message「あら?」
改札を抜けて自宅へと足を進めていた時だった。背後で大きな声が上がり、思わず足が止まってしまった。振り向くと一人の女性がこちらをじっと見ている。思わず視線を辺りに巡らすが、特に変わった様子もなく、女性に駆け寄るような人もいなかった。
聞き間違いかな、と踵を返そうとすると、もう一度、今度は更にはっきりと声が聞こえた。目の前までぱたぱたと駆け寄ってきた女性は、母親よりも少し上で祖母よりは少し若いといった印象の人。
「やっぱりアヌビスくんだ。おっきくなっちゃってー! 最初誰かわかんなかったわよ」
「え、と……」
けらけらと笑うこの人は僕のことを知ってるらしい。名前まで知ってる間柄だったはずなのに、ぴんと思い出せずにいるとまた声を出して笑っていた。
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