※ブラック企業描写があり、尊が病んでます。
ガンガンとけたたましい銅鑼が頭の中で轟いているような気がする。激しい眩暈のせいで、ぐにゃりと世界が押し潰されているみたいだ。キリキリと締め付けられるみたいに痛む胃は鎮痛剤を呑んでも落ち着く気配がない。
胃の痛みをごまかすように鳩尾付近を掌の表面で撫でながら、穂村尊は一歩ずつ階段を踏み締めた。寄り掛かった鉄製の手すりがひんやりと冷やされて心地良い。ふらつく足を叱咤して、一段一段と昇る度に、少しだけ心が軽くなるような心地がした。
さっきから、くたびれてヨレヨレになったスーツのポケットの中で、機械が絶え間なく振動を続けている。ディスプレイを見なくてもわかっている。きっと、先輩から連続で着信が来ているのだ。時刻は既に23時を過ぎているというのに、振動は止まる気配がない。
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