【#01】あまのじゃくと恋煩い第1話「今更」
人生は選択の連続だ。
そんなありきたりな格言を何度か聞いたことがあるが、まさにその通りだと僕は思う。
約16年間にわたる僕の人生は実に平凡でドラマ性など微塵もない地味なシナリオだったが、“選択の時”は前触れもなく突然やってきた。
入学したばかりの高校からの帰り道。
数週間前までは満開の桜が咲き誇っていた土手沿いの桜並木を、僕たちは歩いていた。
自転車を押している僕の横には、たまたま帰りが一緒になった別のクラスの同級生。
まだ互いの名前くらいしか知らない間柄の彼女とは、“友達”どころか“知り合い”と呼称するのも違和感があるほど他人に近い距離感だった。
そんな彼女が、すでに葉桜になってしまっている桜並木の真ん中で足を止める。
7812