戯け話「なあ見てみろ、新薬ができたんだ」
私は自慢げに薬品の入ったフラスコを、目の前の助手に見せつけた。
「わあ、やっとできたんだ。やっぱブラッドは凄いね」
「そうだろう、久々に成功したんだ」
「へえ、僕には違いがよく分からないけど…」
全く、新薬のロマンが分からないなんて、研究者の助手としてまだまだだ。
「あとは検証だけなんだが…」
ここでふと、私は軽い冗談を助手に投げ込んでみることにした。
「お前、実験台になってみるか?」
❋
「じ、実験台…?その薬の?」
「ああ、これ以外に何がある?」
私にしては少々大人気ない戯言かもしれないな。さあ、君はどんな解を示す?
「いいよ」
?
今こいつなんて言った?
新薬って言ったし、安全の保証もない。数パーセントのズレも命取りだ。承諾する可能性なんてほぼ無に等しいから、断られること前提での冗談だったのに。
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