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    rongesuki_BB_

    肌色多めの絵をここに投げていく予定です

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    翠リュー風味
    取り調べ室でいろいろされてる照美誠二郎堪らんな……と思って書いた。でも取り調べは受けて当然の内容はガチでする。そういう男
    こういうの見てぇ~~!!!

    ##照美誠二郎

    蜘蛛の巣が燃えるのを待っている。レネゲイド関連事件担当独立捜査課──通称、R担の管轄にある取り調べ室に通される。
    薄暗くこの部屋を照らしている電球は、頼りない光源で机を照らしている。その机に肘を預ける形で”嘘の英雄“が座っていた。
    綺麗にされているが、微かにだが薬品の匂いを感じた。

    「やぁ。来てくれたんだね」

    右手で額を押さえている彼は、顔すら上げずにこちらに話しかける。
    その声は疲労の方が強く、かすれていた。

    「座ってくれ」

    扉を閉めてから動きのないこちらに言葉だけでそう言う。
    それに従って彼の前の椅子に座る。
    机を挟んで、正面に彼を捉える。
    黄色い照明のせいか、顔色の判別までは難しい。しかし、指先が震えて呼吸も浅い。少し耳をすませば心拍すら感じることができるが、弱々しい上に乱れている。
    それがストレスによるものなのか。この部屋に微かに残っている薬品のせいなのかは、分からない。
    注射の痕などそういった痕跡はない。見えている範囲では、だが。

    「誠二郎さん」

    ここに監視カメラや盗聴器の類はない。窓一つもない。
    前者は彼のシンドロームへの対策だ。彼は自分のシンドロームを妨害に使ったことはほとんどないが、悪用しないと断言できるのは彼を知っている者だけだろう。
    R担に彼を知っている者がいるとも限らない。
    そして実際にいないのだろう。

    だからこそ手を伸ばした。
    しかし、

    「すまない」

    その言葉で制止された。

    「君に触れられると安心してしまって意識が飛ぶ。今、そんなことになると少し困るんだ」

    頬に触れようとした手を止める。
    彼は申し訳なさそうに口角を緩く上げた。その表情にもいつものような愛嬌はない。

    「……私に伝えたいことがある、ということですね?」

    名残惜しいが手を引いて目を細める。
    彼は、”嘘の英雄“のまま「そうだ」と肯定して続ける。

    「ここの人たちを悪く思わないでほしい。危険な選択をした僕にも非があるんだ。でも──」

    処理班。今回の場合はジャームの処理を専門とした支部の事を指す。
    彼の主な任務はもちろん『ジャームを処理』することだ。しかし、暴走したオーヴァードとジャームを正しく区別するのは難しい。
    彼が拘束されるきっかけとなった任務の対象は、”暴走したオーヴァード“だった。
    それを判断した彼は説得を試みた。それでも高まってしまったレネゲイドを抑えることは難しく、彼は独断で動いた。
    バディのグレーゾーンのジャームの首輪を外し、対象に取りつけてエンフォースメントを使用して落ち着かせたのだ。
    結果、それで事件は解決した。

    ただ彼の判断は最悪の場合、被害を大幅に増やしていただろう。
    それが咎められ、根掘り葉掘りと調べ上げられれば対象との共通点がいくつも上がり、半ば陰謀論のような関係が疑われた。

    それを潔白するための取り調べだと認識していたのだが。

    「R担の中に悪意を持っている人がいることは確かだ。僕から何の情報を聞き出したいのかは分からないが、きっと君も毒牙にかけようとしてくるだろう」
    「探し出せ、ということですね」
    「あぁ。君の能力は信用している。僕に嘘をつかないっていう信頼もね」

    「……私が来るまでずっと?」

    本来なら嬉しい言葉だ。彼が自分をそのように認識して、信用も信頼もしているのは、とても。
    ただ、『僕に嘘をつかない』と言った言葉が悪い意味に聞こえてしまうのは、この状況だからだろう。

    「誰も信じられなかった。ここでは僕が”悪いヤツ“だからね。だから君が来てくれることを信じて、それに賭けた」
    「君は……何よりも僕を優先してくれるから。必ず来てくれると思ったんだ」

    すまない。
    彼は謝りながら片目を見せるように手を動かした。
    本来なら青く輝く一等星がそこにあるはずだった。しかし輝きは失われ、真っ黒な瞳孔が穴のように広がっていた。

    「この明かりでさえも眩しくてね、君の顔がよく見えないんだ。君の顔が見えないからこそこんなことが平気で言えるのかもしれないね。本当にすまない」

    そう言って隠すまで、衝撃と言いようがない不安にその目を脳裏に焼き付くほど見つめていた。
    目元のくまが濃く、それだけでどれだけのストレスをかけられているのかがなんとなく分かってしまった。

    力のこもった拳がきゅうと音を鳴らして、爪が食い込んだ肌から血が溢れてしまうのではないかとも思った。
    それだけ今の彼は見ていられないほど弱っていた。
    それを彼は申し訳なさそうにしているのが耐えられなかった。

    「必ず見つけ出し、貴方を救いましょう」

    彼の視界が万全ではなくてよかった。そう思ってしまうほど、自身のなかの憤怒が熱を持っていた。
    どろりと粘度のあるそれは沸騰した際に生じる泡を爆ぜ、少しばかりの液体をまき散らしながら──さながらマグマのような怒りが煮えていた。

    「翠雨さんなら必ず達成してくれると信じてる。それまで僕もここで耐えよう。今まで、そうしてきたように」
    「次は貴方を救った後にお会いしましょう」
    「幸運を祈るよ」

    ここまで許可された時間ぴったりだった。

    御山洗 翠雨が退出する。
    その瞬間まで”嘘の英雄“を見続けて、扉が閉まった。


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