見つけた星の名前は俺はアイドルが大嫌いだった。理由は色々あるが特に大きな原因は父親のこと。自己の人格が成り立つ前からの多大な期待は、幼い俺の心を壊し憧れから忌むべき対象へと変化を遂げた。別に他のアイドルが悪いってわけじゃない。ただ、俺がそれを苦手としているだけで。
しかしいつのことだったか、普段ならすぐに変える音楽番組をなんとなく聞き流していた時だっただろうか。歌番組特有の色々なジャンルの歌い手たち声を聞き流していると、するりと耳に残って忘れたくなくなるようなキラキラとした声がした。
「明星スバルです!みんな、今日はぜ〜たい特別な日にするから画面の向こうのみんなも、君たちも!俺と楽しもうね!」
どんな奴か気になり顔をあげる。すると声だけではなく、瞳もまるで夏の澄んだ青を閉じ込めたかのようにキラキラと輝く、アイドルがそこにいた。普段の俺ならばそこでリモコンを手に取りテレビの電源を落としていただろう。でも、なぜだか見逃しては行けないような気がして。気がつくと手に持っていた本に栞を挟んで手元におき、彼のパフォーマンスをじっくりと眺めていた。
彼は笑う。誰かに向けて。彼はわ歌う。みんなに届くように。なによりも、ステージに立つ彼はどんな誰よりも楽しそうで。自分が悩んで諦めて忌み嫌った道の先に待っているとは思えないような太陽のように眩しくて、星のように優しく輝く笑顔をしていた。
「明星スバル、…」
先ほど聞いた名前を忘れないように反芻する。名は体を表すとはまさにこのことだな。本当に、どこまでも眩しい。彼の歌声は心に溶けて、俺の一部となったように感じた。大嫌いだったはずなのに、一瞬の彼のパフォーマンスでそれら全てが塗り替えられたような気がした。