胸ならいつでも「あーーつかれた!疲れたよっと」
そう言って大袈裟にベッドに倒れ込む。
「こんな疲れた日には癒しがほしいよな。例えばマシュマロのように柔らかい肌ででっかい胸とか揉ませてくれねえかなぁだれか」
ベッドの上で願望をだらだらと喋っているポップ。
「胸ならそこにあるだろ」
同じ部屋にいるヒュンケルに指を差された先はポップの胸。
「なにが悲しくて自分の柔らかくもねえ胸揉むんだよ!」
「いや、そんなことはない。十分柔らかくなっているはずだ。掴み心地も手に吸い付くようになるように毎夜、懇切丁寧に揉…っ!?」
バンっという衝撃でそれ以上の言葉を止められたヒュンケルの顔には、まくらが投げつけられていた。
「なんか執拗に揉んでくるなっておもったら!」
「フッ…」
「ドヤ顔してんじゃねえっ」
まくらが滑り落ちて見えた顔は勝ち誇ったような面で、そんなことを考えてあんな……と昨晩の事を思い出しそうになってポップは頭を振って記憶を散らす。
「第一、自分の揉んだって嬉しくもねえよ」
「……なるほど」
「もっと弾力のあるでかいやつを所望してんの!」
「ならばオレの胸があるが?」
「あるが?て何言って…」
そこまで言いかけたとき、腕を掴まれたポップはその掌に感じた柔らかさに思わず指に力が入った。
いわゆる鷲掴み状態だ。
柔らかい。
思ってる以上に柔らかかった。自分の胸などこれに比べれば貧相だろう。それなのに喜んで揉むあいつはどうかして…いや、そんなことは置いといて。
「うそだろ…」
小さく呟いてしばらくその感触に指を這わせる。ときおり力を入れたりを繰り返しながら混乱する頭でヒュンケルをみると、少し頬が赤い。
「ポップ…そんなに揉まれるとさすがに…」
「っあーーッ!」
どうして胸を揉まれて赤らめる成人男性を見なければならないのか。しかもその原因が己という地獄。
思わず叫んで手を離すポップ。
「あぶねえ…なんかだめな扉を開く気がする…」
「オレにとってはおまえの胸の方が至高だと思うぞ」
「胸のよさを競ってショック受けてるんじゃねえからな?!」
なんにしろこのままではこいつの胸で手を打つ羽目になる…
「……ポップ。自分の胸は嫌だと言うのならば……」
そうじゃないんだおれが欲しいのは───
「オレの胸なら、いつでと貸してやろう」
違うって言ってんだろ!
「よろしくお願いします!!」
結局雄っぱいの柔らかさに勝てなかったのだった。