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    tobiranomuko

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    tobiranomuko

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    「Foreverは続くよどこまでも」(吉デン数年後)
    お付き合いしてる二人。吉と喧嘩したデ。吉のお金を勝手に使って家出するデのお話。色々と捏造しまくりです。

     吉田と喧嘩した。
     ムカついたから寝てる間にアイツのキャッシュカード盗んで金下ろしてやったぜ。俺にパスワード教えたのが運の尽きだな。「なにかあったときにね」って教えられた。今がそのときだ。上限の百万円。すっげぇ悪いことってぇのはわかってるけどすげぇ腹立ってるからよぉ。気が済んだら返す。一応アイツの金だし。電話も持ってこなかったしぃ。まぁ、アイツは俺がいなくなって清々してるんだろうけど。ナユタは俺がいなくなって怒ってるだろうな。まぁいいや。
     憂さ晴らしに遊んでやる。人の金で遊ぶのなんて最高だぜ。
     とりあえず北海道に行こうかな。
     金だけ持ってなんも持ってこなかったから腹減った。ラーメン食お。
    ***
     北海道ついたぜ。北海道はでっかいどーってか。
     とりあえずまた腹減ったぜ。
     ラーメン美味そうだったからまたラーメン食べたし市場で海鮮丼も食べた。
     飢餓ちゃんと一緒にきてたら市場全滅するんじゃねぇか。すげぇ美味ぇもん。いくらとサーモンの親子丼なんて宝石箱じゃん。
     吉田とナユタと一緒に……ナユタだけ連れていく。アイツなんか知らねぇ。
     なんだよ。いっつも上から目線で物言いやがって。腕!話してる時、腕組むのすっげー嫌だ!なぁにが「俺の言うこと聞いてよ」だ。お前の言うこと聞いて良かったことなんか一度もねぇよ!……俺が言うこと聞いてりゃ全部丸く収まったのかもしれねぇけど。でも……。
    「あー!」
     難しいこと考えるのなし!
     あ、いきなり声あげたからみんな驚いて俺の方見てる。生物……。とりあえず干物買ってうちに郵送しとこ。タコ刺し美味そう。でも腹いっぱいだしまた次来た時に食べるか。
     ラベンダー畑行ってみた。トイレの芳香剤と匂いが全然違うぜ。ラベンダーのソフトクリーム。あれはなんか不思議な味だった。
     あとフレンチドッグ。砂糖増し増しにしてもらった。美味ぇ。吉田とナユタで……ナユタだけ。
     墓参り……でもアキは公安の方にいるからなぁ。別にいいや。アキに会いたきゃ公安に行けばいい。パワー……アイツ今頃なにしてんだ。
    ***
     その日のうちに北海道を出て宮城に来たぜ。夜だからホテル泊まって翌朝から行動開始だ。朝から牛タン定食は重かったな。美味かったけど。
     公安の場所わかんなかったからタウンページで調べて公衆電話で連絡してみた。すんなり話が通ったぜ。宮城の公安って緩いのか。
    ***
     昼頃。
     待ち合わせの店にきた。というよりも、待ち合わせしている奴の店なんだけど。
     本日休業って書いてあるけど開けていいのか。開けちまったけど。
    「いらっしゃい」
    「久しぶり」
    「アンタ携帯電話持ってないの?」
    「持ってこなかった」
    「忘れたんじゃなくて?」
    「おう」
     釘姐ちゃんの店。定食屋らしい。念願の自分の店を持てたって喜んでたな。異動させられて正解って言ってた。一応、公安がある場所の近くに設置することが条件だったみてぇ。
    「今日、本当は定休日だったんだけどアンタが来るって聞いたから急遽貸切で店開けちゃった」 
    「VIP対応じゃん」
    「その代わりに落としてね」
     指で輪っか作って見せつけられた。俺もカウンター席について札束を見せたら困ったような顔をされた。
    「え、え、もしかして彼氏の財布から盗んできた?」
    「キャッシュカードから」
    「同じじゃないのよ! おバカ!  窃盗よ! 窃盗! 今すぐ返してきなさい!」
