護り手目覚めているような、夢の中にいるような。意識が不鮮明に揺蕩う不可思議な感覚の中にある。暗黒の血が制御を無くした時も、丁度同じような気分だった。はて、自分は眠っていたのだったか。記憶を探ろうとしてみても、鈍い頭痛が思考の邪魔をしてままならない。
「ロック?」
真横で衣擦れの音がした。名を呼ばれた気がして目線を動かすと視界がぐらぐらと揺れ動き、一気に気分が悪くなる。う、と低く呻いたのは間違いなく自分の声なのだろうが、酷く掠れたそれは誰か他人のもののようだ。
「……ロック、俺がわかる?」
唐突な吐き気を眼を瞑ってやりすごしていると、優しく頬を叩かれた。うっすら瞼を持ち上げると、坊主頭と視線がかち合う。ボックスだ。いつもの勝気な瞳はどこへやら、薄緑の鋭い視線は不安と恐れをないまぜにした見たことのない混乱を浮かべている。
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