5:Kissing 一日の鍛錬が終わり、食事も歯磨きも終えてあとは布団に潜って眠るだけ。
今日の出来事を振り返ってみると、思い出すのはとても過酷だった波紋の鍛錬と、命懸けでした鍛錬と、毎日続けている基礎を固めるための鍛錬……そこまで考えて、あれ? 鍛錬しかしてなくない? と気付く。
鍛錬以外の記憶といえば三度の食事と風呂ぐらいのもので、おれは一日に占める娯楽の割合が圧倒的に少ないことを改めて実感したわけである。
控えめに言ってこれはまずい。精神衛生的にも非常に良くない。そして同時にこのまま何もしないで一日を終えることはできないという使命感に駆られた。
自室の壁に掛かる時計に目をやると、おれと同じぐらい勤勉な二本の針はおよそ二十二時過ぎを指し示している。今日が終わるまであと二時間もないが、見方を変えればまだ二時間程度はあるとも言える。
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