朝日の中でもう一度夢を見る 辺獄での戦いでフィニスの門は閉じ、選ばれし者とその仲間達は無事に現世に帰還した。それぞれの国が和平を結んだオルステラ大陸に、平穏が戻りつつある。灯火の守り手達は己の帰るべき場所に戻り、選ばれし者もその役目を終えた。
ロンド・レイヴァースもその一人であったが、彼は聖火協会から身を引き、この雪国を離れ、リバーランド地方の小さな村へと身を置いた。かつての師であったサザントスと共に。
***
この村へ来てから何度目の朝だろうか。サザントスは起き上がって、ベッドに腰掛けた。ロンドの姿はない。先に起きて、畑仕事をしているのだろう。
「………………」
サザントスは手のひらを見つめる。
黒呪炎に蝕まれた身体に聖火を操る力はもう無い。弱々しい炎が現れてはすぐに消えていく。辺獄でロンドが炎をサザントスに分け与えていなければ、ここにはいなかったかもしれない。正直に言えば、ここにいない方が良かったと思っている。自分にとっても彼にとっても。彼には彼の歩むべき道があるのだから、自分などに縛られないでいてほしかった。
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