     釘見せつけてきやがった。あれで頭殴られると痛いんだよな。
    「後で返すし」
    「じゃあいいわ。いっぱい食べていってちょうだい。アイツももうすぐ来るわ」
     アイツ。いや、アイツは来なくていい。
    「ビール飲む?」
    「甘いヤツがいい。オレンジジュースとなんだっけ。なんとかドライバー」
    「スクリュードライバー? いいわよ。作ってあげる」
     定食屋ってなんでも置いてんだな。すげぇ。
    「ピザ食いてぇ」
    「電話して頼んじゃう?」
    「釘姐ちゃんが作るんじゃねぇの?」
    「冷凍ピザでいいなら買ってきてチンするけど」
    「じゃあ電話する」
     久々のピザ楽しみだぜ。サイドメニューもいっぱい頼んでやるよ。
    ***
     ヤツが来た。
     あ、入口で頭ぶつけてやがる。ウケるし。
    「定食屋なのにデリバリー頼んでんじゃねぇよ」
    「じゃあ食うなよ」
    「お前に言ったんじゃねぇよ」
    「俺の金だし」
     正確には吉田の金だけど。
     モミアゲの野郎黙りやがった。モミアゲが俺から少し離れて座る。「ビール」って言ったら釘姐ちゃんがビール取りにいった。
     モミアゲと釘姐ちゃんは一緒に宮城の公安へ異動になった。結構快適らしいぜ。クァンシは九州の方にいったし須郷は関西の方に異動した。師匠(せんせー)が戻ってきてから「かいかく」ってやつが色々始まってるらしい。
     モミアゲの野郎、ピザ食ってんじゃん。唐揚げも食ってるし。
    「彼氏と支配の子は元気?」
    「彼氏と喧嘩中。ナユタは元気。学年トップ」
    「あらぁ、凄いじゃなぁい。で、彼氏とはどうしたの? 浮気された?」
    「アイツは俺の事大好きだから浮気しねぇよ」
    「凄い自信ね」
    「喧嘩の前にセックスしてたし」
     あ、モミアゲがビール吹き出した。
    「テイシュカンパクなんだよ。俺だってアイツのこと……」
    「あら。惚気始まっちゃう?」
    「始まらねぇよ!」
     酒一気に飲んだ。めっちゃ酔う。おかわり頼んだ。オレンジジュースみてぇで甘くて美味い。
    「デンジ。お前は短気すぎだ」
    「はぁ!?」
    「一発抜いていくか。俺の店に」
     そういえばコイツ風俗店の店長だった。一発。
    「本番もある?」
    「避妊しろよ。中に出して嬢に病気うつしたらブッ殺すぞ」
    「……俺が吉田にブッ殺されるからいいや」
     ブッ殺される。もう俺に興味なくなって浮気してるかもしれねぇなぁ。好きじゃなくなってるかも。
     なんか結構悲しくなってきた。
     吉田、怒ってるよな。一回ブッ殺されるか。ブッ殺す前に出ていったかも知れねぇけど。
     その前に使った金なんとか作らねぇと。どうやって。
    「あ」
     金を作る方法沢山あるじゃん。
    ***
     素寒貧になっちまった。
     パチンコ、スロット、競馬、競輪……全部ダメだった。
     金作ろうとしたらタクシー代しか残ってねぇ。もう夜だし。ホテル泊まる金もねぇ。釘姐ちゃん、まだいるかな。店閉まってたら野宿だぜ。
     とりあえずタクシーに乗って釘姐ちゃんの店まできた。まだいた。良かったぜ。
    「釘姐ちゃん……今日泊め、」
     戸開けたら吉田がいた。え、なんでいるの。幻覚?
    「連絡しちゃった」
     笑ってる。
     釘姐ちゃんのばーか! 
     モミアゲのヤツ笑い堪えてタバコ吸ってやがる。アイツ、金玉もぐぞ。
    「ありがとう。連れて帰るね」
    「はいはーい」
     吉田に手ぇ引かれて店を出た。
     吉田、仕事どうしたんだよ。休んだのか。
     どこに向かってるのかわかんねぇ。だんだんと人気が少ない道に行ってる気がする。
     掴まれてる腕がなんか熱い。吉田の手が熱いからだ。
    「吉田!」
    「デンジ君、俺はね怒ってるんだよ」
    「金勝手に使ったから? 俺よりも金が大事だもんな!」
     ヤバい。制御きかねぇ。頭に血がのぼってて思ってもいねぇこと言っちまった。
