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    sshark_shrimpp

    @sshark_shrimpp

    フリートみたいな感じで、作業進捗ぽいぽい上げていきます。あとは基本的に突発的な落書き文です。
    反応されるとめっちゃ喜びます。
    作業進捗も落書きも基本的に読み直ししてなく、文章がひどいのでさらりと読んでくださいな。

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    sshark_shrimpp

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    社畜の尊を救う了見の話が書きたいなって思って書いた導入部分。全然了見出てこない。殴り書き。

    ※ブラック企業描写があり、尊が病んでます。






     ガンガンとけたたましい銅鑼が頭の中で轟いているような気がする。激しい眩暈のせいで、ぐにゃりと世界が押し潰されているみたいだ。キリキリと締め付けられるみたいに痛む胃は鎮痛剤を呑んでも落ち着く気配がない。
     胃の痛みをごまかすように鳩尾付近を掌の表面で撫でながら、穂村尊は一歩ずつ階段を踏み締めた。寄り掛かった鉄製の手すりがひんやりと冷やされて心地良い。ふらつく足を叱咤して、一段一段と昇る度に、少しだけ心が軽くなるような心地がした。
     さっきから、くたびれてヨレヨレになったスーツのポケットの中で、機械が絶え間なく振動を続けている。ディスプレイを見なくてもわかっている。きっと、先輩から連続で着信が来ているのだ。時刻は既に23時を過ぎているというのに、振動は止まる気配がない。
    ――早く、電話に出なきゃ。先輩に、迷惑をかけているんだから。
     そう心が焦る一方で、指先は別の誰かに操られているみたいに言うことを聞いてくれない。これではきっとまた先輩を怒らせてしまうだろう。ああ、本当に、先輩に言われたように、自分は駄目な人間だ。こんな自分は怒られて当然なのだ。
    「……はは」
     何がおかしかったのかわからない。けれど、自然と口からは乾いた笑いが零れ、夜の闇に溶けていく。
     ゆっくりと階段を登り切った尊の前に広がったのは、反対側へと続く道だった。道幅は人がすれ違える程度しかない。あまり人通りを必要としない陸橋であることを鑑みれば当然の広さだ。
     数歩ほど先へと進んで、欄干を両手で掴み、ゆるゆると天空を仰ぎ見た。
     薄暗い空には一つ二つと星が微かに輝く程度で、淀んだどぶ川のような色をしている。田舎に暮らしていた頃は、まるで宝石箱をひっくり返したような煌めきが空にはあったというのに今やその面影は微塵もない。いつまでも灯り続ける街の人工的な光が空の星を曇らせているのだろう。その空を見ていると、何故か急き立てられるような心地になってくる。
    「……はぁ、っ、は、……っ」
     自然と加速していく心臓の音。それに伴って、呼吸が上手くできない。息を吸っているはずなのに、肺の奥がセメントで埋められていくみたいに、苦しくなる一方だ。視線の焦点が合わなくなりかけていると、突然、陸橋の下を大型トラックが通り抜けていった。一拍置いた後、背後からごうっと勢いよく、風が吹きすさぶ。
     身体が浮きそうになるほどの強い風。全身から力を抜けば、このまま風が身体を攫ってくれそうだ。きっと、そうなれば、もう怒られることもないだろう。いや、他人に迷惑をかけることもなくなるだろう。出来損ないで、役立たずな、社会に必要とされていない自分がこの世から消えるのはきっと、有益なことだ。
    (……それでも、いい、かな)
     ずっと、前を向いてきた。何せ、この人生は不霊夢が与えてくれたようなものだから。前を向けと、彼が背中を押してくれたから、ずっと前だけを見てきた。
     理不尽なことで怒鳴られても。不条理なことで蔑まれても。
     俯くことはできないと、がむしゃらになっていた。
     初めはそれで乗り切れた。反抗する気力だって残ってた。受け入れ難いことがあれば、違うと、真正面からぶつかっていけた。
     それがうまくできなくなったのは、社会に出てからだ。大学を卒業し、営業職として、とある会社に就職した。この会社を選んだのは、給与が他に比べて高いからだ 。他の会社よりも十万円近く高い初任給があれば、きっと今まで自分を支えてくれた祖父母に恩を返すことができる。田舎から離れたところでの一人暮らしに微かな不安はあったが、会社の寮ということもあり、寧ろ期待の方が大きかった。
     ……入社時はそんな夢と希望に満ちていた。
     初めて手にした給与は雀の涙とも言えるような金額だった。聞けば、さまざまな金が給料から天引きされているらしい。一人暮らしをすることすらままならないほどの、金額だった。
     おかしいと、上司や社長に訴えたこともある。しなし、そんな反応をした翌月の給料はさらに減額されていた。祖父母に仕送りを送るなど夢のまた夢で、寧ろ一人暮らしでもカツカツの金額だった。
     転職を考えなかったわけではない。しかし、朝は6時から、夜中は3時過ぎまで会社に拘束されるため、自由な時間がない。土日も本来は休日のはずだったが、自主的に出勤する勉強会とやらに参加しなければならなかった。
     徐々に身体に不調をきたすようになって、朝が起きられなくなっていった。そんなある日、発熱したために会社を休んだところ、翌日、先輩社員から激しく叱責された。翌月の給与はさらに減っていた。
     褒められることはない。寧ろ、怒鳴られない日がない。朝から夜までずっとサンドバッグのように怒鳴られ続け、鼓膜がおかしくなってしまいそうだった。
     休めば給与が減る。だから、休めない。けれど、休めないから体に疲労は蓄積される。
     悪循環から抜け出す方法が、ない。そうこうしているうちに、既に一年が経っていた。
     こうして陸橋を歩いている今だって、本当は勤務時間の真っ只中だ。社長がとあるコンビニ限定のホットスナックが食べたいと言い出したからお使いに外に出ているだけ。そのコンビニまでは歩いて片道30分。往復30分で買ってこいと言われているが、タクシー代など出してもらえるわけもない。走らなければ間に合わない。走っても間に合わない。それなのに、足の裏に接着剤でもつけられたみたいに足が動かない。
     また、出来なかったと、給与が減額されるのだろうか。今度引かれたら、食費をどう切り詰めよう。いや、それよりも、どうやって暮らしていけば……。うまく考えがまとまらない。思考が散らかって、答えが出ない。
     ざわざわざわと、耳の奥で羽虫が羽ばたいているような音がする。動悸のような息苦しさがずっと続いていた。全身が泥濘にはまったみたいに、自由が効かない。
    「……疲れた、な」
     このまま、ふらりと身を乗り出せば、休むことができるだろうか。怪我をすれば……、いや、きっと給与がまた引かれるだけ。ならば、もう……。
    「……穂村尊か?」
     何も出来ぬまま佇んでいる尊の耳に、静かな声が、届いた。男の聴き心地の良いひっそりとした声。いつか、どこかで聞いたことがある。少なくとも、会社の誰かのものではない。
    「……」
     声を上げることも億劫で、のそのそと緩慢に首を回して声のした方を眺めた。
     目に入ってきたのは、吊り上がった切れ長の瞳が特徴的な、顔の作りの良い男だった。
     さあさあと風になびいている銀色の髪がやけに目につく。
    「こう、がみ……?」
     数ヶ月ぶりに謝罪以外の言葉を発した口は、うまく動かせただろうか。
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