Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    yururi_thyme

    @yururi_thyme

    グノーシアでオリジナル主人公(顔面あり+自我強)が絡むお絵描き置き場です。主にレム主♀中心……の予定

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 22

    yururi_thyme

    ☆quiet follow

    お試しに書いてみた レム主小説擬きです
    ※大した事はありませんが、一部暴力表現があります注意!

    様子のおかしいグノ陣営レムナンと、もう諦めモードの乗員主人公♀のSS
    (キリエ=主人公の名前)

    変則的な君 嗚呼、また負けてしまった。
    負けるつもりはなかった、なかったけれど、ここ直近のループは負け越しているように思う。どうにも調子が宜しくない。ただでさえ愚鈍な思考が上手く回っていない気がする。

    (分かって、いたんだけどなあ)

    彼が、人類の敵……グノーシアだって。

    ずっと、脳裏に焼き付いている光景があった。
    光源に乏しく、薄暗い部屋だったけれど、伏せられた睫毛には微かに光が乗っていて。おもむろに上げられた顏には、普段は逸らされている淡い紫が、珍しく此方を真っ直ぐに見つめていて。その紫は、まるで灯火のようにゆらゆらと煌めいていた。
    そして、瞳がすぐに逸らされたと思ったら、震える唇が開き──────…………

    現実逃避を始めた脳内に、やや早足に近づいてくる足音が聞こえてきた。硬質なものがぶつかるだけではない、独特の音。彼だ。
    普段の彼はこんな早足ではないのだけれど、興奮しているのだろうか。やはりな、と思う。

    静かに音を立てて目の前の扉が開くと、金色の瞳にギラギラとした光を湛えたレムナンが、無遠慮に部屋へ入って来た。
    そして、ベッドに座る私の前に立つ。こちらを見下ろす彼の瞳の異様さがより際立つ気がした。まるで満月のようだ、と呑気にそんなことを考える。

    これから、どんな目に遭うか、知っているのに。

    「ここに、いたんですね。……キリエさん」
    「うん」
    「この船は、もう……僕達の、ものです。逃げ場は、ありません」
    「……そうだね」
    「皆さん、僕が……消しました……!ふふふっ、残っているのは、貴方だけ、です……!」
    「……」
    「僕は、ぼくがやりたい事を……やるんですっ!」

    次第にヒートアップしていく彼を横目に、やっぱりこうなるんだな、と諦念を抱いてしまう。これも、いつものことだった。
    そして、レムナンは私に手を伸ばして、胸ぐらを掴んで壁に……

    「……?」

    と思っていたけれど、彼の手は私を掴むことなく、自分の方に引っ込めてもじもじし始めた。……んん?

    「……レムナン?」
    「…………。」

    瞳のギラつきがなりを潜めて、次第に潤んできた気がする……。あれ?
    どこか既視感のある、ギラギラした光を煌めきを湛えた光に変えて、コチラをじっと見つめてきたのだ。

    「僕は、貴方と……こ、恋人がする……ことを、したい、です」
    「こいびと」
    「汚い欲望抜きの……そんな愛し方があると、仰いました、よね?」

    そうだったか。雑談を振られたときに、そんな話をした気もするが……駄目だ、全然頭が回っていない。今は自分の記憶も、何もかも信用が出来そうになかった。
    いっぱいいっぱいな私の様子を意にも介さず、
    レムナンは続ける。

    「あの、まず…………手を、繋ぎます」
    「手を」
    腕や指を折るんじゃなくて?

    「そして……ご飯を、一緒に……食べるんです」
    「ごはん」
    床に置いたお皿に、頭を無理矢理押さえ付けるとかじゃなく?

    「そ、それから……あの、頭を撫でたり……その……だ、抱き締めたり……します!」
    「そう……」
    床に引き摺り倒して、顔面や身体を気が済むまで殴ったり蹴ったりするのでもなくて?

    (……あれ?私がおかしいのか?)

    いつもの『彼』の行動に、毒されているのかもしれない。
    いつもなら、壁に頭を打ち付けられた後に、床に引き倒されて、怒鳴られながらも殴られて、踏んずけられたり、そして、口に出すのも憚られるような事もされてきたのだ。グノーシアの彼に敗北した、数え切れないループの中で。

    レムナンに、思いがけず告白をしてしまって、返事まで貰ってしまった、あのループから。

    でも、目の前の彼は、そんな激情を感じさせることもなく、まるでグノーシアではないような、普段と変わらない姿で、俯きながら手持ち無沙汰に袖を弄っていた。……金色に光る瞳だけが、異様に煌めいている。

    「どうして、私?」
    「?」

    思わず漏れ出た問い掛けに、レムナンは不思議そうに瞳を瞬かせた。何を、当たり前の事を、とでも言うように。

    「だって、僕たち、り……りょ、両想い……ですよね?」
    「っ」
    「だから、こうするのも……何も、おかしく……ない、ですよね?」

    そう口にしながらレムナンは私の手を取る。思わず、反対の手でシーツを握りしめた。
    ただ、そう短くない時間が経っても、指で肌を柔らかく撫でているだけで。両手で、大切な物を扱うように、恐る恐る触れるものだから、少しずつ強ばった手から力が抜けて行く。
    何だか可笑しくなって、ちょっとだけ笑ってしまった。その反応が気に入らなかったのか、不服そうな表情をする彼に、ごめんねと謝る。

    結局のところ、今、ここにいるレムナンが幸福であれば、私はそれで良いのだ。
    ようやく満足したのか、撫でる指を止め、漸く握り込まれた手を軽く引かれ、 抵抗せずに引かれるまま立ち上がる。
    目線が近くなったな、とぼんやり見つめていると、眉間の皺が解かれ柔らかく微笑まれた。グノーシアの彼らしくない、と彼のことを殆ど知らない私が思うのも、何だか変な感じがするけれど。

    「ご飯を、食べに……いきましょう」
    「…………何を食べるかは、私が決めていいの?」
    「ええ、はい。……その、僕、おいしい……とか、よく分からない……ので……」

    手を繋いだまま部屋を出て、私達は食堂へと向かった。
    レムナンと雑談しながらのんびり歩いている私は、そこで食べさせ合いをする羽目になるという未来を、知る由もなかったのである。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works