特別な一日「・・・遅い」
三月某日、午後一時十分。
杉下は駅前でとある人物を待ちぼうけていた。「もういる」と簡単にメッセージを送ったが未だに返信はなく、辺りを見回してもそれらしき姿も見えない。しょうがないと思いながら携帯に電話をかける。一コール、二コール、三コール・・・出ない。
「ちっ・・・迎えに行くか」
心を落ち着かせ、せっかくの初デートだと気を引き締めてその人物のもとへ足を踏み出した。
そう、今日は杉下と桜、たった二人きりの初めてのお出かけの日である。
事の発端は数日前の教室での出来事だった。
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「桜〜これお返しな!」
「あ、俺も俺も」
「はいホワイトデー」
「あ、待ってオレも持ってきた、はい桜」
「ちょ、ちょ、と待て・・・急に寄越してくんな持ちきれねぇだろうが」
朝、教室に入って一番最初に目に入ったものに杉下は思わず顔を顰めた。
そこには、先月想いを伝え合いようやく実を結んだ恋人が自分以外の男たちに囲まれて頬を赤く染めている姿があった。級長からのバレンタインへのお返しにクラスメイト全員が集まり我先にとお菓子やらなんやらを与えているようで、頭の隅で分かっていてもやはり虫の居所が悪い杉下は大層不機嫌な面で自席へと向かった。
「いや〜相変わらず人気者で大変だね〜」
「・・・」
「杉下くんはホワイトデーなにか用意してないの?」
「・・・あ?」
「いやほら、桜くんから貰ったんでしょ?バレンタイン」
「・・・貰った・・・オレもあげた」
「あ〜・・・お互い渡し合ったからホワイトデーはいいやってなったんだ?」
「・・・アイツもそれでいいって」
「でも不服そうな顔してるね」
「・・・別に」
蘇枋の問いかけに図星をつかれた杉下はふいっとそっぽを向く。どうすれば苛立った憤りがじりじりと奥に食い込んでいく感覚を抑えられるか、懸命に考えていた。
バレンタイン直前で色々あったが、あの時貰ったハート型のクッキーは確かに自分だけのもので、渡したマカロンも桜だけのもの。お互いの特別な感情を経てやっとの思いで恋人になれたというのに、杉下と桜は未だそれらしき行為ができていない。もともと犬猿の仲であったこともあり、照れくささの方が勝ってしまうのかキスどころか手を繋ぐことすら踏みとどまってしまうほどだった。そんなためらいと熱望の狭間にいて、気がつけばすでに一ヶ月を過ぎようとしていた。
そんな桜が今、男どもにチヤホヤされている。本命ではないと理解していても、この状況を無心で耐えられるほど杉下は大人ではなかった。
「・・・もっと心開かないと、桜くん取られちゃうよ?」
「・・・・・・・・・ちっ」
不貞腐れ気味に舌打ちをした後杉下はガタンと音を立てて立ち上がり、それに反応したクラスメイトたちが早々に危険を察知して桜から離れる。杉下の気持ちなどつゆ知らず、桜は大量のホワイトデーを持ち直しながら杉下の方を見る。身に覚えのない怒りの感情を向けられて、「なんだよ」と溜息をこぼした。
「テメェちょっとツラ貸せ」
「あ?なに勝手にブチ切れてんだよ、なんもしてねぇだろ」
「なんもしてねぇからだろ」
「は?」
「いいから、来い」
「おい、人にもの頼む態度がそれかよ、お願いしますって言え」
「ぶん殴って気絶させた後に言ってやるからさっさとついてこい」
バタバタと大きな足音を立てて口喧嘩を絶やさず教室を出ていく。
「あの二人は臨戦態勢じゃないと会話できないのか?」
「杉ちゃんの場合はただの甘えんボーイ」
おおよそ恋人同士には見えない二人の喧嘩にハラハラしながらも温かな目で彼らを伺う杏西と桐生。一ヶ月前、桜によって明かされた杉下との関係に衝撃を受けつつ見守ってやろうと決めたクラスメイトたちは、ただただ二人がまた物を壊して先輩たちに怒られないようにと手を合わせるしかなかった。
杉下に連れられた場所は同じ階にある空き教室。たまに二人きりでいたい時にこっそり愛瀬で使っており、まだふわふわした慣れない関係がここにいると色も形も鮮明になってくるような、そんな不思議で特別な二人だけの場所である。
「お前、次の日曜日なんもないよな」
「なんだよ急に」
「いいから」
「ねぇよ、なんも」
「あっそ」
「・・・・・・え、終わりか?」
それがなんだと首を傾げる桜に、杉下は更に不機嫌そうに皺を寄せた。
「なんなんだよ」
