七草粥と草芹とんとん、と、とんとんとん
ざく、ざくざくざく
よく切れる包丁が、小気味好い音を立てて材料を刻んでいく。春の七草と呼ばれるそれらは、正直、すずなとすずしろ、いわゆる蕪と大根以外ただの雑草に見えてしまう。芹澤自身、今切っているものは何だ、と突然聞かれてもすぐに答えることはできないだろう。まぁ、そんなことを聞いてくるような奴はここにはいないのだが。
いるのは、腹に腕を回し、ぴたりと背後から抱きついている草太だけだ。何が面白いのか、芹澤が台所に立ち、調理を始めると、必ずと言っていいほどこうして後ろから抱きついてきて、あれこれと動く手元をじっと見つめている。邪魔でないと言えば嘘になるが、支障のない範囲において、芹澤はそれを黙認していた。
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