大人の余裕 カラム隊長と婚約した。
幸せいっぱいで、未だにふよふよという浮遊感で足元が覚束無いほど浮かれている。
………のだけれど。
「…………プライド様、どうなさいましたか?」
「…………」
目の前にはカラム隊長。婚約してから定期的に二人きりの時間を設けるようになった。それはいい。いいけれど………カラム隊長はこの通り、敬語を外してくれません。確かに、私は第一王女だし今までこの距離感だったけど!!私は………普通に、恋人のように話したいのに。
そこまで考えて、首を振った。
「………なんでもありません」
「………プライド様、失礼します」
「!」
カラム隊長はそう言ってそ、と私の手に自分の手を重ねてきた。ぴくり、と身体が揺れてしまう。カラム隊長の温かい手に顔の熱が上がる。でも、カラム隊長は待ってくれない。
「………失礼ながら、申し上げさせてもらいます。なんでもない、というのは本当ですか?」
「ぅ…………」
じ、と見つめられて口の中が干上がる。そんなに分かりやすかったかしら?と疑心暗鬼になる私にカラム隊長は続ける。
「………私達は、婚約者です。不相応なのは100も承知ですが、それでも………貴方の心の内を知りたい、そう思っております」
「………では、何故、敬語で話すのですか?」
「はい?」
「わ、私達は婚約者で、………対等な関係だと、思うのですが」
「…………」
頑張って勇気をだして発した言葉にカラム隊長は目を丸くする。わかってる、子供っぽいって。けれど、伝わって欲しくて見つめると、不意にカラム隊長がくすり、と笑った。
「な、なにかおかしかったかしら……?」
「………いいえ、ただ………」
「ただ?」
「…………可愛らしいな、と」
「~ッ」
ほんのり赤い顔、優しい目元。
それに絆されて、顔が更に熱くなる。
また、また負けてしまったわ……………。
回らない思考の中、ぼんやりと大人の余裕に敗北感を感じた私だった。