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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    アンドロメダの青い瞳(1)
    転生記憶なしア←記憶ありデ、公安パロ

    アンドロメダの青い瞳 1アンドロメダの青い瞳「未成年がタバコ吸ってんじゃねーよ」

    親愛の温度を一欠片も感じない、大好きなはずの声。
    そのきつい響きと共に、背中に衝撃。

    蹴られた。
    アキに蹴られた。
    ――初対面以降は、こんなことなかったのにな。

    デンジは屋上で背中を蹴られて、前につんのめった。鉄柵に手をつき、タバコを咥えたままのろのろと顔を起こす。

    別に、暴力なんて今更どうってことない。デンジは幼い頃から暴力には慣れきっていたし、きっと他の誰にそれをされたって、何とも思わなかった。

    デンジはただ、"アキに蹴られた"という事実が苦しいだけだ。
    痛むのは、蹴られた背中なんかじゃない。

    「17でピアスにタバコ。チンピラじゃねえか。仕事、やる気あんのか」
    「いてぇって!早パイ!」

    今度は耳を掴まれた。
    『今回』のアキは、よほどデンジのことが気に食わないらしい。こんなことは、もうしょっちゅうだった。

    ――でも、仕方ねえよな……。

    デンジは悲鳴を上げる自分の心から目を逸らし、それを見ないふりをした。

    ――だって。
    アキはもう、何も覚えてねぇんだもん。



    アンドロメダの青い瞳


    ポチタがデンジの心臓になった瞬間、『前回』の記憶が一気に流れ込んできた。

    デンジは記憶の奔流に半ば発狂しながら、ゾンビ達を滅茶苦茶に殺戮したのだ。
    全身を腐った血で汚しながら、発狂する自分とは別の冷静な部分が現状を分析していた。

    ――俺、『2回目』じゃん。

    デンジはすぐさま悔いた。

    どうしてポチタが消えてしまう前に、それを思い出さなかったのだろう。
    もし思い出せていたら、今回はもっと上手くやれたかもしれないのに。

    後悔しても、もう間に合わなかった。
    ポチタは既に、デンジの中に消えてしまった後だったから。

    全てのゾンビ達を殺め終わった後、貧血状態のデンジは血の海の中でしばらく呆然として……少し状況がおかしいことに、ようやく気がついた。
    ゾンビの悪魔を倒しても、それからしばらく待っても。マキマが来なかったのだ。

    『前回』と『今回』は少し違うらしい、と気づいたのは、この辺りからであった。

    デンジは突然、どうしたら良いのか途方に暮れた。
    だってこのままでは、会えない。
    しばらく口を開けて呆けていたが、そのまま死ぬわけにもいかなかった。デンジはまず、『今回』の方針を決めることにした。

    とにかく、公安に入ることを目指そうと。

    公安に行けば、パワーがいるかもしれないと思った。
    そして。
    そこに、アキもいるのではないかという予感があった。
    デンジはとにかく、アキに早く会いたかった。アキがまた元気で生きているかもしれないと思ったら、居ても立っても居られなくなったのだ。


    だって前世――アキとデンジは、恋人だったのだから。


    方針さえ固まれば、早速行動に移すしかない。デンジは言わずもがな、即断即決タイプである。すぐに凄惨な殺戮現場をトンズラし、とりあえず民間のデビルハンターになった。
    公安に入るコネなんて持っていなかったし、まずは情報を集めようと思ったのである。
    デンジは『2回目』だった。もう、何も知らない子どもではない。アキだって、「お前、地頭は良いよな…」といつも言っていた。毎回とても意外そうに言うのが、少し悔しかったけれど。

    デンジはそうしてしばらく日銭を稼ぎながら、情報を集めていった。しかしそこで、驚くべき事実が判明した。前回との違いが、思っていたよりも大きかったのだ。

    一つ目。銃の悪魔がこちらにいないらしく、過去の襲撃の記録がなかったこと。その影響か、前世のような異常な強さの悪魔が存在せず、悪魔は全体的に弱体化していた。

    二つ目。どうやら公安に、マキマがいない可能性が高いということ。もしかすると、支配の悪魔もあちら側にいるのかもしれないと、デンジは考えた。

    それらの事実が判明してからは、ひとりで不安な夜を過ごすようになった。心臓に手を当てて、抱き込むようにして毎日眠るようになった。そこにいるはずの、ポチタの温度が遠かった。
    だって。銃の悪魔がいなければ、アキは公安にいないかもしれない。会えないかもしれない。
    マキマがいなければ、パワーだっていないかもしれない。

    ――もしそうだったら……俺、何を目的に生きていけば良いんだ……?

    今回の人生にあった僅かな希望の光が、生きる方針を決めるそれがかき消えそうになって、絶望しかけた頃。デンジが1年半ほど民間として活動し、実績を残した頃のことだ。
    デンジに接触してくる者がいた。

    吉田ヒロフミである。

    「久しぶりだね。デンジ君。ところで君さ、前回の記憶あるでしょ?」

    真っ黒のサラリとした髪越しに、黒い瞳がこちらを探るように睨め付けていた。奴は、前回の記憶を完全に有していたのだ。しかしデンジは、一瞬の躊躇もせずに即答した。

    「覚えてんよ!!だからなんだよ!?」

    吉田はその気怠げな黒い目を、ぱちくりと見開いた。少しだけその黒檀の瞳が輝いたような気がしたが、デンジにはどうでも良かった。

    「……いや。デンジ君、公安に行きたいのかなと思って。師匠が…岸辺さんが、口利いてくれるってさ。一応危険がないか、僕が確かめに来たってわけ」
    「マジで!?」

    完全に喧嘩腰だったデンジは掌を返し、吉田に縋りついた。吉田の口角がつり上がる。初め警戒していた彼の視線は、もうかなり楽しそうなものに変わりつつあった。

    「デンジ君は面白いね。……あの人に会いたいんでしょ?彼、いるよ。公安に」
    「…………!!」

    デンジの目に、いっぺんに生気が戻った。吉田が「あの人」とデンジに言う時、それが指す人物はたった一人であったから。

    自身の暁の瞳が突然輝き出したのを、吉田の目を介してデンジは目撃した。それを見て初めて、デンジは自分が相当追い詰められていたことを悟った。

    ――でも、もう大丈夫だ。アキがいるなら。

    デンジはゆるむ頬を押さえながら、そわそわと手を彷徨かせ始めた。しかしその様子を見て、吉田の顔は翳った。

    「……会いに行くの、あんまりオススメしないけどね」
    「行くに決まってんだろ!!お前に勧められる必要ねー!!」

    吉田が何かを言うのを躊躇していることに、デンジは全く気づきもしなかった。
    だってこの時のデンジは既に――アキと同じ場所にピアスを開けて、アキと同じ銘柄のタバコを吸っていたほどだったのだ。
    デンジは、今回会えない間もずっとアキが恋しかった。いや……正確には前回アキが死んでから、もうずっと、である。

    彼が生きている。公安にいる。会える。

    それだけで心は浮かれ、深く考える余裕なんて微塵もなくなっていたのだ。

    多分、デンジは心のどこかで慢心していたんだろう。あんなに自分を好きだったアキは、絶対に自分を覚えていると信じ込んでいた。

    とにかく一刻も早くその姿を見て、抱き付きたかった。
    あの低くて落ち着く声で、静かに「デンジ」と呼ばれたかった。
    頭を撫でられて、アキの香りをかいで、生きているアキの体温を感じたかった。


    ――でも。
    全部全部、無理だった。


    ようやく、会えたアキは。
    『前回』のことを――何一つ、覚えていなかったのだから。
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