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    サンプルA5/200~300円予定(仮)
    東ソ06

    天使の奏斗は人間を救うことや会議に飽き飽きしていた。
    ある日天界を抜け出し地上におりると黒い毛玉とぶつかる。話を聞けば仕事をしない悪魔の主人のために、悪いことをしようとしている悪魔だった。
    おもしろそうな話に奏斗はその「悪いこと」を手伝いたいと申し出る。
    白いもこもこの天使と黒い悪魔とのドタコメディ!
    さあ、一緒悪いこと!

    #お品書き
    #にじそうさく10
    #おしながき

    悪いこと、って何?天使界は忙しい。訳じゃない。
    僕は風楽奏斗。どこから見ても天使だ。羽もあるし、輪っかもある。
    ないのはそうね、やる気だけ。
    僕がポケットから奇跡を出すのなんて容易いし、仔猫を拾って泣く少年に「神の御加護を」なんて言ったりしてた。まだスペシャルキュートなエンジェル時代。
    でも大人になって与えられる仕事も増えて、惰性で人間を見守って雲の角度やら奇跡の話をするのも正直飽き飽きしているのだ。
    「あ。いたいた。奏斗〜、さっき先輩に探されてたよ。行った方いいかも」
    同じ天使であり僕が一番可愛がっているセラフがこっそり教えてくれる。
    頭が良くて優しくてなんでも出来て、僕が信頼する友達。真面目に働かずに遊んだり出来るのはセラフのおかげでもある。
    「新人天使たちへのスピーチだっけ?それ絶対僕がやることじゃないでしょ。めんどくさいから適当に言っといてもらっていい?」
    「まあ奏斗にはさ、みんなと違う特別なチカラがあるからじゃん」
    セラフは自分の片目を人差し指でとんとんと指をさす。
    奏斗は肩を竦めてため息を吐いた。
    自分の片目は黒い眼帯で覆い隠している。これについて語るとあーだこーだ長ったるい話があるんだけどそれは一旦置いておく。この隠している瞳がどうしてなのかは知っている者はほとんど居ない。
    真実が分からないと勝手に噂が広まっていく。あの目で悪い人間だけでなく天使すらも焼き殺すとか、この世すべてをひと睨みするだけで滅ぼすだとか。
    「噂って面白いよね。否定も肯定もしなきゃ勝手にそれが真実になっちゃうんだもんな」
    奏斗はトンと靴の先で大理石の床を蹴る。羽を動かし宙へ浮かぶとセラフが奏斗を見上げた。
    「まあ奏斗が居ないなら居ないで先輩がやると思うけどね。その様子だとまた人間界いくの?」
    「そー。おもしろいこと探しに行ってきまーす」
    セラフに手を振ると離れて人間界に続くゲートを潜る。雲の隙間から光が階段のように差し込み、それにそってはばたいていく。
    天界にいるより人間界にいる方がずっと面白い。
    やらなきゃいけないことは、それなりにちゃんとやっている。やる気はそんなに無いけれど、怒られる理由なんて本当はないのだ。
    机に齧り付いて天界の今後について話し合ったり、どうやって人を救うのかとか、人の幸せとはなんなのかとか。そういうのばっかはつまらない。
    だから人間界に遊びに行くのは立派な息抜きだ。
    人間というのは面白くて見ていて飽きない。
    そこで悩んじゃうんだ〜ってところで一生悩んでたり、それ絶対だめじゃない?ってことをなりふり構わずやっちゃってたり。
    幸せに導いてやる、ってのが天使の役目だから悩んでる人間を見つけたら正しい道を教えてあげるってのが僕たち天使のやるべきこと。そうするべきなんだけど。
    僕は自主性を尊重したいから決定的な道を示したりなんかしない。本人がどうしたいのか。
    僕がその人間の選択を増やしたり、導いて運命を決めるのってなんかちょっと違うと思うんだよね。



    「っわ!」
    ふわふわと空を飛んでいれば何かが僕にぶつかった。
    振り返ると何もいない。下を見れば黒い毛玉が地上へと落下していくところだった。
    「え、っちょっ」
    慌ててそのかたまりを追いかけると片手で思い切り掴む。
    手のひらサイズのその毛玉は頭に紫色の二つの角、そして手には銀色の槍を持っていた。
    「あれま」
    ぐるぐると目を回すそれは明らかに悪魔っぽい。天使学校で学んだことがある。このサイズは悪魔の赤ちゃんだろうか。天使と悪魔は人間には見えることは出来ない。けれど僕たちはお互いに目視することはできる。
    天使は人間を幸せに導くとすれば、悪魔はその逆で人間を唆す。不幸にすることが目的ではなく、ただ惑わせて誘惑し人の欲望のままに行動させる。
    それが人によっては非道な行いをしたり、災いをもたらせたり人生を破綻させたりするのだ。
    悪魔とは交流なんてすることは無いから全て教科書や先生の話。交流することはそもそも禁じられているのだ。
    天使の善意と悪魔の悪意って混ざりあったらどっちが勝つんだろう、なんて学校ではそんなことを考えたりしたけれど。
    手のひらに収まるそれが本当に悪魔なら、聞きたいことはたくさんある。
    一体どんなことをして人間を惑わせて悪の道へと誘うのか。悪魔の世界は天使界とどんな風に違うのか。今までした悪事ってどんなこと?
    気を失ったのかその黒い毛玉は目を回したまま。
    つんつんとほっぺたをつつく。むずがるように眉を寄せたあとゆっくりと瞼が開いた。
    まるで夜の終わりのような紫から黄色のグラデーションの瞳と視線が合う。
    毛玉は僕をじっと見てから驚いたように目を見開き、だらだらと汗をかき始めた。慌てて目を閉じて死んだふりをしようとしている。なにをやってるんだ。
    天使と悪魔が関わることはタブーとされてるし、まあ当然の反応かも知れない。
    急にパタパタと背中の羽が動いたかと思うとその黒い毛玉は僕の手のひらから飛び出した。
    「おいこら逃げんな!」
    両手で挟み込みそれをもう一度捕まえる。毛玉はひんひんと鳴き声のようなものを洩らしている。
    何かを訴えているみたいだが、悪魔の言葉なのか喋っている言葉の意味が分からない。

