雨の日 乱凪砂 帰宅しようとすると、雨が強まっていた。今日は雨だとわかっていたから幸い折り畳み傘を持っている。
「閣下! 雨も強くなってきましたし、車を用意致しました!」
「ありがとう、茨」
エレベーターから降りてエントランスへ向かうと、傘を持った彼女が外の様子を伺いながら待っていた。手には傘がある。
「おや? 彼女は今日休みのはずでは……」
「茨」
「アイアイ! 何でしょうか?」
「車、出さなくても良い」
「え? 閣下!」
茨には申し訳ないけど、彼女が迎えにきてくれたことに喜びを感じて思わず走り出す。
「あ、凪砂くん! 雨だから迎えに来――」
嬉しさのあまり抱きしめ、君が発する言葉を遮る。
「な、凪砂くん? ……離して?」
「……嫌」
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