独白 町で使われなくなった小さな教会がある。そこは老朽化していて、人が訪れることはない。誰もいない教会には猫が棲みついており、私はその猫に餌をやるのが日課だった。いつものように私は教会へ行き、扉を開ける。
誰もいない筈の教会に、誰かの後ろ姿があった。その人は長椅子に座り、私がいつも会っている猫を膝に乗せていた。
猫が私に気付くと、にゃあと一鳴きして私の足元へ擦り寄る。目の前の人は、立ち上がるとこちらへと振り向いた。目が合った瞬間に私は息を飲んだ。まるで聖火を閉じ込めたかのような青い瞳と、白銀のような髪。人生でこのような美しい人に出会うのは二度とないだろうと言っても過言ではないくらいだ。
何か話をしようと思ったが、浮かぶ言葉は何も無く、私と彼は無言のまま、その場に立ち尽くした。
758