シェアハピ!!『クラスメイトに推しがいる』
なんだか最近ちょっと見かけるラノベタイトルのように見えるが、事実なのだからしょうがない。
彼女の好きポイントを挙げだしたらキリがないくらいには推している。だが、推しの生活に入り込むつもりは無い。学校という閉鎖空間の中でひっそりと見守っているくらいが丁度いいのだ。
そう思っていた「クイーンたそを見守り隊」隊長の私だったが、今回とんでもない出来事に遭遇した。
あれは11月11日の放課後の話だ。
✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩
ホームルーム終了と同時に幼馴染みの2人がクイーンの席へ集まる。厳密に言えば、食べかけになっていたポ○キーを求めてジョーカーがねだり、それを呆れながらたしなめるスペードという図である。
まだ食べるの?なんて言いつつもちゃんと差し出してあげるあたり、さすが私の推し。天使か。あ、なんだか後光が見える。
「あ!それ!!」
突然こちらを指差すクイーン。そして、ずんずんと向かってくるではないか。
待て待て待て。私はあくまでも推しを影から見守っていたいタイプなんだ。いや、お近づきになれるなら、それ以上に嬉しいことはないが、でもおこがましいというかなんと言うかうにゃうにゃもごもご……ひぇ!!!お美しい顔がすぐそこまで!!!
「これ!私も買おうとしてたいちご味の!!」
思わず仰け反ってしまった私に目もくれず、クイーンは私の鞄を覗き込む。どうやらお目当ては私の鞄から顔を出してたポ○キーだったらしい。
そんなキラキラした瞳をどうして拒否できよう。友達と分けるつもりだったが、肝心の友達は休みだし、推しの頼みだし、従うしかないだろう。
食べるか聞いてみれば、元気の良い返事が返ってくる。
「いいの!?ありがとう!!」
可愛い。よかった、何気なくいちご味を手に取った過去の私に感謝だ。
「じゃあ、はいこれ」
頭の中のイマジナリー推しに拝み倒していると、いつの間に私の前の席に座った推しからスっと何かが差し出される。
「私のもシェアしましょ!」
目の前にはポ○キー。推しの手の中にある味と同じ。つまり?推しが?私に?ポ○キーを?くれると?夢か??????????随分時間の流れがちゃんとしてるけど、夢か?????そうかそうか、これが明晰夢ってやつだな。なるほど。推しを愛するが故に遂にここまでできるようになってしまったか。影から見守りたいって言っておきながら、本当はこうなる事を望んでいたのか。まぁ、推しが私を見てくれているというこの感覚は最高だ。深層ではこれを欲していたというのもわからなくはない。
「ありがとう!」
お礼の言葉で目の前の光景を改める。どうやら思考とは裏腹に身体はきちんと行動していたらしい。外箱と中袋を開け、一本取り出していた。
クイーンは私の手にある一本をじっと見つめた後、くすりと笑った。
「頂戴いたします」
普段の彼女より少しだけ挑戦的な笑みと共にぱくりと食べた。私の手から。
私が声にならない悲鳴を上げたのは言うまでも無い。
✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩
おまけの後日談
「ん〜、これが誕生日プレゼントってのも味気無いわよね。ねぇ、この後時間ある?ちゃんとしたの贈ってあげる!」
なぜ私の誕生日を知っている。
「だって移動教室の時に他のクラスの子から『誕生日おめでとう』って言われてたじゃない」
嘘だろ。見守る側のはずなのに、逆に見られていたとは。
「だから、私からも。誕生日おめでとう。これを機にって改めて言うのもおかしいかもしれないけど、クラスメイトなんだし、これからも仲良くしてくれる?」
推 し か ら の お 友 達 申 請
今日もしや命日か?