書かなかった文たち供養①パラドックスと竜たちの関係性は周囲からどう見えていたのか? を書こうと思ったやつ
思い返してみると、Z-ONEの記憶の中におけるパラドックスは、その始まりの一秒から、竜と共に在ったのだった。
「ほら、彼だよ」とアンチノミー(当時はまだ本名のジョニーと名乗っていた)が示す先には、傾いた摩天楼の群れを背景に、闇色の竜が地面に黒々と影を落としていた。風が強い日だった。舞い降りた竜が落とす影から、風に靡く長い金髪、翻る白衣が現れ、そうしてZ-ONEはパラドックスと出会ったのだ。
そのとき竜は、自らの主人と見知らぬ人間が言葉を交わすのを、赤い瞳でじっと見ていた。あるじに害なせば灼いてやるぞ、などと竜が考えていたのかどうかは、Z-ONEにはわからなかった。ただ、そういう敵意を隠すだけの聡さを竜が持ち合わせていたことは、なんとなしに理解できた。そしてその印象は、彼らとの邂逅が遥か時の彼方の出来事になった今でも、Z-ONEの意識の深層に残っている。
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