いつか「メルメル~!」
隣に響くのではというぐらい大きな声を発しながら天城は帰ってきた。
夜中だから静かにして欲しい。たまに天城の無神経なところが俺は少し気に入らないことがある。まあそれが 天城燐音ですけど。
「天城!もう!何時だとおもっ…!」
「メルメル~!おれっち疲れちまった~キスして!きゃはは☆」
と、やはりお酒を飲んできたであろうこの男は舌を出して笑いながらキスをねだってくる。
正直、お酒の味がするキスはしたくない。苦すぎる。まずい。後味悪い
「HiMERUは今、そんな気分ではないのです。早く風呂入って寝てください。HiMERUはもう寝ます」
「え~?メルメル釣れないなァ?りんねくん寂しいぜェ~?」
…はぁ…全くこの男は…と思って一瞬天城から目線を逸らし、ソファに座ろうとした瞬間
「えっ…」
急に強い力でひっぱられ両腕を抑えられた。さすが君主候補だけあって、たまに気配が感じられないことがある。足音もしないこともある。故郷でどのような暮らしをしていたのか全くしらないが、時々見せるこの様子を見ると知りたいような知りたくないような。知らないといけないような。でも、下手な詮索はしないと俺の中で決めている。天城も俺のことは聞いてこない。俺は、天城だけにも俺が生まれてから何をしてきたのか聞いて欲しい。だけど今は話す勇気がない。天城はHiMERUを俺として見てくれる。俺はどの優しさに甘えているのかもしれない。
HiMERUがそうこう考えてるうちに 口に柔らかい何かが触れた。その時俺ははとても優しい暖かい気持ちになった。
天城のキスは優しいとおもう。見かけによらず。
はっ!と俺は我に返った。あれ…
天城もしかしてお酒飲んでいないのか。
アルコール臭も全くしない。はぁ…この男は…
「ふふっ」
おれは思わず手を顎の下に手を当てて子供がイタズラしたような感じで笑ってしまった。
「メルメル~なんだよォ~俺っちメルメルと最近ちゅ~してなかったから寂しかったんだぜェ~?」
天城は拗ねた子供みたいな顔をして言う
「天城はほんとに面白いですね」
そう言ってHiMERUは天城の首に腕を回して顔を引き寄せた。