毎日SS8/19 互いの間に広がるのは、甘酸っぱさを通り越した緊張感だけで、そこに会話は存在しない。
今日も、用があるからとケイゴを呼び出したものの、会話らしい会話もないまま、1日が終わろうとしていた。ウルフとの約束は、当然果たせていない。
どうやって三日月を見せようか。最初に用意していたプランを失敗してしまったせいで、代替案が思いつかないまま、ここまで来てしまった。
「あ、猫」
「えっ……⁉︎」
「ほら、あそこ」
ネムは今ケイゴの隣にいる。ケイゴが指すネコがネムである筈がない。完全な自意識過剰だ。
「可愛いね」
ケイゴがネムの方を見る。案外しっかりと目を合わせる彼に、不覚にもドキッとしてした。
「そ、そうね……」
本当は、朝からずっとドキドキしている。
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