「ゆい」
「ん?」
少しの沈黙のあと拓海が意を決して彼女の名前を口にすると、こてんと首を傾げるゆいがとても可愛い。そんなゆいを見て、拓海の胸の内にやっぱりしたい、という気持ちが湧き上がる。拒否されたら立ち直れる自信ないな、なんて思いながらも拓海はぐいっとゆいとの距離を少し詰めた。
「ゆいと、キスしたい」
「・・・へっ」
ゆいの目を見つめて拓海がそう言うと、ゆいは気の抜けた声を上げると身体を固まらせてじわじわと顔を耳まで真っ赤にさせていく。そして慌てるようにそわそわと目線を彷徨わせると、こくりと小さく頷いた。
今確かにゆいが頷いたのを見て、わ、いいのか、ほんとにいいのか、と拓海の気持ちは高揚していく。
ドクドク、と頭に響く激しい心臓の音。それはきっと目の前の彼女も同じで、お互いまるでリンゴのように真っ赤な顔をして見つめ合う。
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