「お前、鈍いにも程があるだろ。それともわざとやってんのか?」
「あ?言いたいことあんならちゃんと言えって」
「・・・だから、オレも予定ないって言ってんだよ」
「まぁ、そりゃそうだろうな、お前梅宮以外用事とかなさそうだし」
「ぶっ潰すぞ」
ハァァっと大きく息を吐きながら椅子に座る杉下に倣って桜も横に腰をかけた。いじけた顔を横に向けて、なにか言いたげだけどあと一歩思い切れないような杉下の様子に桜はふっと笑った。
「まさかお前、オレと出かけてぇの?」
桜の言葉に杉下は大きく目を見開き、それからすぐ目を逸らした。
「それしかないだろ、察し悪ぃな」
「いや分かりづれぇんだよ」
「・・・分かるだろ」
「分かるか!この前桐生に借りた少女漫画の方が数倍分かりやすいわ!」
「例えば?」
「あ?あ〜・・・ほら、映画のチケット一枚余ったけど誰か一緒に行ってくんねぇかな、みたいな。相手が、じゃあオレと一緒に行こうよって言うんだよ」
「じゃあそれ言う、チケット一枚余ったから誰か一緒に行ってくんねぇかな」
「いや、そもそもお前チケット持ってんのかよ」
「持ってない、お前が買え」
「ぶっ飛ばすぞ」
そう言った後、桜はケラケラ笑いながらポケットにあったスマホを手に取った。
「なに見てぇんだよ」
「あ?」
「映画だよ映画。一緒に行きてぇんだろ?」
「・・・ふん、仕方ねぇから付き合ってやる」
「なんでお前が妥協したみてぇになるんだよ」
「つーかお前、なんで少女漫画読んでんだよ」
「・・・いや・・・・・・別に」
「なんだよ、ハッキリしねぇな」
「お前にだけは言われたくねぇ。良いだろ、悪いかよ」
「ガラじゃねぇって思っただけだろ」
「・・・大きなお世話だわ」
「で、ほんとは?」
「・・・・・・お、お前と・・・付き合ったけど・・・恋愛とか、よく分かんねぇから・・・桐生に教えろって頼んだんだよ」
「・・・・・・・・・それで漫画かよ」
「うるせぇな意外と面白いんだぞ!」
「まんまとハマってんじゃねぇか」
ブツクサと文句の言い合いをしながらもスマホの画面を一緒に覗き、面白そうな映画を探した。これこの前楡井が見たって言ってたとか、最近この役者が話題だとか、そんな話をしながらとりあえず全て目を通す。結局お互い好きそうな洋画のアクション系に決まった。
「ん、じゃあ午後一時に駅前な」
「おう」
淡々とスケジュールを組み、目標は果たされたと意気揚々に教室を出ようとする杉下だったが、スマホを眺めたまま微動だにしない桜にどうしたと声をかける。
「なんか、お前と待ち合わせって、変な感じだな。恋人っぽい」
何気なく言われた桜の可愛らしい台詞に、桃色の花びらが張りついたようなささやかなぬくもりが湧く感覚に杉下の体温がぐぁっと上がる。
「ぽいっつか・・・そうだろ」
桜はパッと顔を上げると、少しだけ赤く染める杉下の頬が長い髪越しから見えた。桜はなにがなんだか分からない感情のままきゅーと音が鳴る胸を抑えながら、教室を出る杉下の後ろに黙ってついていった。
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そんなこんなで当日を迎えた二人であったが、一向に姿を現さない恋人に杉下はどうしようもないヤツだと溜息をつく。その瞬間、向こうの方に見慣れた白と黒の髪が見え、家へ向かって進み出そうとしていた足を止めた。
「ハァ・・・悪ぃ、遅れた・・・」
「・・・なにしてた」
寝坊したのか準備に手間取ったのか、急いで走ってきたことが目に見えて分かるほど息を切らす桜に杉下はやや心配そうに声をかける。
「商店街の横突っ切ろうとしたら・・・ハァ、目の前でばあちゃんが重い荷物持ってて・・・」
「すげぇありがちな言い訳だな」
「いやほんとだっつの!ほら見ろ!飴貰ったんだぞ!」
ばっと手のひらを杉下の前に差し出すと、そこには五個の飴玉が転がっていた。「信じたか!?」と必死に訴える桜に思わずふっと表情を隠しながら笑うと赤い顔が更に真っ赤になっていって杉下はまた笑った。
「どこまで行くんだ?」
「次の次の駅で急行に乗り換える。そっから二十分くらい」
「結構遠いな」
「・・・まあ、ここまで来れば邪魔は入らねぇだろ」
「お、おう・・・」
