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    nanayuraha

    @nanayuraha

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    nanayuraha

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    頂いたお題、クリテメでピクニックデート。

    美味しい料理を持って、今度は二人で何処へ行きましょうか?


    『突然ですが、ピクニックに行きませんか?』


    「クリック君、突然ですがピクニックに行きましょう。」
    「ピクニック、ですか?」
    「ええ、ピクニックです。次の休み、珍しく私と君の休みが重なる日です。用事があるなら諦めますが、ないのなら一緒にどうですか?」

    何時もテメノスさんにはからかわれているから、きっと今回もその言葉には何か裏や別の意味があるのだと思った。
    ピクニックと称して実際は異端者達のアジトへの下見とか、町のすぐ傍に巣を作った魔物の討伐とか、新たに発見された遺跡の調査とか、もしかしたらピクニックに向かう前から既に…考えるのはもう止めておこうと思う。どれも有り得そうで、何だか悲しくなってきてしまった。
    ちゃんと要件を最初に話してくれていればという苦情と、最初から真実を伝えられない程僕は未だに信頼が得られていないのかという悲しみと、そんなに僕をからかって楽しいのですかという怒りで、僕は毎回膝から崩れ落ちそうになる。
    …身構えすぎ?いや、何回もそんな事があれば身構えたくもなるのだ。そしてどんなに身構えていても、予測をしていても、その上を軽々と超えていくのがこの人テメノス・ミストラルだ。油断してはいけない。

    「…念の為にお伺いしますが、ピクニックって何処に行かれる予定なのですか?新たに遺跡でも発見されたのですか?」
    「遺跡?今回は、遺跡には行きませんよ。…とりあえず、東フレイムチャーチ山道をゆっくり歩きます。その後国境の大滝まで行ってみましょうかね。そこで見える虹、とても綺麗なんだそうですよ。」
    「(国境の大滝って、神官ギルトがある所じゃなかった?まさかギルトが異端…は考え過ぎか。だとしたら、今回は魔物討伐の方だろうか。何にせよ、何が起きても対処出来るように準備を怠らないようにしないと。)」
    「そこから先は、まだ決めて無いのですよね。当日の天候やら私達の疲労具合で決めましょうか…って、聞いてますか?聞いてませんね、酷いですよクリック君!」

    そんなに行きたくないのなら別に来なくて結構ですとても機嫌を損ねてしまったテメノスさんを説得するのに大変苦労はしたけども、何とかピクニックに着いていくことを許可して貰った。そして、当日。
    HP回復のブドウに、SP回復のプラム、更に念の為に精霊石を持って。剣も鎧も異常が無いことを確認して、臨んだ通称ピクニック。
    完全武装の僕に対して、バスケットを持って現れたテメノスさんは、何処か楽しそうな雰囲気を纏っていた。

    「テメノスさんがお持ちのバスケットから、とても美味しそうな匂いがします…。」
    「ふふ、だって食べ物を持って自然豊かな場所に行くのがピクニックなのでしょう?頑張って用意しましたから、存分にお腹を空かせておいてください。そうすればきっと、多少は美味しいと思える筈ですから。」
    「テメノスさんが作られた料理なら、例え炭でも僕はきっと美味しいと思…痛い!」

    世間話をしながらゆっくりと歩く、東フレイムチャーチ山道。そのまま国境の大滝に向かい、二人で噂の虹を眺めたりして。
    その見事な虹を眺めながら、テメノスさんのお手製のサンドイッチを一緒に食べた。トマトにレタスにと、挟んである具が野菜中心で少し物足りなかったけども、とても美味しかった。何故最初空腹であれば多少は美味しいと思えるなんてテメノスさんが言っていたのか、僕には分からない。こんなに美味しいのに。
    折角近くに来たのだからと、神官ギルトに挨拶に寄って、再びの東フレイムチャーチ山道。何事もなくフレイムチャーチの街まで戻ってきて、僕は首を傾げていた。本当に何事も起きる事なく戻ってきてしまったぞ、と。

    「今日、本当にただのピクニックだったのですか!?排除すべき異端者は、討伐すべき魔物は何処ですか!?」
    「だから最初から私は言ったでしょう、ピクニックに行きませんか?と。」
    「だって、今までの経験上テメノスさんの言葉がその言葉通りだった事なんて、殆どなかったじゃないですかぁ!」

    それならそうと言ってくださいと悲しむ僕に、テメノスさんはまぁそんな事だと思ってましたと言う。

    「ただのピクニックだと言っているのに、君は何処かピリピリしていて。やっぱり私といても楽しくはないのだろうかと少々気落ちしてましたが、そうか、これも私の普段の行動が招いた事ですね。反省しなくてはいけません。」
    「え、いや、僕が勝手に勘違いをしていただけで、」
    「何時も忙しそうにしている君に、少しでも息抜きになればと思っての事でしたが、逆に長時間緊張を強いる様な事をさせてしまった…。やはり馴れない事をするべきではありませんでした、ごめんなさいねクリック君。」

    無理に付き合わせてすみませんでしたと、何処か寂し気に笑うテメノスさん。そのまま去っていこうとした彼の手を掴んだのは、ほぼ反射に近かった。
    勝手に深読みして、テメノスさんの気遣いを無駄にしてしまったのは僕だ。でもここでそう伝えた所で、謝った所で、きっとこの人に何も届かない。なら、

    「次は、僕がテメノスさんをご案内します。貴方に見て欲しい所、一緒に行きたい所、とても沢山あるのです!だから、」

    翡翠の瞳がビックリしたのか、大きく見開かれる。その瞳を真っ直ぐ見つめて、言う。
    息を吸って、はっきりと、どうか断らないで欲しいと願いながら。

    「テメノスさん、僕とピクニックに行きませんか!?」
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