愛に溺れよ 夜毎暁人の耳元で愛を囁く。目を合わせ、手を握り、どこにも逃げられないように、KK以外目に入らないようにして。好きだ、オマエが大切だ、愛してる、絶対離さない――と。
KKとて若い頃ならいざ知らず、この歳になってそんなことをするとは思っていなかった。だが魂を繋げ、重なり合い、他人に見せられはしない弱みまで見せ合った最大の理解者にして片割れを、つまらないプライドで失うことだけは絶対に嫌だった。
暁人は穏やかそうに見えて頑固で意地っ張りな、そして諦めることが異常にうまい子供だ。二十歳そこそこで肉親全てをなくした青年は、孤独に怯えているくせに人から距離をとり、愛に飢えてるくせに自分がそれを手に入れられると思っていないようだった。もしかしたら手に入れてはいけないと思っていたのかもしれない。
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