電車に揺られながら移り変わる外の景色をぼんやり見ながらそう言う杉下に、桜はせっかく冷めてきた顔の熱を再度下げるためにパタパタと首元を扇ぐ。休日真昼間の電車内は思っていた以上に満員で、二人の間の距離はいつもより狭い。すぐ目の前に体格のいい体とふわふわした柔らかい髪がある。すぐ目の前にちまっこい体と綺麗に分かれた二色の髪がある。お互い新鮮な気持ちと照れくさい気持ちにうつつを抜かしていたが、それでもより一層近くにある手のひらには触れないままでいた。
「着いた」
「・・・ここって」
目的地は、まこち町の北側にある隣町の駅だった。栄えているほど人ごみはないが、ある程度の店が集まった商業施設がぽつんと駅から少し歩いたところにある。上映開始前に昼飯もとらないといけなかったため早速向かおうと足を進める杉下だったが、別の方向へ顔を向ける桜に「おい」と立ち止まって声をかける。
「・・・?どうした」
「いや、別に」
桜の表情は心無しか強ばっていた。なにごともなかったかのように歩き出す桜に疑問を持ちながらも、その歩幅に合わせて隣を歩く。短い言葉を交わしながら一緒に目的地へと向かった。
建物の三階にあるレストランで軽く昼食をとった後、エレベーターを使って映画館がある階を目指した。始まるまでまだ少し時間があり、杉下が飲みもん買ってくる、と意外にも恋人らしいことを言ってきたので、桜はお言葉に甘えて一人待合スペースにて待つことになった。
スマホを持ちながらいつメンのグループチャットを開くと、「今日デートだよね?」「今どんな感じ?映画始まった?」「お昼ご飯食べましたか?」「仲良うしてなー!」とメッセージが並んでいた。微かに笑みを浮かべながら返事をしようと文字を打っていると、なにやら入口の方から声が聞こえ、桜は反射的に顔を顰めた。騒がしく気品のない、明らかに素行の良くない者が発している声に指が止まる。やがて彼らの声が近くなり、桜の嫌な予感は的中した。出来れば知らない奴らであってほしかったが、その願いも虚しく砕かれる。ただ知っているだけでない、自分を化け物だのなんだのいまわしい言葉を銃弾のように胸を貫いてきた、当時同級生だった奴らだった。気付かれないよう咄嗟に下を向いたが、嫌でも目立つ白と黒の髪で早々に気づかれ桜は内心舌打ちをした。相手は五人、大釜を落としてやっても構わなかったが、ここは公共の場。なるべく騒ぎは起こしたくなかった桜は、ただだんまりと立っているしかなかった。
「あ?お前桜じゃない?この期に及んでなんの用?フツーの学生みたいなツラしやがって」
十センチ以上も背の高い男ににやついた顔で覗きこまれ、桜は苛立ったようにスマホをポケットに仕舞った。
「いつも一人でいたお前が映画って、ウケるな。高校もどうせ浮いてんだろ?なぁ、聞いてんのかよ」
強い力で肩を掴んで壁に落しつけてくる男に桜はギロリと睨みつける。相手は笑顔だが、見下ろす瞳は笑っていない。途端、過去の悪い記憶が頭をよぎった。嫌で嫌で逃げ出した世界に、やはりお前の居場所はここだと告げられているようで、恐ろしさと怒りで体が固まる。絶望の感情を誤魔化すように掴まれていた手を思い切り振り落とすと、「テメェ!」ともう片方の拳が降ってくるのが分かった。分かっていたが、桜は浅い呼吸のせいで動けなかった。
「うが!」
殴りかかる直前に、男はまるで魔法にでもかかったかのように横へ吹き飛んだ。
「なにしてる」
飲み物を抱え、鬼の形相で睨みつける杉下がいた。水滴か、それとも中身が軽くこぼれたのか、両手を少し濡らしていた。
「公共の場で騒ぐんじゃねぇよ馬鹿が」
次第にまわりに人が集まり始め、分が悪いと思った男たちは呆気ないほど簡単に立ち去っていった。冷や汗が引いていく感覚に、桜は体を震わせる。
「はぁ、お前なにしてんだよ。さっきの知り合いか?」
「・・・いや、まぁ、顔は知ってる、けど」
会話を聞かれていただろうか、昔のことはあまり知られたくないと目を泳がせる桜に杉下はまた溜息をつく。その後すぐに飲み物を渡してきて、「もう始まるぞ」とチケットをヒラヒラと桜に見せてきた。桜は慌ててチケットを探し、杉下を追いかけ指定のスクリーンへと向かった。場内は人がまばらで、桜と杉下の席のまわりは誰もいなかった。着席し、ちらりと杉下を見ると、なんでもないような顔をして上映前の宣伝を見つめている。
「(礼・・・言いそびれた。コイツに助けて貰ったの、初めてだったのに)」
その横顔を見ながらどくどくと波打つ心臓をどうにか鎮めようとしていると、「飲め」と先程杉下が購入した飲み物を取って差し出してきた。静かに受け取り、いつの間にか乾いていた喉を潤す。