    「俺の事嫌いなら放っておけよ! 俺……お前になにかするとお前……いつも困ったような顔して……俺があげた誕生日プレゼント……毎年なにあげても使ってくれねぇし……もうそういうのいいって……俺のこと嫌いなら突き放せばいいじゃん……」
     涙出てきた。すげぇ恥ずかしい。鼻水も出てきた。足止まった。吉田の顔見れねぇ。どんな顔してるか見たくない。
    「金……返してやるよ……内臓売ってきてやる……結構目玉とか高く売れ、」
     バチンッ――
     すげぇ音した。左側の頬、すげぇ勢いで叩かれた。
    「いてぇ……」
     やり返してやる。でも身体が動かなくて。
     吉田は俺に甘い。俺の事が好きだから。
     だから頬叩かれてすげぇ悲しい。
     俺、こんなに、吉田のこと好きだったのか。
     手上げられて、なにもやり返せなくなるくらい傷ついてる。涙ばっか溢れてくる。
    「ごめん……ごめんね……」
     吉田に抱きしめられた。吉田も声、震えてる?手も震えてる気がする。
    「君がいなくなって、どこ行ったか検討もつかなくて……電話も置いていったし……どうしていいかわからなくて……」
    「……心配した?」
    「うん……」
    「……ごめんな」
     震えてる背中に腕回してみた。背中撫でてやると力が抜けた気がして安心した。
    「蛸使えば良かったじゃん」
    「流石に県外に行かれたらわからないよ……」
     腕が解けた。やっと吉田の顔見れた。目元腫れてる。吉田のこんな顔、あんま見れねぇから余計に泣きたくなった。
     でも可愛い。可愛いからキスしちまった。
    「デンジ君……許さないからね」
    「どうやったら許してくれんだよ」
    「俺のこと沢山甘やかして」
    「いっつも甘やかしてんじゃん」
    「どの口がいうの」
    「この口」
     あ、笑った。可愛い。
     可愛いけど俺も許さねぇからな。
    ***
     誕生日プレゼント。使わない理由が「汚したくないから綺麗に取っておきたい」らしい。
    「使って欲しいから買ってきたんだよ!」
    「嫌だよ! 落としたり壊したり汚したりしたら俺はもう生きていけないよ!」
    「めんどくせぇ!」
    「大事なものが増える度に俺の足枷になるんだよ。だからもうプレゼントは買わなくていいんだ」
    「嫌だ」
    「デンジ君」
    「じゃあ別れる?」
    「嫌だ」
     また抱きついてきた。
     甘えんぼになってる。
     数日しか離れてねぇのに。赤ちゃんみてぇにずっと離れねぇ。
     俺もちゃんと謝らねぇと。
    「金……ちゃんと返すから……勝手に使ってごめん……」
    「いいよ。あれはデンジ君用の金が入った通帳だから」
    「へ?」
    「じゃなきゃキャッシュカードのパスワードなんて教えないよ」
    「はぁ!? じゃあ俺自分の金使って旅行してたわけ!?」
    「そうだね」
    「……なんで俺の通帳なんて……」
    「俺になにかあったときに使って欲しいからだよ」
    「吉田死ぬの?」
    「わからない」
    「……お前は死なねぇから。だから金なんか溜めなくていい」
    「ううん。デンジ君、人はいつか死ぬよ」
    「ダメ」
    「ダメじゃない」
    「ダメ……絶対にダメ」
     死んで欲しくない。俺は死ぬけど死なねぇから。だから吉田の代わりに死んでやる。
    「……腹減った」
    「うん。ホテル行く前になにか食べようか」
    「ホテル?予約したのか」
    「予約しなくても泊まれるホテルだよ」
    「……エッチ」
    「仲直りの為だよ」
     手、握り直した。恋人繋ぎ。ずっと手が熱い。手だけでエッチしてるみてぇ。
    「頬、赤くなっちゃったね。ごめん」
    「沢山仲直りしてチャラにしようぜ」
    「うん」
     握り返された。
     叩いた手と繋いでる手がおなじ。
     悲しくなるし嬉しくもなる。
     不思議だな。
    「吉田」
    「ん?」
    「好きだぜ」
    「俺も好き」
     しばらく経ったあとで二人して顔が赤くなった。


    おわり

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