蜘蛛の巣が燃えるのを待っている。レネゲイド関連事件担当独立捜査課──通称、R担の管轄にある取り調べ室に通される。
薄暗くこの部屋を照らしている電球は、頼りない光源で机を照らしている。その机に肘を預ける形で”嘘の英雄“が座っていた。
綺麗にされているが、微かにだが薬品の匂いを感じた。
「やぁ。来てくれたんだね」
右手で額を押さえている彼は、顔すら上げずにこちらに話しかける。
その声は疲労の方が強く、かすれていた。
「座ってくれ」
扉を閉めてから動きのないこちらに言葉だけでそう言う。
それに従って彼の前の椅子に座る。
机を挟んで、正面に彼を捉える。
黄色い照明のせいか、顔色の判別までは難しい。しかし、指先が震えて呼吸も浅い。少し耳をすませば心拍すら感じることができるが、弱々しい上に乱れている。
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