HELLHOUSE 61〜6561*宮井先生の命懸けテスト定期的に引っ張り出されるホワイトボードの前で塩見とお喋りしている宮井。
「ああ、君たち。ちょうどよかった」
前回の殺人未遂のあまりのビビりようから、ザイオンの内臓に気を取られている最中でも、また宮井は彼らを疑っていた。学習机風に並べられたテーブルに座らされる田中兄弟。
兄弟が身を守るつもりでやってきた、犯罪行為への加担。豚箱より酷い凶悪犯詰め合わせの最中、生き抜くにはしょうがないが、今までさりげなく犯してきた罪を数えよ……
まともな人生を送っていれば問われないはずの無理難題的「おさらい」。無論塩見の助け舟などない。君たちは分かってると思うけど、分かってなかったら……もう……ネ
62*寝付けない夜と声なきツッコミカップ麺を食べようと部屋に出てきた†琉魔†だが、オニクスと出くわす。大変食べづらい。
(オニクス、ペットの世話もしてるんだよな。いつ寝てんだろ……それであんな隈ができてるのか)
冷静なツッコミだが、†琉魔†は終始ゲス顔である。
そんな中、ぐったりとリビングに駆け込んできた1番。警察の追手から逃れてきたようだ。血まみれで倒れそうな1番を支えるオニクス。
「ほら、ちゃんとまかないと。君が一番危ないんだから」
(それは励ましと言えるのだろうか)
「あ、ちょっと。琉魔も匿うの手伝って」
出かけて行ったオニクスから1番の身体を預かり、血を拭く†琉魔†。
(オレ、こういう行為したら捕まるんだよね……)
大きな身体を持ちながらも拭いていると、噛まれてしまう。
「ぐあっ……腹は満たされただろ!」
「消化不良……。」
平和に終わらせるべきではない事件をはぐらかし、一仕事終えた顔をして帰ってきたオニクス。恒例行事の如く、1番のネチネチとした後悔に付き合う夜が始まる。
「え〜、僕なんか今まで食べたペットたちのこと全部記録してるよ」
「思い出残そうよ、せっかく大事な命なんだから」
(命の尊さをそこで感じてしまうかな)
「そ、そんなこと言ったって……僕は……いつのまにか食べてるから……。名前なんて……報道されなきゃわかんない……。」
63*モテたい学校では隠のグループに群れてる叶人。クラスの人もそれなりに彼女ができている。†琉魔†が寝静まった後、エロゲーで抜いた虚無に「自分は一体何なんだろう」と考えることもしばしば。
「組織から現実世界での潜入を頼まれたので、しばらく一般人として過ごす」そういう名目で、モテ作戦を水面下に実行。イメチェンを企んでブなんとかオフのアクセやフルセットなどを購入。制服の着こなしも垢抜けた姿にチェンジ、無理してやってた糸目も元の開眼に。隠のフレンズからは驚かれる。
ヘルハウスのお兄さんオニクスと宮井からは「垢抜けたねー」「かっこいいよ」と、何も知らない†琉魔†からは「バッチリ馴染んでるぜ!」と褒められる。
そんな生活が続いたある日、教室でプリントをまとめていると、外から女子高生のお喋りが聞こえてくる。
「先輩かっこいいよね」「わかる」
(……俺のことか?)
「茶髪の色好きで」「あれ地毛なのかな?染めてるのかな?」
(違う……)
「急に思い出したんだけど、前髪長かった先輩が最近似たような髪型になったよね」「あ、田中先輩?一回喋ったことあるよ」
(お、俺だ!)
余分にプリントの端を整え続ける叶人。
「まあ、いい感じになったけど……やっぱ恋愛対象ではないよね〜」「わかる〜〜」
(えっ)
(そ……それなりの努力はしたのに………!)
次の日「潜入目的での一般人のフリ」期間が終了した。
64*マト当てゲーム!「ヒィッ」
ドスッ。壁に包丁が突き立つ音に引き寄せられ、研究を片付けてスッキリしたザイオンが寄ってきた。
「あれ?恐くん何やってるのー?」
恐が顎を一回よこした先には、100点と書かれたりんごを頭に乗っけた†琉魔†の姿。ご丁寧に引き攣った笑顔でピースサインをさせられている。
「あーあ、また弁償になっちゃうよ〜」
ケラケラと笑いながら、机の上に並んだナイフを手に取った。
「ボクもやりたいんだ!」
「勝手にしろ」
さっきより大きく重い音がぶっ刺さる。
「ヒェッ」
「恐はなんでコンナコトやってるの?」
足元スレスレに刺さったナイフは、ジーンズの繊維を少し裂いた。
「この前からずっとイライラしてる、それだけ」
テーブルナイフは小さな悲鳴と一緒に、髪の毛の先をちょん切って突き立つ。
「それだけって!琉魔くんも大変だねぇ?」
りんごが割れるのが先か?†琉魔†の頭が割れるのが先か?恐の悪趣味な憂さ晴らし、人間マト当てゲームはまだ始まったばかり……
65*オシャレは内面から「最近声ガラガラしてるね」
宮井、塩見とお茶をするザイオン。いかにも悩みを抱えてそうな表情で頬杖をついている。
「声帯が腐ってきたんでしょ、ザイオン」
塩見の一声にハッと我に帰る。
「あ……ああそう、なんでわかったの?まあいいけど、そろそろ替えようかなって思って」
「どこから仕入れてくるのか興味があるんだ」
特に動揺の色も見せず、ダージリンをすする宮井。
「そうだなぁ………培養したり、誰かのを使ったりしてるけどぉ……Tieši tā せっかくだし、ボクの中身総点検して色々交換しようかな!」
思い立ったが吉日、ザイオンは階段の踊り場で自分の姿をあちこち観察してから、喉元を指先で裂いた。
「ぎぃ」
後ろでヘルメスが目撃していた。
「……つ、痛覚ないんですか」
ザイオンは縦に首を振った。そして自らの腕を血濡れた二本指で強く叩いた後に、ひらひらと飛んでいくような手振りを見せ、ヘルメスに向かって首を傾げた。
「い、いや、確かに痛いの嫌いだけど、痛覚無くしたいわけじゃ……」