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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    ショタデをタイムスリップしたアが幸せにして、ショタデがアを看取る話。二人の出会いと別れと再会。ハピエン。
    n番煎じです。

    テセウスの船が行き着く先は 1テセウスの船が行き着く先はデンジは朝焼けの瞳を見開いていた。

    アキだ。
    アキがいる。
    やっと会えた。

    「彼の名前は早川アキ。デンジ君より3年先輩」

    マキマの平坦な声が響いている。
    デンジの目は、隣に立つアキに釘付けだ。

    会いたかった。
    ずっと、会いたかった。

    でも、アキは全然デンジを見ない。むしろ嫌そうに、目を逸らしていた。それを見たデンジは、胸が張り裂けるように痛むのを感じた。

    寂しいよ。
    すげぇ苦しいよ、アキ。
    あの青い目でさぁ、俺んことを見て欲しいなあ。

    ぐっと拳を握り込む。爪が皮膚に食い込んで、血が出るのがわかった。

    ――でも、仕方ねえんだよな。
    だって今のアキは……俺を、"知らない"んだ。

    「今日は早川君に着いて行きな」

    デンジは何も文句を言わずに、「わかりましたぁ」と返した。

    ――この後俺は、アキに殴られるんだっけ。

    フラフラとアキの後を着いていきながら、デンジはぼんやりと考えた。
    アキが昔、デンジに教えたのだ。
    『最初の俺は最低だ。だから初対面で殴ってくる糞野郎のことは、迷いなく股間を狙え』と。
    アキはやや青ざめながら、こうも言っていた。『あれは……痛かった』と。

    嫌だなぁ。
    アキに殴られるのも。
    アキの股間を蹴るのも嫌だ。
    すげぇ、嫌だよ。

    でも、起こったはずの出来事をなぞらないと、"運命"に辿り着かないかもしれない。
    それだけは困るのだ。
    だからデンジは思ってもいないことを、しつこく言った。

    「なあ先輩よぉ、マキマさんって男いんの?」
    「なあよぉ」
    「なあ」

    「ちょっとこい」

    ――来た。
    やっぱり、昔アキが言った通りなんだな。

    デンジは気落ちして肩を落とし、地面を見た。
    こちらを振り返らない背中を見つめ続けるのは、とても苦しい。

    名前、呼んで欲しいなあ。
    いつもそうしてたみたいに、「おいで」って言って欲しい。
    いつも通りに俺が飛び込んだら、その腕で抱きしめて欲しい。
    なのにアキは、これから俺のこと、殴るんだ。
    やっぱ、すげぇ苦しいよ、アキ。


    俺たちが一緒にいた二年間を、"今のアキ"は覚えていない。
    俺とアキはもう一度、やり直す・・・・

    "運命"に辿り着くまでは――――あと○○日。


    テセウスの船が行き着く先は


    その昔。
    デンジは、痩せた小さな子どもだった。
    父親のお古の、ブカブカのタンクトップを着て、小さなポチタと寄り添って生きていた。
    ふたりぼっちで、生きていた。
    頼れる大人なんか、誰もいなかった。
    学校なんて、行きたいと思ったことすらなかった。
    だって、何も知らなかったから。
    ただ命をつなぐだけで、精一杯だったから。

    その日、デンジは高い熱を出していた。
    こういう時・・・・・は定期的にやってくる。
    こうなるといつも、ゴミ箱から寄せ集めたシーツや新聞をたくさん被って、丸くなってやり過ごしていた。
    楽になるまでずっと、ポチタを抱き締めて丸くなって、息を潜めるのだ。
    そうすれば、いずれ治まる。
    他にやり方なんて、知らない。

    でもその日は、特に体が辛かった。
    熱くなった体を冷たい手で抱えて朦朧としながら、デンジは夢を見ていた。
    誰かに抱かれる夢。
    もう大丈夫だよって、言ってもらえる夢だ。
    そんなこと、誰も言ってくれるはずないのに。
    そう思って絶望した、その時だった。


    「デンジ……やっと見つけた」


    優しい声が響いて、デンジの名前を呼んだ。
    少し甘くて、低いテノール。
    懐かしいと思うのは、何でだろう。

    「……ひどい熱だ」

    大きな腕がデンジを抱きしめる。
    ぺたぺたとおでこや首を触る手も優しい。
    甘かった声は、心配と焦燥を帯びたものに変わっていた。

    「ひとりで辛かったな、もう大丈夫だよ」

    気持ち良い。
    あったかい……。
    心の底から、安心する。
    ずっと、ここに帰ってきたかった気がする。

    「ポチタも、頑張ったな。初めまして。俺は――――だよ」

    クンクン鳴くポチタの声が聞こえた。

    心配かけてごめんな、ポチタ。
    いつも、ごめんな。
    そう思うけれど、高熱で体がうまく動かない。

    「安心できる場所に行こう。温かい布団と薬が必要だ。食事は俺が作るから、心配ない」

    良い夢だなあ……。
    ずっと、この腕の中にいたい。
    こうして甘えていたいな。

    「ポチタと一緒に行こう。何か持っていきたいもの、あるか?デンジ」

    うつろな頭をやっとのことで持ち上げて、デンジは首を横に振った。
    そんなもの、一つもない。
    デンジとポチタはふたりぼっち。
    お互い以外に大事なものなんて、何一つ持っていなかった。

    そうしてデンジは初めて――――世界一綺麗な青と、目が合った。

    ――むかし一度だけ見た、海みてえだな……。

    小さなデンジは見惚れたまま、やがて意識を落としたのであった。
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