「落ち着いたかよ」
「・・・ぅん」
「・・・ここ、地元だったか」
「地元っつか、前住んでた家が・・・近くて」
羞恥と悔しさのあまり、桜は更に喉をカラカラにした。息苦しい、今しがた飲み物を飲んだはずなのに、桜は喉になにかが詰まっている感覚に小さく口を開いた。
「中学の・・・同じ学年だった、奴で・・・」
「いい、別に、無理に言うな」
弱音のようにそう漏らした声は震えていて、杉下はそれをなんの感情も伺えさせない顔のまま柔く優しく包み込んだ。無愛想なのは変わらないのになぜだか深く安心して、桜は別の意味で再度息を詰まらせた。上映開始のブザーが鳴ったが、温かな感情で体は熱いままだった。
「すっっっっっげぇ面白かった」
「そりゃよかったな」
映画終了後、あんなことがあったにもかかわらず桜はまだ半分残っている飲み物を片手に興奮状態で映画の感想を述べた。
「あの喧嘩シーン熱かったな」
「あれ、リアルでもできそうな気がする」
「無理だろ、壁歩くとか」
「今度やってみようぜ」
「子どもか。一人でやってろ」
「習得したらお前に
早速使ってやるよ」
「上等だよ返り討ちにしてやる」
いつもの軽口の言い合いをしながら、桜と杉下は残りのデート時間を使って建物内を散策した。ふと覗いたブラックボードに見覚えのあるフラペチーノの絵が描かれていて、桜は杉下の裾を掴んで足を止めた。
「これ、前飲んだことある」
「・・・今飲んだらさみぃだろこんなん」
「お前とも飲みたい」
「・・・ハァァァ」
「な、なんだよ、嫌なら別に・・・」
「嫌なんて言ってねぇだろふざけんな」
「なにキレてんだよ」
無自覚のキュートアグレッションに杉下は思わずぎゅんっと心臓を止められそうになる。顰めた顔に、桜は訳が分からないと呆れ顔で返した。
桜は桐生にオススメされた以前と同じものを、杉下は別のものをそれぞれ注文し、あの時の感動を思い出しながらストローをくわえる。
「・・・」
「どうした」
「・・・前と同じやつなのに、なんか違う」
「あ?違うやつ頼んだんじゃねぇの」
「ちげぇ・・・お前と飲んでるから、なんか、前よりもっと美味い」
杉下はあまりの衝撃発言に膝を崩しそうになる。桜の特別でありたい杉下にとって、嬉しい以外の何物でもない言葉だった。冷静を装って、ずいっと自身のものを桜の前に差し出した。
「ん」
「ん?」
「味見」
「・・・ん」
照れ隠しだとバレないように・・・この際バレても構わないと思うほど恋人の一挙一動が愛おしい杉下は、秘めていた勇気を振り絞って拳を握った。
「手」
「て?」
「手出せ」
「あ?あぁ」
入学当時のあの頃を思い出すような、しかし今度は桜の方から、杉下の方へ手を差し出す。杉下はそれを掴むように片手を差し伸べ、握った。握手ではなく、恋人のように、手を繋いだ。そっと包み込むように、少しもゆるぎのない、思いがけないほど優しい感覚に桜は肩を揺らした。
「なんか、今日変じゃね、お前」
「は?変ってなんだよ普通だろ」
「普通じゃねぇだろ、今までこんな優しかったか?」
「オレはいつだって優しいだろうが」
「過去を振り返りやがれ」
「お前の手が言ってたんだよ構えって」
「・・・はは」
ヘラりと笑った桜にムッと唇を出し、杉下は「帰るぞ」とその手を繋いだまま引っ張った。調子の狂う一日に自ずと顔が熱くなる。恋人のように振る舞っても桜の方が余裕そうに見えてしまうのはなぜだろうかと、足早で建物を出た。
「どうだったよ、今日」
帰りの電車内、幸いにも人は少なく、長く空いた席の端っこに控えめに座って揺られていると、杉下が突拍子もなく桜に問いかけた。
「・・・どうって・・・た、のしかった」
「・・・」
「お前は?」
「・・・まぁ、また行ってやらんこともない」
「とことん口の減らねぇヤツだな」
「今度は別の映画館な」
「・・・おぅ」
静かな空間にはらりはらり重ねるやりとりが不思議と特別感を満たす。繋げ続ける感情の花びらが、二人の上をひらひらと舞う。
「今日・・・・・・・・・助かった、ぁ、りがとう」
「・・・・・・・・・ん」
この関係がいつまで続くか分からない。
ずっと先のことはオレたちにとってあまりにも遠すぎる。
今日と明日を懸命に繰り返して、そばで笑って、いつものように喧嘩していればいい。
声に出さない代わりに、繋ぐ手をきゅっとお互い握り合った。
終。