優鬼にあっただけの話傭兵―ナワーブ・サベダーがこの荘園に来てから2週間と少しが経ったある日の事であった。
昼食を済ませたナワーブの部屋に届けられた一通の手紙。それは別の荘園から送られてきた試合の招待状だった。
頬の膨れた犬のシーリングを剥がし、手紙の中に書かれた了承の文字に指を滑らせる。するとぐにゃりと視界が歪んだかと思えば酷く殺風景な自室からただ広いだけの、ぽつんと置かれたブランコがもの悲しい居館へと変わっていた。
ナワーブは天井から伸びる蜘蛛の巣に気を取られることもなく、ゆったりとした足取りで扉の傍で縮こまっている招待主の元へと向かった。
彼は居心地悪そうに、縫い付けられた口元をまごつかせながらも目線はしっかりとナワーブから外している。
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