    奏斗はうむ、と首を傾げるといい事を思いついたとばかりに指を鳴らす。
    ぽん!と白い毛玉が奏斗の頭上に現れた。
    奏斗のオトモであるチビ天使。この黒い毛玉とサイズは変わらず、違うのは毛並みは真っ白で頭には天使と同じ輪があり手には弓矢を持っている。小さな羽をぱたぱたと鳴らして奏斗の肩へと乗った。
    「ねえ白いの、こいつの言うことわかる?」
    僕に白いのと呼ばれた白い毛玉は黒い毛玉に視線をやる。じっとそれを見つめると僕の肩を滑り降りて手首に立ってそれに話しかけた。
    「ピィ……」
    「パ……」
    ふん。ふんふん。
    二匹が会話をしている。僕がわかるのはこの白いのの言葉だけだけど、どうやらこいつら界隈の言葉があるみたいだ。
    僕のオトモは僕以上に仕事をしない。だいたいチョコとかドーナツとか甘ったるいものを食べてるか、ひなたぼっこしてぽかぽかお昼寝をしてるか。食い意地が張っていて、人間界にいくと食べ物のお土産が無いと拗ねてそれはもうめんどくさい。セラフのとこの天使はお仕事も手伝ってしっかりてるっていうのに。
    一応この白い毛玉が持つ弓矢はキューピットしか持つことが出来ない。こいつが人間に金の矢を打てばその人が恋に狂ったり、反対に鉛の矢を打てば恋心を失ったりなんかする。愛の使いという役目を持ってるけど基本的には人の恋愛には無関心。
    僕が悪ふざけするって時だけ一緒にノリノリになってくるようなやつ。誰に似たんだか。

    どうやら会話が終わったのか白いのが僕に話しかけてくる。
    「ふんふん。主人が悪魔の仕事しないから?代わりに仕事をしようって降りてきた?それで僕とぶつかったの?」
    「パペ」
    白いのは鳴いて頷いた。
    黒い毛玉は僕に怯えて手のひらで震えている。別にイジメたり消したりとかしないんだけどな。
    悪魔の仕事と言っているし、本当にこいつの主人は悪魔なのだろう。どれだけ怠惰な人間なんだろうか。いや悪魔か。
    「そりゃ天使として許せねーな!」
    奏斗はそう言うと白いのへ視線をやった。
    やっぱり天使として困ってる人を見捨てることなんてできないし、ここでぶつかったのも何かの縁だし、それよりなんかおもしろそうだし。
    同じ気持ちなのか白い毛玉もニヤニヤと頷いている。
    これは僕たちが手伝って、その悪魔の仕事とやらをしてやろうじゃないか。
    黒いのは予想外の展開におろおろとしている。
    一人よりも二人、二人よりも三人だろう。(この場合一人と二匹だけど)
    「天使に出来ないことなんてないんだから、任せなさいっ!」と僕が言うと黒い毛玉は「ぱぺ、」と不安そうに鳴いた。
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    おもしろそうな話に奏斗はその「悪いこと」を手伝いたいと申し出る。
    白いもこもこの天使と黒い悪魔とのドタコメディ!
    さあ、一緒悪いこと!
    悪いこと、って何?天使界は忙しい。訳じゃない。
    僕は風楽奏斗。どこから見ても天使だ。羽もあるし、輪っかもある。
    ないのはそうね、やる気だけ。
    僕がポケットから奇跡を出すのなんて容易いし、仔猫を拾って泣く少年に「神の御加護を」なんて言ったりしてた。まだスペシャルキュートなエンジェル時代。
    でも大人になって与えられる仕事も増えて、惰性で人間を見守って雲の角度やら奇跡の話をするのも正直飽き飽きしているのだ。
    「あ。いたいた。奏斗〜、さっき先輩に探されてたよ。行った方いいかも」
    同じ天使であり僕が一番可愛がっているセラフがこっそり教えてくれる。
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    おもしろそうな話に奏斗はその「悪いこと」を手伝いたいと申し出る。
    白いもこもこの天使と黒い悪魔とのドタコメディ!
    さあ、一緒悪いこと!
    悪いこと、って何?天使界は忙しい。訳じゃない。
    僕は風楽奏斗。どこから見ても天使だ。羽もあるし、輪っかもある。
    ないのはそうね、やる気だけ。
    僕がポケットから奇跡を出すのなんて容易いし、仔猫を拾って泣く少年に「神の御加護を」なんて言ったりしてた。まだスペシャルキュートなエンジェル時代。
    でも大人になって与えられる仕事も増えて、惰性で人間を見守って雲の角度やら奇跡の話をするのも正直飽き飽きしているのだ。
    「あ。いたいた。奏斗〜、さっき先輩に探されてたよ。行った方いいかも」
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