サイジェノ真っ暗闇の中、ほぼ無意識に「せんせい」と声を出したが、耳が壊れてしまったので今自分が声を出せているのかも分からない。怪人はまだ生きている。何とかせねばと唯一残った片腕をフラフラと動かしながら、周りに何があるか確認しようとした時、何者かに腕を掴まれる感覚がした。直感でそれが先生だと分かる。先生がここに居るということは、先程の怪人は先生が一撃で倒したのだろう。流石です…先生…などと思っていると腕を勢いよく引き寄せられ、体制が崩れる。大きな衝撃が来るかと思いきや、ふわりと体を包まれる感覚がした。先生は俺を抱き寄せてくれたのか。体が密着している部分から、先生の体温を数値で感じ取る。こんな時なのに心地よいと思った。
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