推す人生、推される人生 四月に田舎から上京して、ちょっと小慣れてきた頃。私は新しいパンプスを履いて、ドキドキしながら人でごった返す渋谷に繰り出した。気になるカフェがあったからだ。渋谷の人混みをお祭りかと思った、なんて言う人がよくいるけど、地元のお祭りなんかよりずっと人が多くて、ちょっと気持ち悪いくらいだ。
こんなにごった返しているのは、きっとアレのせいもあるだろう。人気アイドルのソロデビューを記念したどデカい広告。それを目当てにやって来ただろう女性ファンたちは、ぬいぐるみやらアクリルスタンドやら、それぞれ推しグッズを掲げてバシャバシャと写真に収めている。推し活ってやつだ。皆凄く楽しそうで、そういう対象がいない私はちょっと羨ましくも思った。
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