遅れになる時だって。そうだというのに、彼は何時からか自分の身を一切省みなくなった。私の身の安全を第一とし、その次は私に害する存在の排除と。ソレが叶うなら、ソレを手早く達成出来るならと。
    怪我だらけの体で、ボタボタと血を流しながら、ご無事ですか?と彼はいつも笑う。君の方が大丈夫ではないでしょうという私の言葉は、彼の耳には決して届く事はない。

    「嫌でもちらつきますよ、あの極寒の地が。雪の中の赤い色が。…もしそれが目的だとしたら、私は彼を徹底的に教育し直さなければいけません。ふざけるな、と。」

    誰がそこまでする事を望んだのでしょうか、誰がいつそんな風にしろと命じたのでしょうか。これ以上は見ていられないと、彼を遠ざけた時もありました。拒絶した事もありました。
    でも彼は、戻ってきてしまった。どんなに遠ざけても、あらゆる手を用いて私の所に戻ってきてしまったのです。ならば代わりをと用意すればソレを排除し、彼の手を振り切って姿を消して見せれば、何処までも追いかけて来て連れ戻された。
    お一人では危ないですよ、と。そう笑う彼の青の瞳は凍えるように冷たく、でもその瞳の奥では何かがゆらりゆらりと燃えているかのように見えた事を今でも覚えている。

    「最初は、反省を促したかったのかもしれません。彼は私が一人で何処かに行く事を、置いていく事をとても嫌がる。…約束を守れないというのなら、罰を。決して私を追う事が出来ないようにしてしまおう、それが始まりでした。」

    反省なさいと、彼を部屋に閉じ込めて。部屋から出れないように何重にも魔法をかけて、彼の傍を離れました。
    何をしたのか、ですか?部屋を何重にも魔法による障壁で取り囲みました。簡単には破らせません、出しません、それでは意味がないので。

    「たった一時間程でしたが、戻ってきたら驚きましたよ。部屋の中は滅茶苦茶で、掃除が大変だとまず思うぐらいでしたから。」

    部屋にあった家具は彼に滅茶苦茶に破壊されてはいたけれど、それなりには効果があった。少しだけ、ほんの少しだけだけど、彼が怪我をしないように気を配り出したのだ。
    使いなれた家具達の犠牲は、決して無駄ではなかった。

    「彼の反省を促す為と始めた事でしたが、ある日私は気付いてしまったのです。彼を閉じ込めてしまえば、その間は彼は完全に世界から切り離された状態…。私だけのモノであると。だって、彼がそこにいる事を知っているのは、この世界で私ただ一人なのですから。」

    その事実は、とても甘美なモノでした。お互いがお互いに、それぞれ切って切れない縁というものがあります。繋がりがあります。でも、一瞬でも。例え一瞬でも、愛しい彼を独占して良いのなら。
    彼は、私がこんな事を考えているなんて知らないでしょう。今もきっと何がいけなかったのかと、己が行動を思い返しているかもしれません。答えなぞ辿り着ける筈がありません。だって、彼に否はないのですから。

    「彼を反省を促す為ではなく、私が私の自己満足の為にやる…。その時は、一つだけ決めた事があります。上手くやればその部屋をぬけだせる方法を、わざと残しておくのです。それに気付くか気付かないかは、子羊くん次第ですがね。ふふふ。」

    例えば、一部分だけ障壁が脆くなっている。例えば、決まった手順を踏めば部屋のドアが一回だけ開けられる。例えば、あえて開いている窓の鍵を締め直すと何故か障壁が全部消失する。例えば…―。
    ダミーも沢山ありますが、きちんと逃げ道を用意してあげるのです。彼に否はないのですから、それぐらいしてあげないと不公平ですものね。

    「この様な事を繰り返していくうちに、子羊くんがそれに気付くのか気付かないのかと、ワクワクしながらその時を待っている自分が居ることに気付きました。突破されるという事は私の負けだというのに、とても嬉しいのです。何故でしょうね、不思議でしょうがありません。」

    気付かなければ、私の欲求が満たされるだけ。突破されたら、次こそはと思考を巡らせるだけ。
    楽しい楽しい、私と子羊くんとの知恵比べ。この頃更なる知恵を身に付けてきた子羊くんは強敵だけれども、それがとても嬉しいし楽しい。可愛い可愛い私の子羊、早く私を完膚なきまで負かせておくれ。…なんてね。

    「遅かったですね、テメノスさん。買い物に手間取っておられたのですか?」
    「おやおや、今日は早かったのですね。」

    町の入り口に、閉じ込めた筈のクリック君がいた。私に気付くと、彼はにっこりと笑った。今日のは少し自信があったのに、と思う。
    ここに彼がいるということは、ちゃんとした手順に仕掛けてあった罠も見抜かれてしまったという事になる。ちゃんとした手順を踏んでいたら、彼はここに立っていない筈だから。もっともっと時間がかかるようにしてあったのだから、わざと。

    「ちゃんとした手順を踏まずに抜け出したのなら、今回は不合格ですね。今日の同行は許可出来ません、出直していらっしゃい。」
    「何を仰られるのやら。ちゃんとした手順すらも不合格になるようにしている時点で、今回は無効ですよ無効!なので、僕は今日も務めを果たさせてもらいます。…お守りします、テメノスさん。」
    「おやおや、生意気な子羊くんだこと。」

    次はもっと難解なものを用意しましょうと言えば、受けてたちますと。即座に返事をする子羊くんに、本当にこの子はと思う。
    可愛い可愛い、私の子羊。君は全て分かってて、私と一緒に踊ってくれるのですね。

    「満足させなければ、テメノスさんは僕だけを見るじゃないですか。…満足なんてさせませんよ、絶対に。」
    「おやおや、困った子羊くんだ。…期待ぐらいはしてあげますよ、期待はね。」

    ならば狂ったように踊りましょうか、何時までも二人で。
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