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    招き犬

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    招き犬

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    おぐろ🦈🐬

    稚魚の時2人で尾鰭を絡ませながらフロイドとジェイドはある約束をする。
    それは相手が死んだとしても後追いは禁止でその片方の目を自分の目として使い色んな世界を見ていくという約束。
    幼い頃にした口約束。でも命の灯火が消えかかろうとしているジェイドと、そんなジェイドに泣き叫びながら必死で止血をしようとしているフロイドは思い出してしまう。
    ジェイドは最期の力を振り絞ってフロイドの手を握ると愛おしい番を見る目で小さく声を上げる。
    「約束…守ってくださいね」
    そう言って事切れるジェイドにフロイドは約束を守らずに咄嗟に自分のマジカルペンを取り出し喉元に突きつけ後追いしようとするも魔法が何故か発動しない。
    ジェイドが事切れた後フロイドはジェイドとの約束である1つ目の目の交換を自身の力だけでしてしまう。交換した金色の目は少し濁り気味だが見えはする。後で教師陣やアズールに怒られてたらいいな。
    他人にジェイド(の目玉)を見せない為に普段は眼帯をしつつ生活しているフロイド。フロイドは何度か死のうとしたけど何かが邪魔をする様に生き延びてしまう。最初は邪魔される度に舌打ちしてたけど寝ている時に夢の中で自分は人間の姿のまま深海にいて片目だけ無くなっている人魚姿のジェイドが現れ、フロイドを尾鰭で絡め取りながらフロイドの目を見て嬉しそうにはにかむ。
    「僕の願いをちゃんと叶えてくれているんですね」
    当たり前じゃん。そう言いたいが人間の姿のままのせいで声が出せない。
    はくはくと口を開閉するフロイドにジェイドはくすくすと笑うとフロイドの額に自身の額をコツリと合わせる。
    「でも、もう1つの約束を何度も破ろうとするのはいけませんよ?その度に僕が慌てて止めてるんですから」
    ジェイドはぷくりと頬を膨らませながらフロイドをじっと見つめる。その言葉にフロイドはしっくりときた。毎回死のうとすると怪奇現象の如く邪魔していたのは誰でもない片割れで番のジェイドの仕業だったと。
    「ちゃんと約束通り色んな世界を見てきてください」
    ”そして、此方に来た時にいっぱいお話しましょう。楽しみにしていますよ”
    少し悲しげに微笑むとするりと巻き付けていた尾鰭を外し深海へと潜っていく。
    待って、まだ一緒にいて欲しい!
    そう思って脚を動かそうとした瞬間めが覚めるフロイド。
    稚魚の様に泣きながらもジェイドのお願いを聞かなきゃね。と立ち直り卒業後アズールの仕事を手伝いながらも暇があれば色んな世界に赴き景色をジェイドの瞳と一緒に眺める。
    それが約100年程続いた。
    「あはっ、綺麗だねジェイド」
    ジェイドの目がある方の頬に手を寄せると懐かしい誰かの手が重なる感覚を覚える。
    自分の手はあの頃より少し大きく、顔には少しの皺と髪の毛には白髪がほんの少し混じり始めていた。それでも多く見積って40代位の男性にしか見えない。
    「…故人の事で最初に忘れるのは声なんだって」
    景色を見つめながらフロイドは呟いた。
    「オレ…もう、ジェイドの声があまり思い出せなく、て…」
    フロイドはその場でしゃがみこむと頭を抱えて駄々をこねる様に頭を振る。
    「やだ、やだよジェイド。オレ、一欠片もジェイドの事忘れたくないよ…」
    忘れるくらいなら死にたい、ねえ、もういいでしょ?
    顔を上げると半透明なジェイドが仕方ないとでも言う様な表情でフロイドに手を伸ばしていた。
    「…あはっ、やっと迎えに来てくれた♡お話たくさんしようね、ジェイド」
    ジェイドの手を取り嬉しそうにフロイドが1歩脚を踏み出すとその身体は真っ逆さまに落ちていく。
    フロイドは半透明なジェイドの身体を抱き締めながらやっと一緒に過ごせる事に幸せを感じていた。

    休みを与えてから1週間過ぎても戻ってこないフロイドにアズールは溜息を吐いた。
    「やっとジェイドからお許しが出たんでしょうね」
    アズールはわかっていた。フロイドが今も生きていた理由が。
    「さて、あのウツボ達がいなくなった分、僕の負担が増えるんですけどね…」
    僕は最期まで生きて足掻いてやりますよ、そして会ったらまずは説教からですね。
    アズールは一筋だけ涙を流した後すぐさま仕事に取り掛かった。
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